新型AMG CLSは保守的だ!Mercedes AMG CLS 53 4MATIC+試乗してきました

クルマ
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とある知り合いから「英国車から乗り換えて、今度はコンパクトな車が欲しい!」と相談を受け、急遽メルセデス・ベンツ AMGの試乗に付き添うことになりました。

ちなみにその英国車、銀座三越の駐車場では問答無用で入庫拒否、銀座シックスではかろうじて平置き駐車場に案内され、紀伊国屋インターナショナルでも断られる始末。そこで「立体駐車場や機械式に入れる便利な車を!」という流れでCLSを見に行くことになったわけです。

駐車場で断られる英国車

最初に断っておくと、私は筋金入りのBMW信者です。
メルセデス・ベンツなんて“年寄りの乗る車”とすら思っていたほど。BMWのダイレクトなハンドリングや滑らかな直6エンジンが何より大好きなのです。

AMG CLS 53 ― デザインと居住性

初代CLS(W219型)のデザインは今でも大好きです。友人が購入した際には嬉しくて助手席に乗せてもらったほど。深海魚のようなフロントマスクが可愛らしく、リアは怪しげで「真っ当な職業の人が乗る車には見えない」くらい独特でした。

ただし居住性は犠牲になっており、運転席も助手席も狭く、後部座席に至っては身長180cmの私には“横にならないと無理”なほど窮屈でした。

一方、新型CLS 53(C257型)は兄弟車に合わせたデザインで万人受けするルックスに進化。車内は広く、インテリアも秀逸。かつて笑ってしまうほど狭かった後席も改善され、180cmの男性が4人乗ってもドライブできるレベルになっています。もちろん天井との距離はギリギリですが、圧迫感はだいぶ減りました。

デザインへの正直な感想

正直に言うと「もう少し攻めてほしかった!」というのが本音です。初代のように、最初は“気持ち悪い”と感じつつ、見ているうちにクセになる――そんなキモカワなデザインを期待していました。現行モデルは誰からも好かれるスマートな輸入車に落ち着いています。

電動トランクやマッサージ機能、アンビエントライト、自動運転といった最新装備はディーラーで体感すれば十分なのでここでは割愛します。

最後にひと言。「これ、本当にAMG?」と口にしてしまうほどデザインはシンプル。
かつてのC63 AMGクーペ ブラックシリーズのような“これぞチューンドカー!”というギラギラ感はなく、むしろエントリーモデルのような優しい雰囲気。女性が乗っても違和感はなく、幼稚園の送迎にも使えるでしょう。

数値から想像できない走行性能

新技術「ISG」は直列6気筒と組み合わされ、新開発の3.0リッター直列6気筒直噴ターボエンジン+ISG+電動スーパーチャージャー、そしてダイナミックなシフトチェンジを可能にするAMGスピードシフトTCTが搭載されています。

スペック表や宣伝文句だけを見るとピンと来ませんでしたが、実際に試乗すると印象は一変します。エンジンスタート時のサウンドは拍子抜けするほど常識的。

かつてのAMGが

「ブオーン!!バリバリバリ!!」

と威勢よく目を覚ましていたのに対し、このCLS 53は

「あ、エンジン掛かりましたね」

という程度。直列6気筒らしい心地よさはあるものの、控えめで上品な始動音です。

走り出しの印象

すぐに気づくのが、操作感がとても“ニュートラルで滑らか”なこと。

アクセルを踏み込むと極低速から電動スーパーチャージャーが介入しますが、ターボラグを感じさせず、加速は実に自然。

ブレーキフィールも秀逸です。しっかり車体中央で減速する感覚があり、BMWで例えるなら6シリーズに近い仕上がり。

以前CクラスやAクラスを試乗した際には、ブレーキが前のめりに効きすぎて不快に感じたことがありましたが、このCLSはスポーツカーでありつつ高級車らしい安心感のある制動特性を持っています。

ハンドリングと駆動感覚

ハンドルも驚くほど自然で、4MATIC(四輪駆動)を意識させません。CLS 220dがFRであることもあり、FRベースの4WDらしく切れ味はシャープ。

ただし「AMGだから」と身構えるような極端なダイレクト感ではなく、BMW M4のようにスパルタンでレーシングカー的な挙動とも違います。

CLS 53は“滑らかで上品”――それでいてドライバーの意図通りにしっかりと応えてくれる。まさに高級スポーツサルーンらしい完成度を感じました。

伝家の宝刀、シルキーシックスはBMWだけではない?

大通りでスポーツモードに切り替えてアクセルを踏み込むと――BMW信者の私ですら「マジで!?」と声に出そうになるほど滑らかな加速を見せます。BMWにはN54、N55、B58系など名機と呼べる直6エンジンが数多く存在しますが、それらと比べてもCLS 53のM256エンジンは見事。BMW 640i(F12)よりもスムーズに加速していきます。

試乗は常識的な速度域にとどめたので、時速100〜200kmといった世界でどうかは分かりません。ただ、少なくとも銀座の中央通りを走るには十分すぎるほど上質なフィーリングでした。

私はすでに“ジジイの入り口”に片足を突っ込んでいるので、「やっぱりNAエンジンが至高」「ターボはフィーリングが物足りない」と思い込んでいました。ところが、技術の進歩は凄まじく、CLS 53ではNAと同等の“つなぎ目のない滑らかさ”が見事に実現されています。

