新型コロナウイルスが流行してから、早くも2年目になりました。ワクチン接種も進み始めていますが、2021年8月現在では希望していてもまだ接種できていない人も多く、以前の生活に完全に戻るにはまだ時間がかかりそうです。
仕事のスタイルにも大きな変化が見られます。在宅勤務やテレワークが急速に普及し、副業・兼業を認める企業も増え、東京の会社に所属しながら地方へ移住するといった働き方も珍しくなくなってきました。わずか1〜2年の間に、それまで当たり前だった「会社へ行く」「会議室で打ち合わせをする」「取引先へ訪問する」という仕事の常識そのものが変わりつつあります。
そして仕事の方法が変われば、当然ながらマナーも変わります。今回は実際の仕事や打ち合わせの中で見かけるようになった、コロナ禍ならではの新しいマナーについて書いてみます。
Google Meetで契約まで進める
コロナ対策という理由もありますが、実際には効率化や移動時間の短縮というメリットも大きく、Google MeetやZoomなどのビデオ通話を使って商談から契約手続きまで進めるケースが増えています。
少し不思議なのは、「電話だけでは難しい」とされていた打ち合わせでも、ビデオ通話になると対面に近いものとして扱われることです。もちろん画面共有で資料を見せたり、相手の表情を確認したりできるため電話とは情報量が違いますが、実際に話している内容だけを取り出せば音声通話とそれほど変わらないこともあります。それでも、お互いの顔が見えるだけで正式な「打ち合わせ」として成立しやすくなるのは面白いところです。
さらに興味深いのが、オンライン会議なのにマスクを着用している人を見かけることです。当然ながら画面越しに新型コロナウイルスへ感染することはありません。しかしオフィスから参加していて周囲に人がいる場合もありますし、「感染対策をきちんとしている会社です」という印象を相手へ与える意味もあるのでしょう。
コロナ禍が長期化し、日常的にマスクを着ける生活が続いたことで、人前で鼻や口元を出すこと自体に以前とは違った感覚を持つ人も出てきたように思います。長期間マスク姿だけで接している相手の場合、初めて顔全体を見ると妙に新鮮に感じることさえあります。感染対策として始まった習慣が、人との距離感や身だしなみの感覚まで変え始めているのかもしれません。
対面打ち合わせでは「目の前でアルコール消毒」
対面での打ち合わせでは、アルコールによる手指消毒も完全に日常の風景になりました。店舗や会社の入口に消毒液が置かれているだけでなく、担当者が顧客の目の前で手指を消毒してから資料や商品を扱う場面も見かけます。
もちろんアルコールは大量に使えば使うほど感染対策になるというものではありません。それでも相手の目の前で手指を消毒することには、衛生対策そのものに加えて「これから触れる物について衛生面に配慮しています」という意思表示の意味もありそうです。飲食店の店員が客の前でテーブルを消毒するのと同じように、感染対策を「実施する」だけでなく「見えるように実施する」ことまで、一種の接客マナーになってきました。
一方で、手洗いやアルコール消毒の回数が急激に増えたことで、手荒れに悩む人も増えています。筆者自身も頻繁な手洗いと消毒が続いた時期に手湿疹を起こし、手がガサガサになって角質が厚くなり、剥がれてくる状態になりました。皮膚科でステロイド外用薬を処方してもらい改善しましたが、感染対策を続けながら皮膚を守ることも必要だと実感しました。
手洗いやアルコール消毒を繰り返すと、皮膚を保護している皮脂なども失われやすくなります。感染対策だからと必要以上に消毒を繰り返すのではなく、必要な場面で適切に行い、乾燥しやすい人はハンドクリームなどで保湿することも大切です。
とりあえずLINEを交換する
もう一つ大きく変わったと感じるのが、仕事相手とのLINE交換です。少し前までなら「LINEはプライベート、メールは仕事」と明確に使い分けていた人も多かったと思います。しかし最近では、取引先や仕事関係者ともLINEで連絡することが珍しくなくなりました。
理由を考えてみると、確かに便利です。レスポンスが速い、既読・未読が分かる、写真を簡単に何枚も送れる、PDFやWordなどのファイルも送れる。メールのように毎回件名を考える必要もなく、短いやり取りを連続して行う場合には圧倒的に楽です。
メールには長い間、手紙文化の名残がありました。「○○株式会社○○部○○様」「いつも大変お世話になっております」「株式会社○○の○○です」と始まり、本題を書き、最後に「何卒よろしくお願い申し上げます」と締める。新入社員が最初にビジネスメールの書き方を教わる会社も多かったと思います。
しかしLINEやビジネスチャットになると、この形式はかなり簡略化されます。「お世話になっております。先ほどの資料を送ります」「確認しました。ありがとうございます」といった具合に、すぐ本題へ入ります。メールで同じ文章を送ると少し素っ気なく見えるのに、チャットではむしろ自然です。連絡手段が変わることで、ビジネス文章そのものの作法まで変化していることが分かります。
アルバイトやパートの現場でもグループチャットを作り、シフトの連絡、業務報告、写真の共有などを行うケースがあります。少し前なら電話、紙の連絡帳、メールなどで行っていた仕事が、スマートフォン一台へ集約され始めています。
コロナ禍で「仕事のマナー」そのものが変わった
振り返ってみると、ここ1〜2年で仕事の常識はかなり変わりました。取引先へ直接訪問することが丁寧だった時代から、「わざわざ来てもらうよりGoogle Meetで30分話しましょう」という考え方が広がり、名刺交換をしなくても仕事が始まり、契約まで一度も直接会わないケースさえ出てきています。
一方、どうしても対面する必要がある場面では、マスク、手指消毒、距離の確保など、以前には存在しなかった振る舞いが新しいマナーとして加わりました。オンラインでは効率化が進み、対面では逆にこれまで以上に相手への衛生上の配慮が求められるという、少し不思議な時代です。
LINEやビデオ会議がこれからも定着するのか、それとも新型コロナウイルスの流行が収まれば以前の働き方へ戻るのかは、まだ分かりません。ただ、一度「会社へ行かなくても仕事ができる」「直接会わなくても契約できる」と多くの人が経験した以上、すべてが以前と同じ状態へ戻ることもないように思います。
仕事の方法が変われば、そこで求められるマナーも変わります。数年前には失礼だと思われていたことが普通になり、逆に以前なら気にも留めなかった行動が相手への配慮として求められるようになる。刻々と変化する新しい仕事のマナーに、うまくついていきたいものですね。