子供に夢を見せるのが親の仕事

コラム
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小学校の卒業式では、昔も今も変わらずこんな言葉が語られます。

「君たちは、一生懸命に努力をすれば夢が叶う。」

「一生懸命に努力」と言えば、勉強や運動などを思い浮かべるでしょう。けれども、そもそも“夢”とは何でしょうか?

筆者は27歳ですが、私たちの年齢であれば「会社で昇進したい」「結婚相手を見つけたい」「マイホームを建てたい」といった現実的な夢を描くことが多いものです。

しかし、小学6年生の子どもにとっての夢はまったく違います。わずか11〜12歳が見てきた世界は、幼児期からの十年ほどの経験だけに限られています。そのうえ0〜4歳の記憶は曖昧ですから、事実上「幼稚園から小学校高学年までの体験」をもとに夢を抱かざるを得ません。

ピアノを聞いたことがなければピアニストを志さないのと同じで、経験していないものに夢を見ろというのは難しい話です。だからこそ、この十年間でどれだけ多くの体験を子供にさせられるかが重要になります。


「夢がない子ども」の背景

ある日、男子中学生の母親が「この子は夢が全然なくて、本当に心配」と嘆いているのを耳にしました。けれど私は心の中で「それは親の責任では?」と叫びたい気持ちでいっぱいになりました。

子供が夢を抱くのは、実体験で心を動かされたときです。旅行で飛行機に乗ってパイロットに憧れる。野球観戦をしてプロ野球選手を夢見る。美味しい料理を食べて料理人を目指す。テレビゲームを遊んでゲーム開発者を志す。どれも「経験」があって初めて芽生える夢です。

もし親がそうした機会を与えてこなければ、子どもは夢を抱くきっかけを持たないまま育ってしまいます。


大学生・若者世代に見える「無気力」

さらに下の世代に目を向けると、20歳を超えた大学生の中には「興味あることは特にないし、就職は適当でいい」と考えたり、「とりあえず遊びたいから大学へ」というように受け身で過ごす人が少なくありません。

もちろん本人の資質や努力不足もありますが、それ以前に「親から多様な体験を与えられなかった」ことも大きな要因だと思います。子どもの夢や関心は、やはり親の行動や価値観に強く影響されるからです。


幼少期の経験が将来を決める

大人になってからの執着や関心の多くは、幼少期の経験から生まれます。価値観や努力の方向性、劣等感や執着心、そうした基盤は友人や学校、そして何より親や家族との関わりから形成されるのです。

例えば筆者自身は、スポーツに全く興味がありません。イチローや本田圭佑、長友選手ぐらいしか名前を知らないほどです。これは、両親がスポーツに関心がなく、家庭で話題にのぼることもなかったからです。その代わり、私は読書や音楽に強い関心を持つようになりました。

一方で、野球好きの親のもとで育った子どもはどうでしょう。オムツの頃からプロ野球中継を見て、休日は観戦や練習に付き合い、自然と野球中心の生活になります。結果、子供が3人いれば全員が少年野球に打ち込む、といった家庭は珍しくありません。その代わり、美術や文学に全く関心を持たないこともあるでしょう。

もちろん、親と全く異なる趣味に進む子もいます。しかし「親の価値観や趣味を子供が受け継ぐ」ことは極めて一般的な現象です。


子供に夢を見せるために親ができること

だからこそ、本当に子供に自由な選択を与えたいのであれば、多様な経験をさせることが大切です。

旅行に連れていき、飛行機や電車に触れさせる。美術館に行き、絵や彫刻に触れさせる。料理を一緒に楽しむ。サッカーも野球も数回でいいから経験させてみる。そうすれば子供は「自分が好きなもの」を選び取ることができるでしょう。

大事なのは極めさせることではなく、「経験の種」をいくつも蒔くこと。子供はその中から、自分の夢に繋がる種を育てていくのです。


結論:子供に夢を見せるのは親の仕事

卒業式の定番フレーズ「努力すれば夢が叶う」。これは確かに正しいのですが、前提条件として「夢があること」が必要です。そしてその夢は、多くの場合、幼少期に経験した体験の中から生まれます。

だからこそ、親が子供に多様な体験を与えることが重要です。

夢を持たない子供を嘆く前に、まずは親自身が「夢の種」を与えてきたかを振り返るべきでしょう。

筆者は強く思います――「子供に夢を見せるのは、やはり親の仕事である」と。

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