こんにちは、はっしーです。
「紅茶って苦いだけで美味しくない」
この一言を聞くたびに、何度(´・ω・`)となったことでしょう。
本来の紅茶は、決してそんな飲み物ではありません。本当に丁寧に淹れられた紅茶は、ストレートでも驚くほどやわらかく、緑茶のようにすっと喉を通ります。
ではなぜ、多くの人が「紅茶=苦い」という印象を持つようになってしまったのでしょうか。今日はその理由と、家庭でもできる渋くない紅茶の淹れ方をお話しします。
苦味の正体は「タンニン」
まず、紅茶の渋み・苦味の正体は「タンニン」という成分です。タンニンはお茶やワインなどに含まれるポリフェノールの一種で、強すぎると舌がきゅっと締まるような渋みを感じます。
これは「味」ではなく、「痛覚」に近い感覚なのだそうです。たとえば辛味と同じく、味蕾(みらい)だけでなく、口の中全体の神経が刺激されることで生まれる「違和感」。
だから人によって「苦い」「渋い」「口が乾く」など感じ方が微妙に異なります。渋みは紅茶の魅力でもありますが、出しすぎるとせっかくの香りや甘みを打ち消してしまいます。問題は、このタンニンが「出やすい条件」で紅茶を淹れてしまっていることにあります。
苦くなってしまう5つの条件
紅茶が渋くなる代表的な条件は、次の5つです。
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茶葉の品質が低い
粗悪な茶葉や古い茶葉は香りが弱く、苦味成分ばかりが目立ちます。
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茶葉のサイズが細かい
粉状や細かく砕かれた茶葉は、短時間でタンニンが溶け出します。ティーバッグはその典型です。
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抽出温度が高すぎる
沸騰直後の熱湯をそのまま使うと、タンニンが一気に出てしまいます。
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茶葉を動かしすぎる
スプーンでかき混ぜたり、ティーバッグを上下に振ったりすると、渋みが増します。
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抽出時間が長い
長く置くほど、香りよりも渋みの成分が優先的に出てしまいます。
これらが重なると、誰が淹れても「苦い紅茶」になってしまうのです。
ファーストフードの紅茶が渋い理由
想像してみてください。ファーストフード店の紅茶、またはコンビニのホットティー。
これらは大量提供を前提としているため、どうしても条件が悪くなりがちです。
・茶葉の品質は安価なブレンド
・粉状のティーバッグ
・抽出は熱湯100℃
・カップにティーバッグを入れたまま提供
さらに、多くの人が飲むときにティーバッグを“上下に振る”か、“絞って”しまう。
これで「茶葉の動き+長時間抽出」が加わり、まさに渋みフルコース。
本来の紅茶とは全く違う味わいになってしまいます。
渋みを抑える5つの逆アプローチ
では、どうすれば家庭でも「渋くない」紅茶を楽しめるのでしょうか?
先ほどの条件の“逆”を意識するだけで大丈夫です。
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茶葉の品質を上げる
信頼できるブランドや専門店のリーフティーを選びましょう。香り立ちが良く、タンニンが穏やかです。
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茶葉のサイズを大きくする
「オレンジペコー」など、葉が大きめのものを選ぶとまろやかに。リーフの形が残っているほど上質です。
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お湯の温度を下げる
熱湯をポットに一度移して、90〜95℃程度に冷ますのが理想。日本茶と同じで、温度を少し下げるだけで味が変わります。
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茶葉を動かさない
ティーバッグは振らず、そっと静かに。茶葉が自然にお湯の中で開くのを待つのがポイントです。
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抽出時間は2〜3分
長く置きすぎないよう注意。香りが立ったら、すぐにティーバッグや茶こしを外します。
それでも苦いときは「お湯で割る」
すでに渋くなってしまった紅茶は、牛乳や砂糖を入れるよりもお湯で割るのが一番シンプル。
渋みが和らぎ、香りが再びふわっと戻ります。
ただし、これは“応急処置”にすぎません。
やはり、最初の抽出で渋みを出さない工夫がいちばん大切です。
紅茶は「香りを味わう飲み物」
紅茶を楽しむコツは、味よりも「香り」に意識を向けること。
鼻で香りを感じながら、口の中でその余韻を追うと、自然と苦味よりも甘みを感じます。
良質な紅茶は砂糖なしでも、ほんのり蜂蜜のような甘い香りがします。
香りの層が多いほど、渋みすら「深み」として感じられるようになります。
たとえば、ダージリンならマスカテル(マスカットのような香り)、アッサムならモルティ(麦芽のような香ばしさ)、ウバならメントール感のある涼やかさ。
それぞれに個性があり、渋みさえもその個性の一部です。
だからこそ、上手に“引き算”してあげると、紅茶の世界が一気に広がります。
美味しい紅茶は「おだやか」
紅茶は決して「特別なもの」ではありません。
日常の中で少しだけ時間をかけて丁寧に淹れる——それだけで、心がふっと落ち着く飲み物です。渋みを抑えるコツを覚えたら、ぜひお気に入りのカップで試してみてください。
お湯の温度を少し下げ、時間を少し短くするだけで、「紅茶って苦いだけ」と言っていた自分が、きっと驚くと思います。紅茶は本来、とてもおだやかで、やさしい味の飲み物です。
その優しさを感じる瞬間こそ、心が休まる小さな贅沢なのかもしれません。


