仕立て服を楽しむためのブランド入門
2015年に紹介したブリオーニ、キートン、チフォネリと、英国サヴィル・ロウのテーラーを振り返ります。ブランド名を知らなければ恥ずかしいというものではなく、好みのシルエットや着心地を探す入口として読んでいただければと思います。
価格は仕立て方や素材、時期によって変わります。以前の「50万〜100万円」という価格帯は現在の見積もりには使えないため、希望の店と仕様を決めて確認してください。著名人の着用や手縫いの多さだけで、自分に合う一着が決まるわけでもありません。
Brioni ブリオーニ
ブリオーニで私が惹かれるのは、存在感のある生地と端正な見え方です。「世界で最も多くの要人が着る」といった順位ではなく、実際の服の表情を見ながら魅力を考えたいブランドです。
特にブリオーニの生地は光沢感がありながらも、目の詰まった存在感のあるものが多いですね。またブリオーニは着心地はまるでニットを着ているかのように軽いのにも関わらず、その見た目は威厳があり、ブリティッシュスーツのような端正さを持っているのが魅力。
人の前に出るような人々、一国のリーダーなどに愛されているスーツだけあり、威圧感はないけれども頼りがいのあるような、そんな絶妙なバランス感を肩のラインやシルエットで作り上げていますね。
スーツには手縫いとミシン縫いを組み合わせたものがあります。どちらかの比率だけで品質を決めるのではなく、用途や自分の体へのフィットを確かめることが大切です。
縫い方の目的を外観だけで判断することはできません。気になる仕様は店で説明を聞き、試着して動きやすさも確かめたいところです。
Kiton キートン
ブリオーニが出たら必ず隣に、あるいは人によってはその上にあるとされる南イタリアの一流スーツブランドがKiton キートン。死ぬまでに一度は着てみたいスーツとして、多くの人の憧れにあるスーツです。
キートンは、ブリオーニと合わせて私が関心を持ってきたブランドです。工房の人数や一着の製作時間だけを比較して、どちらが上質かを決めることはできません。
私がキートンに期待するのは、滑らかな生地と軽やかな着心地です。ただし素材や芯地の仕様は製品ごとに違うため、ブランド全体を「芯地をほとんど使わない」と一括りにはできません。
ナポリ仕立てというのはそもそも、着ている人が疲れないことや動きが軽やかであること、それでいて美しくエレガントであることを目指して作られた仕立てです。多くの着道楽が「いつかは」と願う幻の仕立てですね。
Kiton キートンはインターナショナルなブランドなので、典型的なナポリ仕立てではありませんが、それでもナポリらしいリラックスした着心地を体験できる。それも、超絶贅沢な生地と共に。こんな夢の競演はKiton キートンならではと言えるでしょう。
Savile Row:店ごとの違いを知る
サヴィル・ロウは一つのブランドではなく、ロンドンでテーラーが集まる通りの名前です。各店がそれぞれの歴史や得意な形、サービスを持っています。
以前は「日本では手に入らない」「注文服しか作らない」と通り全体をまとめて説明しましたが、不正確でした。ビスポーク、メイド・トゥ・メジャー、既製服、海外での受注会など、取り扱いは店ごとに確認する必要があります。
例えばヘンリープールの公式トランクショー案内では、日本で採寸・仮縫いを行う出張オーダー会が紹介されています。2026年9月22日の確認時点で東京での開催案内も掲載されており、日本から相談・注文できる例です。次回日程や納期、料金は公式窓口へ確認してください。
ロンドンの店を訪れる楽しみもあれば、受注会で相談を重ねる方法もあります。名前や格式だけで選ばず、仮縫いの進め方、手直し、受け取りまでの流れが自分に合うかも大切です。
Cifonelli チフォネリ
チフォネリは、パリの仕立て服として私が関心を持つブランドです。購入を考える場合は、既製服と注文服のどちらを希望するかを分け、現在の取り扱い窓口を確認しましょう。
チフォネリはフランスの大統領などを始め、多くの著名人を顧客に持つブランドです。
小さな工房にて作られるチフォネリのスーツは、イギリスのスーツよりも柔らかく、イタリアのスーツとは違った感性を持ったパリらしさ溢れる作りになっています。特にショルダーラインとラペル。ショルダーラインはなだらかな曲線を描きながら、袖付け部分で少し盛り上がる。ラペルは上襟がやや大きく、これはフランスらしさを感じさせますね。
使う生地はもちろん一流品ばかりですが、パリの冬を感じさせるフランネルやツイードといった生地を用いて作ったスーツは、チフォネリのスーツの中でも最も風情のあるスタイルではないでしょうか。タートルネックのセーターと組み合わせて着たくなりますね。
同じブランドでも製品ラインや仕立て方で特徴は変わります。この記事の印象だけで結論を出さず、実物を見て肩や襟の収まり、動きやすさを確かめたいところです。

