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アイル オブ ラッセイ蒸留所 Isle of Raasay Distillery シングルモルト R-01の感想と味わいは?

話題のシングルモルト「アイル・オブ・ラッセイ R-01」を飲んでみました

リカーマウンテン銀座777で、以前から気になっていたシングルモルト・ウイスキー「アイル・オブ・ラッセイ R-01」を手に入れました。まだ新しい蒸留所のファーストリリースということもあり、完成された長期熟成ウイスキーを楽しむというより、「これからどう育っていくのか」を想像しながら飲むのが面白い一本です。

アイル・オブ・ラッセイ蒸留所とは?

初めて名前を聞く人もいると思いますが、「アイル・オブ・ラッセイ蒸留所」はスコットランド西岸、インナー・ヘブリディーズに浮かぶラッセイ島にあります。島そのものは非常に小さく、すぐ西側にはタリスカー蒸留所で有名なスカイ島があります。

タリスカー蒸留所周辺から直線距離で見てもそれほど離れておらず、地図で確認すると「こんな場所に新しい蒸留所ができたのか」と一気に親近感が湧きます。

アイル・オブ・ラッセイ蒸留所は、単純にウイスキーを造るだけの工場ではありません。ビジターセンターに加えて、蒸留所に隣接する「Borodale House」で宿泊もできるようになっており、島を訪れてウイスキーを飲み、そのまま泊まることができます。

ウイスキーだけでなくジンも製造している点は、少しブルックラディ蒸留所を連想させます。小さな島そのものの魅力と蒸留酒を一体にして発信していこう、という新しい蒸留所らしい考え方です。

アイル・オブ・ラッセイ蒸留所の特徴

ラッセイの大きな特徴は、「島で造る」ことをかなり徹底しているところです。

ウイスキーとジンはラッセイ島で蒸留され、ウイスキーは島内で熟成、ボトリングまで行われます。仕込み水には、蒸留所敷地内の井戸「Tobar na Bà Bàine」から汲み上げた水を使用しています。

現在の大麦は基本的にスコットランド産ですが、将来的にはラッセイ島で栽培した大麦を使ったシングルモルトも目指しています。実際に島内で大麦栽培にも取り組んでおり、最終的には「ラッセイ島で育った大麦を、ラッセイ島の水で仕込み、ラッセイ島で蒸留・熟成する」というところまで持っていこうとしているようです。

発酵時間も比較的長く、3日程度のものと5日程度のものを使い分けています。長い発酵によってフルーティーなエステル香を引き出し、樽に入れる前のニューメイクの段階からブラックベリーやダークフルーツを思わせる香味を狙っているとのことです。

6種類の原酒を組み合わせる独特な設計

R-01の面白いところは、ピーテッドとアンピーテッド、つまり泥炭を焚いた麦芽と焚いていない麦芽の原酒をそれぞれ造り、さらに3種類の樽を組み合わせているところです。

使われているのは、

・ファーストフィルのライ・ウイスキー樽
・バージン・チンカピン・オーク樽
・ファーストフィルのボルドー赤ワイン樽

の3種類です。

これをピーテッド原酒とアンピーテッド原酒で別々に熟成させるため、最終的には6種類の原酒をヴァッティングして一本のウイスキーを作っています。

特に変わっているのがチンカピン・オークです。北米原産のオークで、バニラやスパイス、濃い色調を比較的早く与えやすい樽材です。スコッチでは一般的なバーボン樽やシェリー樽とは少し違った方向性なので、まだ若い原酒へ早い段階から複雑さを与える狙いもありそうです。

パッケージ裏には使用されている樽構成などがかなり細かく書かれており、公式サイトにもQ&A形式で製造方法が紹介されています。

香りや味わいの方向性まで図式化されているので、今後リリースが増えてきた時に、「このバッチは煙が強い」「こちらはフルーツ寄り」と比較しやすいのも面白いです。

ボトルデザインにもラッセイ島を表現

ボトルも非常に特徴的です。

一見するとデキャンタのような厚いガラス瓶ですが、表面にはラッセイ島の岩肌や地質を思わせる凹凸が付けられています。

ラッセイ島は地質学的にも非常に複雑な島で、さまざまな年代の岩石や地層が見られることで知られています。その荒々しい地形をボトルの表面へ落とし込んだデザインになっていて、単に高級感を出すための装飾ではありません。

手に取ってみると、普通のウイスキーボトルとはかなり違います。

島そのものを商品デザインに組み込んでいるという意味では、非常に現代的です。伝統的なスコッチのイメージを残しながら、観光、建築、パッケージ、ブランディングまで全部まとめて「ラッセイ」という一つの世界観を作っています。

パッケージには島の人口が非常に少ないことや、地質についての紹介も書かれており、「ウイスキーだけを売る」というより「島そのものを知ってほしい」という意図がかなり強く感じられます。

実際に飲んでみると?