むしろ、かつて憧れた大排気量NA――例えばE92 M3やM5の方が加速にムラを感じるほど。さらに組み合わされるミッションも秀逸で、BMWのDCTよりも圧倒的にスムーズ、かつMTに匹敵するダイレクト感を持ち合わせています。

古い車には古い車の楽しさがあります。しかしパソコンや携帯電話が進化してきたように、クルマの進化も止まらない――その現実をCLS 53はまざまざと見せつけてくれました。

大きな男の子が大興奮

そして試乗で最も「おっ!」と思ったのが、シフトチェンジ時のブリッピング音。

スポーツモードにすると、これでもか!というほど 「バリバリバリ!」 と派手な排気音が響きます。BMW乗りの立場からすれば「ちょっとわざとらしいな」と思うのですが、実際に運転席で体感すると――

「カッコいい〜!」

と素直にニヤけてしまう。結局、男は何歳になっても子供心を忘れられないのです。

さらにスポーツモードでは、コーナリング時に荷重が掛かる方向のシートランバーサポートがモコッと膨らみ、身体を支えてくれます。初めて体験すると「おおっ」と違和感がありますが、慣れれば便利だと感じるはずです。

快適性とスポーツ性の両立

サスペンションは快適性を重視したチューニング。BMWのMモデルが「快適性を犠牲にしてでもポルシェに勝つ」方向でゴツゴツの足回りになるのとは対照的です。

Mモデルでは路面の凹凸がダイレクトに突き上げ、窓からはエンジン音と騒音が容赦なく飛び込んできます。

一方でCLS 53はAMGでありながら、スポーツモードでも快適。車内に不要な騒音は入ってこず、それでいて一昔前の国産スポーツカーを思わせる「ちょうどいいダイレクト感」と楽しさがあります。

絶対的なパワーやサーキットでのラップタイムは控えめかもしれません。しかし、日常のドライブを快適かつ楽しくする工夫が随所に感じられるのです。

燃費も時代に適応

営業担当者の話によると、市街地では6〜7km/L、高速道路では10km/L程度の燃費を実現するとのこと。

「燃費なんて気にするな!」とガソリンを豪快に消費していた昔のAMGと比べれば、まさに時代に合わせて進化した姿と言えるでしょう。

新型CLSの価格設定

CLS 220d スポーツは 8,150,000円(税込) 1,949cc / 直列4気筒 / 194ps 40.8kg
CLS 450 4MATIC スポーツ ISG搭載モデル 10,590,000円(税込) 2,996cc / 直列6気筒 / 367ps 51kg
Mercedes AMG CLS 53 4MATIC+ 12,740,000円(税込) 2999cc / 直列6気筒 / 435ps 53kg

驚かされるのは、AMGモデルの価格設定です。

先代のCLS 63 SはV型8気筒DOHC(5,461cc)・585psを誇り、価格は税込1,884万円からでした。それに比べると、新型CLS 53は8気筒ではなく、出力も435psに抑えられているとはいえ、大幅にプライスダウンした印象があります。

しかもAMGらしく、標準仕様の段階で装備はほぼフルセット。オプション費用がほとんど掛からないのも特徴です。逆にCLS 450の方は「215万円差でパワー控えめ」という見え方になり、やや割高感すら漂います。

メルセデス・ベンツの保守的なコンセプト

正直、メルセデス・ベンツがここまで「ドライビングの心地よさ」を重視しているとは思ってもいませんでした。

少し前のCLS 63は、ただ闇雲にパワーを上げてみたり、2000ccのエントリーモデルを無理に用意してみたり――「運転手のことなんて考えてないな。次はEVの自動運転に突っ走るのだろう」と思わせる路線でした。

ところが新型CLSでは、BMWに真っ向からぶつけるように直列6気筒エンジンを搭載し、さらに極上のスーパーチャージャーを組み合わせ、ドライバーを置き去りにしない絶妙なパワーとフィーリングを実現。BMW信者の私ですら「素晴らしい!」としか言えない仕上がりです。

AMGにはハイブリッド技術も盛り込まれていますが、それを意識させない自然な完成度も好感が持てます。まさに「保守的なコンセプト」と呼ぶにふさわしいと思います。

そして「メルセデスはジジ臭い」という発想自体が、もはや時代遅れ。デザインは洗練され、インテリアは美しく、居住性は優れ、燃費も良い。それでいてBMWと肩を並べるドライビングプレジャーがあるのです。

これは輸入車好きならブランドの垣根を超えて楽しむべき領域です。融合された最新テクノロジーと、本質的な走る喜び――その両方を、ぜひ試乗で体験してみてください。

Mercedes AMG CLS 53 4MATIC+スペック

0~100 km/h 加速: 4.5秒
寸法: 全長 5,001 mm x 全幅 1,896 mm x 全高 1,422 mm
車両重量 : 1,950kg (CLS450 4MATIC)
燃料タンク容量: 66L
最大出力: 320kW 435ps
エンジン: DOHC 直列6気筒ターボチャージャー付き 3.0L
バッテリー: 48V 20Ah 1.48V リチウムイオン電池
駆動方式 : 四輪駆動(4WD)
ステアリング : 左・右

Mercedes-Benz | Japan - 公式サイト
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