筆者は田舎生まれ、田舎育ちということもあり、長年「高層マンション」に強い憧れを持っていました。実際に高層マンションへ3年間住んでみると、眺望や風通しといった想像通りの魅力がある一方で、エレベーターや生活動線など、住んでみなければ分からない部分も多くありました。その後、低層マンションや中層階、1階住戸にも住む機会があり、高層階と低層階では想像以上に住み心地の方向性が違うことに気が付きました。
もちろんマンションの快適性は、階数だけで決まるものではありません。築年数、エレベーターの台数、総戸数、周辺環境、方角、遮音性能、管理状況などによって大きく変わります。それでも、複数の階層に実際に住んでみると、「高層階だから快適」「低層階だから不便」と単純には言えないことがよく分かります。
賛否が分かれるマンションの階層
インターネットでは、高層階と低層階について驚くほど多くの意見があります。高層階派からは、「せっかくタワーマンションに住むなら高層階の方が眺望が良い」「高層階の方が資産価値やリセールバリューが高い」「防犯面で有利」「風通しが良い」といった意見がよく見られます。物件によっては階数による価格差が大きく、同じ間取りでも高層階ほど価格が高いことから、階数そのものが評価の一部になっている場合もあります。
一方、低層階派からは、「災害時にエレベーターが停止すると高層階は大変」「エレベーター待ちがストレス」「高層階は風が強い」「眺望はそのうち慣れる」といった意見があります。特に大規模マンションでは、朝夕の通勤時間帯にエレベーターが各階へ停車することがあり、階数そのものよりも、エレベーターの台数や制御方式、住戸数とのバランスの方が生活上のストレスに直結します。
どちらの意見にも一理ありますが、実際には「何階に住むか」だけでなく、その建物がどう設計されているかを見ることが重要です。例えば20階でも高速エレベーターが複数台あれば快適ですし、5階でもエレベーターが1台しかなく世帯数が多ければ不便に感じることがあります。
29階建ての17階に住んでみた感想
最初に長く住んだのは、29階建てのタワーマンションの17階です。最上階というほどではありませんが、一般的には十分に高層階と呼べる位置でした。築5年程度の比較的新しい物件だったこともあり、エレベーターは想像以上に速く、単独で利用している限り17階までの移動に大きなストレスはありませんでした。
ただし、問題は他の居住者と乗り合わせた時です。3〜4人程度ならまだ気になりませんが、通勤時間帯や夕方に5〜8人ほど乗ると、複数階へ停車するため体感時間は一気に長くなります。急いでいる時に各階へ細かく停車すると、1分程度でもかなり長く感じます。大規模タワーマンションでは低層階用と高層階用でエレベーターを分けている場合もありますが、それでもピーク時間帯の混雑は完全には避けられないでしょう。
一方、眺望については非常に満足していました。周囲に高い建物が少ない地域だったこともあり、遠くまで見渡せる景色には開放感があります。「景色はすぐ飽きる」と言われることもありますが、個人的には3年間住んでも大きく飽きることはありませんでした。天候や季節、時間帯によって景色が変わるため、毎日の生活の中で自然に楽しめます。
風通しも非常に良好でした。料理の匂いが室内にこもった時でも、窓と玄関側を開ければ短時間で空気が入れ替わります。ただし、高層階ならではの風の強さもあり、バルコニーへ軽い物を置くことには注意が必要です。また夏の夜に窓を開けると、意外にも道路からの声や車の音が上まで届くことがあります。高層階だから完全に無音になるわけではありません。
地震については、3年間でエレベーターが長時間停止する経験はありませんでした。免震構造の建物だったため、震度4程度の地震でも家具が倒れるようなことはなく、揺れも比較的穏やかでした。ただし、これは建物の構造や地震の規模によって大きく異なるため、高層階全般に当てはまる話ではありません。
10階建ての3階、高級低層マンションに住んでみた感想
次に、都内の比較的高級な低層マンションに住む機会がありました。住戸自体の質感や共用部の雰囲気は良かったのですが、意外にストレスを感じたのがセキュリティ設備でした。部屋へ到着するまでに複数回カードキーをかざす必要があり、荷物が少ない時には問題ありませんが、買い物袋などで両手がふさがっているとかなり煩わしく感じます。
家賃が高いマンションであっても、設備が最新かどうかは別問題です。高級感のある石材や内装が使われていても、オートロックやエレベーターの操作性が古ければ日常生活では小さなストレスが積み重なります。マンション選びでは見た目の豪華さだけではなく、日々何度も使う設備の使いやすさも重要だと感じました。
