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国内ゴマ会社はインチキ?『純国産ゴマ』をメルカリで買ってみた

ほんの10年ほど前までは、飲み屋へ行くと、こちらが聞いてもいないのに食や酒について延々と語ってくるオヤジがいたものです。

「○○はインチキだよ。あんなの偽物だ!」

と、怒涛のように独自理論を展開してきます。たいてい話のスタートは、「戦後の米不足から生まれた三増酒が、飽食の現代になっても酒造りに影響を残している」といった日本酒談義です。そこから「昔の酒はもっと純粋だった」「吟醸酒なんて……」と話が膨らみ、今度は遠方から鉄道輸送される食材を指す、いわゆる“レール物”の批判へ移り、最終的には中国産食品の話まで到達する。だいたいこの流れがお決まりでした。

静岡市で酒を飲んでいると、酔っぱらったオヤジから二言目には「東京の銀座っていうのはなぁ、徳川家康が駿府に銀座を置いたことと関係があってなぁ」と歴史講義を受けることがありますが、食材についても似たようなものです。産地、流通、加工方法、昔の食文化まで、頼んでもいないのに一通り教えてくれます。

令和の時代になると、こうした反骨精神あふれる「美味しんぼオヤジ」がずいぶん減りました。飲みに行っても食について説教されることが少なくなり、少し寂しい気すらします。もちろん、彼らの話は半分くらい誇張されていたり、記憶違いだったりするのですが、それでも所々に妙に核心を突いた指摘が混ざっていました。当時20歳くらいだった私は、かなり真剣に聞いてしまったものです。

そんなわけで、今度はアラサーになった自分が説教オヤジになる番なのか……と、少し重荷を背負った気分になりました。とはいえ、いきなり大手酒造メーカーやサントリーに噛み付くほどの勇気はありません。

そこで今回は、手始めに「ゴマ」を批評してみたいと思います。

日本で食べているゴマのほとんどは輸入品?

日本で流通しているゴマのうち、国産品はごくわずかです。国内自給率は1%を大きく下回る水準とされ、私たちが普段スーパーなどで目にするゴマの大部分は、海外で収穫された原料を日本へ輸入し、国内で選別・焙煎・包装などを行ったものです。

ところがスーパーでパッケージを見ると、「いりごま(国内製造)」などと書かれている商品があります。その横には「香ばしく煎り上げた」「二度焙煎で香り高く」「選び抜いたごまをじっくり煎り上げました」など、かなり立派な説明が並んでいます。

ここで少しややこしいのが、「国内製造」という言葉です。

これは基本的に、最終的な加工や製造が日本国内で行われたことを示すもので、「ゴマそのものが日本で栽培された」という意味ではありません。

したがって、

いりごま(国内製造)

という表示を見て、「日本産のゴマなんだ」と受け取ってしまう人がいても不思議ではありませんが、実際には海外産のゴマを国内で焙煎している商品もあります。

これは食品表示制度上のルールに沿った表示ではありますが、消費者としては「どこで加工したか」だけではなく、「どこの国で収穫されたゴマなのか」も知りたくなります。

例えばコーヒー豆なら、「ブラジル、コロンビア」など原料原産国が書かれている方が分かりやすいですよね。ゴマも同じように、原料の産地と国内での加工工程が分かれて表示されていると、より選びやすいと思います。

少なくとも、「国内製造」と「国産原料」は別物だということは覚えておいた方が良さそうです。

国産ゴマと市販の輸入原料ゴマを比べてみる

そこで実際に、普段スーパーで購入している市販の白ゴマと、メルカリで見つけた国内生産者の金ゴマを比較してみました。

もちろん、白ゴマと金ゴマでは品種も性質も違うため、厳密な比較試験にはなりません。同じ産地、同じ品種、同じ焙煎条件で比較しているわけではないので、あくまで食べた時の印象です。

まず見た目からかなり違います。

購入した国産金ゴマは粒が比較的きれいに揃っていて、異物や割れた粒も少なく、かなり丁寧に選別されている印象があります。生産者によれば手作業でも選別しているとのことで、小規模生産ならではの手間がかかっているのでしょう。焙煎の色も比較的均一で、見た目だけでも美しいです。

