ボジョレー・ヌーボーは本当に美味しいのか?

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〜毎年11月に盛り上がる「新酒イベント」の真実〜

例年、日本で人気の高いボジョレー・ヌーボーですが、本当に美味しいのか疑問に思っている人も多いはずです。年間70本近くワインを開けている編集部でも「ボジョレー・ヌーボーって結局どうなの?」という話題が出たので、今回は少し掘り下げてみたいと思います。


ボジョレー・ヌーボーとは?

フランスのブルゴーニュ地方の一部、マコンとリヨンの間に広がる丘陵地帯「ボジョレー地区」で造られる新酒ワイン。毎年11月の第3木曜日に一斉に解禁されることで知られ、季節の風物詩となっています。

元々はその年に収穫されたブドウの出来を確認するための「試しの新酒」でした。ところが、日本人特有の「解禁」「限定」「イベント好き」な文化と合わさり、1980〜90年代のバブル期に一大ブームを巻き起こします。空輸で日本に届く「世界最速のボジョレー」を深夜に飲むパーティーが各地で開催され、ニュースで「午前0時に乾杯する人々」が映し出される光景は、当時を知る人には懐かしい記憶でしょう。


短期間で造られる新酒のからくり

疑問に思うのは「秋に収穫したブドウが、なぜ数週間でワインになるのか?」という点。

通常の赤ワインは数か月から数年の熟成を経て市場に出ます。ところがボジョレー・ヌーボーは「マセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸潤法)」という特殊な製法で、ブドウの果皮ごと炭酸ガスの中に閉じ込めて発酵を促し、短期間で果実味を強く引き出します。

しかし一方で、アルコール発酵を進めるためには糖分が必要。新酒で糖度が不足する場合は補糖が行われ、さらに大量生産の銘柄では質より量が優先されることもあるようです。そのため「軽くてフルーティだけど奥行きがない」と評価されがちなのです。


フランス人はあまり飲まない?

日本でこれだけ人気があるボジョレー・ヌーボーですが、フランス本国では意外なほど飲まれていません。

フランスの作家や現地在住者の証言によれば、ボジョレーの村でヌーボーが出回るのはごく一部。フランス人にとっては「ちょっとした地元のお祭り酒」であり、わざわざ買うものではないのです。実際、世界に出荷されるボジョレー・ヌーボーの多くが日本向けだとされています。

つまり「ボジョレー・ヌーボー=日本人が盛り上がるためのイベントワイン」という側面が強いわけです。


味と価格の現実

一般的なボジョレー・ヌーボーの価格帯は2,000〜3,000円。ところが飲んでみると、その味わいは普段ワインコーナーで400〜900円程度で売られているデイリーワインと大差ないことも珍しくありません。

もちろん、すべてが粗悪というわけではなく「ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーボー」など、特定の地域で造られる格上のヌーボーも存在します。ただし、それでも熟成ワインのような深みや複雑さを期待すると肩透かしを食らうでしょう。

要するに「値段の割に味が合わない」という感想を持つ人が多いのは当然です。そこには「解禁」「限定」「お祭り」といった付加価値が上乗せされているのです。


楽しみ方を間違えないこと

では「ボジョレー・ヌーボーは買う価値がないのか?」といえば、そう単純でもありません。

ヌーボーは「イベントワイン」と割り切るのが正しい楽しみ方です。普段あまりワインを飲まない人でも「解禁日だから飲もう!」と盛り上がるきっかけになりますし、友人や同僚への手軽なプレゼントとしても便利です。

また、軽やかでフルーティな味わいは、ワイン初心者や女性にとって飲みやすい特徴でもあります。重厚な熟成ワインに慣れた愛好家からすれば物足りなくても、「乾杯の一杯」としては悪くありません。


本当に美味しいワインを求めるなら

もし「美味しい赤ワインをじっくり味わいたい」と考えるなら、同じ2,000〜3,000円であればチリやスペイン、イタリアのDOCワインを選ぶ方が満足度は高いでしょう。近年は1,000円台でも優れたデイリーワインが豊富にあります。

ワイン好きの間では「ボジョレー・ヌーボーを買うより、同じ値段で別のワインを買った方が幸せになれる」と言われることも少なくありません。

ただし、ボジョレー・ヌーボーは「その年のブドウの出来を祝う」という文化的背景を持つワイン。味だけで判断するのではなく「お祭りを楽しむためのお酒」と捉えると価値が見えてきます。


まとめ

  • ボジョレー・ヌーボーは本来「新酒の試し飲み」がルーツ

  • 日本での人気はバブル期の「限定・解禁」ブームが発端

  • 味は軽くフルーティだが、価格に見合わないことが多い

  • フランス本国ではほとんど飲まれていない

  • 「イベントワイン」と割り切れば十分楽しめる

結論として、ボジョレー・ヌーボーを“特別に美味しいワイン”と考えると失望します。しかし「季節を楽しむための乾杯酒」としてなら価値は十分にあるでしょう。普段は飲まない人と一緒に楽しんだり、パーティーのきっかけとして開けるには最適なお祭りワインなのです。

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