また、周囲に樹木が多く落ち着いた雰囲気ではあったものの、音については必ずしも静かとは限りませんでした。低層階では道路や人の声、周辺施設の音などが比較的直接届きやすく、周辺環境の影響を受けやすい印象があります。
12階建ての7階に住んでみた感想
こちらは単身者向けのコンパクトな投資マンションで、間取りもかなり効率重視でした。エレベーターは1基しかありませんでしたが、1フロア4世帯程度と住戸数が少なく、日中は不在の居住者も多いため、ほとんど混雑しませんでした。
この物件で面白かったのは、最新の入退館システムです。鍵をポケットやバッグに入れておけば、エントランスやエレベーターのロックが自動で解除される仕組みになっており、カードキーを何度も取り出す必要がありません。こうした設備は一つ一つは小さな違いですが、毎日使うものなので生活の快適性にかなり影響します。
25㎡程度で賃料は約15万円と、面積だけを見れば決して安くありません。しかし、交通利便性や設備、新築であることを含めると、居住面積よりも「出入りのしやすさ」「設備の新しさ」を重視する単身者に向いた物件でした。階数そのものより、建物全体の設計が生活のストレスを左右する好例だったと思います。
10階建ての1階に住んでみた感想
現在はマンションの1階に住んでいます。この部屋を選んだ最大の理由は、専用庭があることでした。10畳以上の広さがあり、一般的なマンションのバルコニーとはかなり違った使い方ができます。
もともとは高層階が好きだったので、1階に住む前は少し抵抗もありました。実際に住んでみると、眺望はありませんし、日当たりや空気の抜け方については高層階に劣る部分があります。虫も高層階より入りやすく、周囲の植栽が多ければ湿気や落ち葉なども気になります。
しかし、それ以上に印象的だったのが「生活が楽」ということでした。エントランスから部屋までほとんど時間がかからず、エレベーターを待つ必要もありません。外出、帰宅、ゴミ出し、宅配便の受け取りなど、日常の細かな移動が非常に簡単です。マンションでありながら、一戸建てに近い感覚があります。
また、1階には下の住戸がないため、足音について神経質になる必要が少ないという利点もあります。もちろん大音量で音楽を流して良いという意味ではありませんが、子どもの足音や椅子を動かす音など、下階への生活音を気にしなくて良いのは精神的にかなり楽です。角部屋などで隣接住戸が少なければ、さらに独立性の高い住環境になります。
低層階と高層階、それぞれのメリット・デメリット
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階層 |
メリット |
デメリット |
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低層階 |
エレベーターへの依存が少ない、出入りやゴミ出しが楽、1階なら専用庭がある場合がある、下階への足音を気にしなくて良い |
眺望が弱い、日当たりが悪い場合がある、虫が入りやすい、道路や周辺環境の音・空気の影響を受けやすい |
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高層階 |
眺望が良い、開放感がある、風通しが良い、虫が入りにくい傾向がある、周囲の条件次第では非常に静か |
エレベーターへの依存度が高い、混雑時の待ち時間、風が強い、災害時の移動に不安がある、バルコニーの利用に制約が出やすい |
結局、低層階と高層階のどちらが良いのか
実際に複数の階層へ住んでみた感想としては、どちらにも明確なメリットとデメリットがあります。高層階は、眺望や開放感、ホテルライクな非日常性という点では非常に魅力的です。一方、1階は外出や帰宅、ゴミ出しなど日常動線が圧倒的に短く、生活そのものの負担が少ないという別の快適さがあります。
個人的には、中途半端な低層階を選ぶのであれば、条件の良い1階か、ある程度しっかり眺望を確保できる高層階のどちらかに振るという考え方もありだと思います。例えば2〜3階で、毎回エレベーターを使う必要があるのに眺望はそれほど得られない物件であれば、1階の専用庭付き住戸や、さらに上の階を比較してみる価値があります。
ただし、最終的には階数だけで判断すべきではありません。エレベーター1基あたりの住戸数、方角、周辺建物との距離、窓の性能、免震・制震構造、共用部から住戸までの動線、セキュリティ設備などの方が、日々の住み心地には大きく影響します。
高層階に住めば必ず快適になるわけでも、低層階だから妥協というわけでもありません。眺望を重視するのか、出入りのしやすさを重視するのか。実際には、その人が日常生活のどこにストレスを感じるかによって、最適な階はかなり変わるのだと思います。