BMW 320d レビュー ― 省燃費と力強いトルクの両立

クルマ
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2012年に発表されたBMW 320d。日本市場においても「クリーンディーゼル」という言葉を一気に浸透させたモデルのひとつであり、いまや認定中古車市場でも定番の存在となりました。

従来の2リッター直4ガソリンエンジンは「滑らかだが非力」という印象が強く、トルク不足が長年の弱点とされてきました。しかしディーゼル化により、この課題が大幅に改善されたのです。


エンジン性能 ― 直列4気筒ディーゼルの進化

320dに搭載されるのは、2.0リッター直列4気筒BMWツインパワー・ターボ・ディーゼル・エンジン。

最高出力は184馬力、最大トルクは38.7kgmに達し、これはかつての3リッター直6モデル(335iなど)に迫る力強さです。

この「トルクの太さ」こそが320d最大の魅力。特に街乗りや高速合流、坂道発進など、日常のシーンで「踏めば即座に加速する」感覚を与えてくれます。以前のE90型320iでは、坂道で失速しないためにエンジンを高回転に維持する必要がありましたが、320dは軽くアクセルを踏むだけでスムーズに加速。運転の疲労も軽減され、よりリラックスしたドライブが可能になりました。


燃費性能 ― ハイブリッドに迫る省エネ

320dは「燃費性能」においても注目されました。

E90型320iの実燃費が平均14km/L程度だったのに対し、320dでは実走行で20km/L前後を記録。ガソリン車では到底届かなかった領域に達し、当時人気を博していたプリウスなどハイブリッドカーに迫る経済性を実現しました。

しかも単なるエコカーではなく、BMWらしい高剛性シャーシと俊敏なハンドリングを備えています。いわば「燃費と走りを妥協なく両立したモデル」と言えるでしょう。これにより「実用と走りの楽しさをどちらも捨てたくない」という層に強烈に刺さったのです。

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ディーゼルならではの課題 ― 騒音と振動

もちろん完璧ではありません。最大の弱点は「ディーゼル特有の騒音と振動」です。

アイドリング時にはガラガラとした独特のサウンドが響き、軽微ながら車体全体に振動が伝わります。トラックやバスを思い浮かべてもらうと分かりやすいですが、320dでもその名残は完全には消えていません。

発進時や低速域では特に顕著で、ガソリンエンジンに慣れている人にとっては違和感があります。「高級車に500万円以上払ったのに、このエンジンフィール?」と感じる愛好家も少なくないでしょう。

筆者自身、335iの直6モデルに乗っていることもあり、320dに初めて乗った際はその振動に衝撃を受けました。直列6気筒ガソリンのシルキーな滑らかさに慣れている人ほど、ギャップに戸惑うはずです。


他モデルとの比較と選択肢

それでも「日常的な使いやすさ」を優先するなら、320dは非常に合理的な選択です。

街乗りでの扱いやすさ、長距離ドライブの燃費、そして十分なトルクによるストレスフリーな加速感。維持費の面でもメリットがあります。

一方で「BMWならではの官能的なエンジンフィール」を重視する人には不向き。

その場合はガソリンの直6モデル(328iや335i)、あるいは遮音性が向上した上位モデルの5シリーズを検討すべきでしょう。同じディーゼルでも5シリーズ以上では静粛性が大きく改善され、320dほどの粗さは感じにくくなっています。


320dを選ぶべき人とは?

結局のところ、320dを選ぶべきかどうかは「BMWに何を求めるか」で決まります。

  • 燃費・実用性重視の人 → 最適解。通勤や日常利用での満足度は非常に高い。

  • スポーツ性・官能性重視の人 → 物足りなさを感じる可能性大。ガソリン直6へ。

  • 静粛性を求める人 → 5シリーズ以上のディーゼルなら妥協できるかも。


総評 ― 試乗は必須

BMW 320dは、日本市場にディーゼルを根付かせたエポック的存在です。

力強いトルクと優れた燃費を備え、日常ユースにおいては「これ以上合理的なBMWはない」とすら言えます。

しかし、BMWに「官能的な直6エンジン」や「高級車としての静粛性」を求める人には不満が残るでしょう。

購入を検討するなら必ず試乗し、自分の感覚に合うかを確かめることが大切です。

「走りも燃費も妥協したくないが、官能性には目をつぶれる」――そんな現実的な大人の選択肢が、この320dなのです。

全長×全幅×全高 4,625×1,800×1,440[1,430*]mm
ホイールベース 2,810mm
車両重量 1,550kg
定員 5名
エンジン種類 直列4気筒 DOHC BMWツインパワー・ターボ・ディーゼル・エンジン
総排気量 1,995cc
最高出力 135kW〔184ps〕/4,000rpm(EEC)
最大トルク 380Nm〔38.7kgm〕/1,750-2,750rpm(EEC)
燃料消費率 JC08モード(国土交通省審査値)※ 19.4km/l

 

 

 

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