【レビュー】オーディオテクニカ ATH-CM700──憧れのインナーイヤーを今あらためて聴く

テック＆ガジェット

2014.10.022025.10.04

この記事は約4分で読めます。

2006年の憧れが今も残る理由

オーディオテクニカが2006年に発売したインナーイヤーヘッドホン ATH-CM700。

発売からすでに20年近くが経ち、製造も終了していますが、当時のオーディオショップでこのモデルを目にして憧れを抱いた方も多いのではないでしょうか。

私自身も、店頭で煌めくアルミボディのイヤホンに目を奪われた一人です。時代が移り変わり、現在では完全ワイヤレスやカナル型が主流となっていますが、いま改めて手にしてみると「古くてもオーテクらしい一本」だと感じさせられます。

中古市場での流通量は少なく、状態の良い個体を見つけるのは難しくなっています。しかし、だからこそ手に入れたときの喜びもひとしおです。今回はそのATH-CM700をレビューしていきます。

ATH-CM700の外観は、今見ても非常にスタイリッシュです。

ハウジングはアルミ削り出しで、全体的には落ち着いたブラウンカラーを基調としつつ、一部がシルバーに仕上げられています。この組み合わせがシックで上品な印象を与えてくれます。

見た目の重厚さに反して実際の重量は軽く、持ち歩きやすさにも配慮されています。ケーブルを束ねればコンパクトに収まり、胸ポケットや小型ポーチにも難なく収納できるサイズ感です。

発売当初はフレーム部分のシャープなデザインが他のインナーイヤーと比べて格段に格好良く映り、所有欲を満たしてくれる存在でした。現在では珍しいデザインとは言えないかもしれませんが、オーディオテクニカらしい「道具としての完成度」がしっかり表れています。

ただし注意点もあります。ケーブルが非常に細く作られているため、断線のリスクはやや高いと感じます。中古品を探す際にはケーブルの状態をよく確認しておくことをおすすめします。

音質については、「インナーイヤー型」と割り切って評価すべきでしょう。

低音の量感や迫力ではカナル型に到底及びませんが、歩きながら装着しても外の音をしっかり拾える点、そしてタッチノイズが皆無な点は日常使いにおいて非常に優秀です。

中域から高域にかけては、リアリティのある音を鳴らしてくれます。特にボーカルの表現は明瞭で、楽器の音色も伸びやかに感じられます。iPodなどに付属していた標準イヤホンと比べると、その差は歴然です。当時これを手に入れた人々が感動したのも頷けます。

ただし、現行のカナル型イヤホンと比べると弱点もはっきりしています。低音の不足、音場の狭さ、臨場感の物足りなさなどは否めません。ですので「最終到達点」としてではなく、エントリーからミドルクラスへと音質をステップアップしたい時の一歩として捉えるのが適切だと思います。

ATH-CM700は遮音性が低いため、通勤や街歩きのシーンで特に活躍します。外の音をある程度取り込みながら音楽を楽しめるため、安全性も高く、自然なBGM感覚で音楽に浸れます。

一方で、静かな環境でじっくり聴くと低音の不足が気になることもあります。そのため、自宅で腰を据えてオーディオを楽しむよりは、外出先で「良い音をスマートに楽しみたい」ときにこそ力を発揮するイヤホンです。

また、そのデザインからも分かるように、スーツ姿に非常によく似合います。

スーツの胸ポケットから取り出して、さらっと耳に掛ける。そんな所作が自然に決まるのは、このイヤホンならではの魅力です。20代のビジネスパーソンが持つにふさわしい一本、と言えるかもしれません。

振り返ってみると、ATH-CM700は2000年代中盤の「デザインと音質のバランス」を象徴するイヤホンでした。完全ワイヤレスが主流となった今では古さを感じる部分もありますが、アルミ削り出しの外観やオーディオテクニカらしい誠実なチューニングは、今でも所有欲を満たしてくれます。

現代のカナル型イヤホンに比べれば、どうしても音質面では不利な点があります。しかし、「当時のiPod文化」と共に歩んできた歴史を感じられる点、そして今聴いても確かにオーディオテクニカらしい音がする点は、このイヤホンを特別な存在にしています。

中古で状態の良い個体を見つけたら、ぜひ手に取ってみてください。懐かしさとともに、当時の熱気と、いまも変わらない「音楽の楽しさ」を味わえるはずです。

オーディオテクニカが作り上げたこのモデルは、単なる懐古ではなく「今でも十分楽しめる実用品」だと感じます。憧れを持っていた方はもちろん、当時を知らない世代にもぜひ一度試していただきたいイヤホンです。