一方、スーパーで購入した白ゴマには、少し濃く焼けた粒や砕けた粒なども混ざっています。ただし、これは大量生産品として考えれば特別おかしいことではありません。価格や供給量を考えると、むしろ驚くほど安定した品質とも言えます。

実際に食べると、かなり違う

市販の白ゴマは、馴染みのある香ばしい焙煎香があります。噛むと少し苦味が出た後に油脂のコクが広がり、いかにも「ゴマらしい」味です。ゴマ油を連想させる香ばしさがあり、料理へ使った時にも分かりやすい存在感があります。

少し青っぽいというか、グリニッシュなニュアンスもあります。

一方、国産の金ゴマはかなり印象が違いました。

最初に感じたのは、少し発酵した植物や乾いた葉のような香りです。かなり変な例えですが、ドミニカ産の葉巻、それもカンデララッパーのような青みのある葉のニュアンスを少し連想しました。

噛むと、最初から強い香ばしさが出てくるのではなく、じわじわと旨味と優しい渋味が広がります。

市販の白ゴマが「香ばしい、油が甘い、ゴマらしい」という分かりやすい方向だとすれば、国産金ゴマにはもう少し滋味深さがあります。噛んでいる時間によって味が変化し、植物そのものを食べているような感覚があります。

ワインではありませんが、思わず「ゴマにもテロワールがあるのでは?」と言いたくなるほど、産地や栽培条件による違いを想像したくなる味でした。

食べる直前にフライパンなどで軽く煎り直すと、香りがさらに立ちます。ただし加熱しすぎると苦味が出るので、ほんの短時間で十分です。

そして結論、市販のゴマも普通に美味しい

ここまで書いてきたので、美味しんぼのように輸入ゴマを食べて、

「なんだこれは! 香りが死んでいる!」

くらい言ってみたいところです。

ところが。

市販のゴマ、普通に美味しいです。

あれ?

国産金ゴマを食べる。

こっちも、すごく美味しい。

結果、

「市販のゴマ美味しいよね」

「わ、国産ゴマもすごく美味しい!」

という、極めて平和な結論になりました。

期待していたような「大量生産の輸入ゴマは偽物だ!」という美味しんぼ的展開にはなりませんでした。むしろ市販品は市販品として価格、品質、安定供給のバランスがよく、国産品は希少性と手仕事、味の個性に魅力があります。

ただ、消費者として一つ希望があるとすれば、原料原産地がもう少し分かりやすく表示されていると嬉しいです。

七味唐辛子のように原料が何種類も混ざった食品ならまだしも、ゴマ単体の商品であれば、「このゴマはどこの国で採れたものなのか」を知りたくなる人は少なくないと思います。

国産ゴマは、そもそもかなり希少

今回購入した金ゴマは、埼玉県の生産者から購入したもので、200gで1,400円ほどでした。

スーパーの輸入原料を使ったゴマと比較すればかなり高価ですが、国内で栽培し、収穫し、乾燥させ、選別し、商品として販売する手間を考えると、むしろ良心的な価格にも感じます。

国産ゴマは流通量そのものが非常に少なく、スーパーで当たり前に買える食品ではありません。ネット通販や産直販売を探すと白ゴマ、黒ゴマ、金ゴマなどを生産している農家が見つかります。

普段使っている輸入ゴマを否定する必要はありません。

料理には安定して安く使える市販品を使い、少し贅沢したい時には国産ゴマを使ってみる。そんな楽しみ方でも十分だと思います。

今回、「国内のゴマ会社はインチキなのでは?」という美味しんぼオヤジ的な気持ちから調べ始めましたが、結論としてはそこまで刺激的な話にはなりませんでした。

市販品は普通に美味しい。

国産品はまた違った方向ですごく美味しい。

表示だけ、もう少し分かりやすくしてもらえたら嬉しい。

ということで、説教オヤジとしては少々不完全燃焼ですが、今回はゴマのお話でした。