年末年始になると、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症が流行しますね。子供に「どうして手を洗わないといけないの?」「ウイルスとばい菌って何が違うの?」と聞かれた時、意外とうまく説明できない人も多いのではないでしょうか。
日本語には「雑菌」「ばい菌」「細菌」「病原菌」「真菌」「ウイルス」など似た言葉がたくさんあります。しかし、この中には医学的な分類名と、日常的に使われているだけの言葉が混ざっています。そこで今回は、生物基礎を少し勉強した程度でも分かるように、それぞれの違いを簡単に整理してみます。
まず、大きく覚えておきたいのは「細菌」「真菌」「ウイルス」の3つです。「雑菌」や「ばい菌」は正式な生物学上の分類ではありません。
「ばい菌」は、病気を起こしそうな微生物をまとめて呼ぶ日常語です。「雑菌」も同じように、目的としている菌以外のいろいろな微生物をまとめて呼ぶ時などに使われる言葉で、「雑菌という種類の生物」がいるわけではありません。
「病原菌」という言葉もよく使いますが、より正確には「病原体」と考えると分かりやすいです。病原体とは、人に病気を起こす原因になるもののことで、細菌だけでなくウイルスや真菌、寄生虫なども含まれます。
細菌とは?
細菌は、一つの細胞からできている非常に小さな生物です。大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、肺炎球菌などが代表的です。
細菌の特徴は、条件さえ整えば自分自身で増えることができることです。水分、栄養、適した温度などが揃うと、分裂してどんどん増えていきます。食品を室温に長時間置いておくと食中毒の危険が高くなるのも、このためです。
ただし、細菌=悪者ではありません。私たちの腸や皮膚にも大量の細菌が住んでおり、その多くは普段まったく問題を起こしません。ヨーグルトなどに使われる乳酸菌のように、人間が利用している細菌もあります。
細菌による感染症には抗菌薬、いわゆる抗生物質が使われることがあります。ただし細菌の種類によって効く薬は違うため、何にでも同じ抗菌薬が効くわけではありません。
真菌とは?
真菌は、簡単に言えば「カビ、酵母、キノコの仲間」です。
例えば水虫の原因になる白癬菌や、カンジダ症を起こすカンジダも真菌です。一方で、パンやお酒を作る酵母、味噌や醤油、日本酒に使われる麹菌も真菌なので、こちらも真菌=悪いものというわけではありません。
真菌は細菌とはかなり違う生物なので、一般的な抗菌薬では治療できません。水虫などには抗真菌薬という、真菌専用の薬を使います。
ウイルスとは?
ウイルスは、細菌や真菌とはまったく違います。
一番大きな違いは、ウイルスは自分だけでは増えることができないということです。人間などの細胞へ入り込み、その細胞が持っている仕組みを使って自分自身を大量にコピーします。
イメージとしては、細菌が「自分の工場を持っている小さな生物」だとすれば、ウイルスは「自分では工場を持っておらず、人の工場に侵入して勝手に自分の商品を作らせる存在」です。
風邪の原因になるライノウイルスや季節性コロナウイルス、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、ヘルペスウイルス、HIVなどが代表的です。
よく「風邪に抗生物質を飲んでも意味がない」と言われるのは、多くの風邪がウイルスによって起こるためです。抗菌薬は細菌を狙った薬なので、ウイルスには基本的に効きません。
ただしインフルエンザやヘルペスなど、一部のウイルスには専用の抗ウイルス薬があります。
インフルエンザと手洗い
インフルエンザウイルスは「エンベロープ」という脂質の膜を持っています。この膜は石鹸やアルコールなどによって壊れやすいため、手洗いは感染対策として有効です。
ただし、インフルエンザは手からだけ感染するわけではありません。感染者の咳やくしゃみ、会話などによって空気中へ出た飛沫や微粒子を吸い込むことでも感染します。そのため、手洗いだけでなく、換気や状況に応じたマスク、ワクチンなどを組み合わせることが大切です。
手洗いについては、石鹸と流水で丁寧に洗えば十分有効です。必ず石鹸で洗った後にアルコールまで使わなければならない、というわけではありません。
ノロウイルスは少し厄介
ノロウイルスはインフルエンザとは性質が違い、エンベロープを持っていません。そのためアルコールだけでは十分な効果が得られにくく、石鹸と流水による手洗いが特に重要になります。
さらにノロウイルスは非常に感染力が強く、少量でも感染することがあります。感染者の便や嘔吐物には大量のウイルスが含まれているため、家庭内で感染者が出た場合には処理にも注意が必要です。
嘔吐物などで汚れた場所の消毒には、適切な濃度の次亜塩素酸ナトリウムを使用する方法があります。ただし、これは床や物品などの消毒に使うもので、手に塗るものではありません。手指は石鹸と流水で洗うのが基本です。
「インフルエンザ菌」という細菌もいる
ややこしいことに、「インフルエンザ菌」という名前の細菌も存在します。
名前にインフルエンザと入っていますが、インフルエンザウイルスとはまったく別物です。昔、インフルエンザの原因だと誤解されたことから、この名前が残っています。
インフルエンザ菌は中耳炎、副鼻腔炎、肺炎などを起こすことがあります。乳幼児に重い感染症を起こすHibもインフルエンザ菌の仲間で、現在はワクチンによる予防が行われています。
抗生物質はウイルスには効かない
細菌感染症では抗菌薬が使われますが、ウイルスには基本的に効きません。風邪をひいたからといって、以前もらった抗菌薬を自分の判断で飲むのはよくありません。
また、処方された抗菌薬は自己判断で量を減らしたり、途中で止めたりせず、医師や薬剤師の指示通りに使うことが大切です。不必要な抗菌薬の使用は「薬剤耐性菌」と呼ばれる、薬が効きにくい細菌が増える原因にもなります。
まとめ
覚え方としては、かなり簡単にすると次のようになります。
|
呼び方 |
簡単な意味 |
|---|---|
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雑菌 |
正式な分類ではない。いろいろな微生物をまとめた呼び方 |
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ばい菌 |
正式な分類ではない。病気を起こしそうな微生物を表す日常語 |
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細菌 |
自分自身で増えることができる小さな生物 |
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病原体 |
人に病気を起こす細菌・ウイルス・真菌などの総称 |
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真菌 |
カビ、酵母、キノコの仲間 |
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ウイルス |
自分だけでは増えず、人などの細胞を利用して増える |
つまり、子供に「ウイルスとばい菌は何が違うの?」と聞かれたら、「ばい菌というのは悪い菌をまとめて呼んでいる言葉で、本当は細菌やウイルスなど色々あるんだよ。細菌は自分で増えられるけど、ウイルスは人の細胞に入らないと増えられないんだ」と説明すると、かなり正確です。
そして手洗いが大切なのは、手についた細菌やウイルスを口、鼻、目などへ運んでしまうのを減らせるからです。感染症対策は難しく考えすぎず、まずは石鹸で手を洗う、換気をする、体調が悪い時は無理をしない。この基本を守ることが一番大切です。