事前情報をほとんど入れずに飲んでみた最初の印象は、

「なんだこれ、全然熟成していないなぁ」

でした。

かなり若いです。

ところが少し時間を置いてみると、単純な未熟さだけではない面白さも出てきます。アランモルトを連想させる厚みや、カリラのような塩気、少し塩キャラメルを思わせるニュアンスがあります。

香りの最初にはキャラメルやアプリコットのような甘さがあり、その後にレモンバーム、青いミントのような爽やかさが出てきます。さらに奥には、湿った腐葉土や森の地面のような少し暗い香りもあります。

若い原酒なのですが、味が単調ではありません。

調べてみると、それも当然で、R-01は蒸留所のファーストリリースです。蒸留開始が2017年で、このボトルに使われている原酒の多くはスコッチウイスキーとして最低限必要な3年以上の熟成を経たばかりです。

「そりゃ若いわけだ」と納得しました。

色が濃いから熟成しているわけではない

見た目は意外に濃い色をしています。

しかし、この色だけを見て長期熟成だと思ってはいけません。

ラッセイはナチュラルカラーを謳っているためカラメル色素で着色しているわけではありませんが、バージン・チンカピン・オークやボルドー赤ワイン樽など、短期間でも色や樽成分が出やすい樽を使っています。

特に新樽に近いチンカピン・オークは木材由来の色や香味が早く入りやすく、ボルドーワイン樽からも色調が加わります。

つまり、「色が濃い=長く熟成している」という単純な関係ではありません。

むしろ3年程度の若い原酒へ、複数の個性的な樽を組み合わせることで、短期間でも立体的な味を作ろうとしているように感じます。

今すぐ「素晴らしい!」とは言えない。でも面白い

では、このR-01が今すぐものすごく美味しいのか。

正直に言えば、

「素晴らしい!」

とまでは思いません。

若さは明確にありますし、熟成したアイラモルトやハイランドモルトのような統合感もまだありません。

しかし、全く話にならない未熟なウイスキーかと聞かれれば、全然そんなことはありません。

むしろ原酒の芯はかなり良さそうです。

6〜8年、さらに10〜12年と熟成した時にどうなるのか、かなり興味があります。今はまだパーツがばらばらに見える部分がありますが、それぞれが熟成によってつながれば、非常に面白いシングルモルトになる可能性があります。

偉大な女優になる前の、まだ若い頃の素顔を見ているような感覚です。

完成されてはいない。

でも、何かある。

その「何か」を確認するために買うウイスキーとしては、R-01はかなり面白いと思います。

R-01という名前もファーストリリースらしい

「R-01」は、Raasayの最初のリリースを示す名称です。

今後どのような番号体系になるのかは分かりませんが、こうした初期リリースを一本持っておくのも楽しいと思います。

ブルックラディのオクトモアのように、将来リリース番号が重なっていけば、「最初はこんな味だった」と比較することができます。

新興蒸留所を追いかける面白さはここにあります。

完成された18年や25年を買って評価するのとは違い、まだ若い原酒を飲みながら「この蒸留所は10年後どうなるのだろう」と考える。

美味しく飲むためだけではなく、青田買いというか、蒸留所の成長記録として一本保存しておくのも良さそうです。

アイル・オブ・ラッセイ R-01 スペック

項目

内容

リリース

2021年

アルコール度数

46.4%

生産本数

約26,000本

熟成年数

3年以上

色

ナチュラルカラー

濾過

ノンチルフィルタード

原酒

ピーテッド/アンピーテッド

樽

ファーストフィル・ライウイスキー樽、バージン・チンカピン・オーク樽、ファーストフィル・ボルドー赤ワイン樽

大麦

スコットランド産大麦

大麦品種

コンチェルト

仕込み水

Tobar na Bà Bàineの井戸水

発酵

約3日および約5日

樽詰め度数

63.5%前後

蒸留時期

2017年〜2018年

ボトリング

2021年

ラッセイが目指している味

蒸留所が目標としているのは、ヘブリディーズの昔ながらのシングルモルトを思わせる、ダークフルーツと穏やかなスモークが共存するスタイルです。

ブラックチェリー、アプリコット、ブラックベリーのような濃い果実と、海沿いの島らしいスモーキーさ。

1960年代から1970年代初頭のボウモアなど、現在とは少し違うフルーティーなアイラモルトを連想させる方向性を目標にしているようです。

R-01の段階では、そこまで完成されたフルーツ感にはまだ到達していないと思います。

しかし、アプリコットやキャラメル、ハーブ、湿った土、軽いスモークなど、その片鱗は確かにあります。

これが熟成によってどう変わるのか。

ラッセイという蒸留所は、今完成されたウイスキーを買うというより、「これから完成していく蒸留所」を楽しむ場所なのかもしれません。

アイル・オブ・ラッセイ蒸留所の基本スペック

項目

内容

所在地

スコットランド・ラッセイ島

蒸留開始

2017年

年間生産能力

約188,000LPA

マッシュタン

約1トン

ウォッシュバック

5,000L × 6基

発酵時間

最大約115〜118時間

ウォッシュスチル

約5,000L

スピリットスチル

約3,600L

熟成

原則ラッセイ島内

大麦

スコットランド産を中心に使用

島内大麦

ラッセイ島産大麦を使ったリリースも計画・生産を推進

まだ歴史の短い蒸留所なので、ラッセイをラガヴーリンやボウモア、タリスカーなどと同じ尺度で評価するには早すぎます。

しかし、島内熟成、長時間発酵、ピーテッドとアンピーテッド原酒の使い分け、チンカピン・オークやワイン樽の利用、そして将来的な島内産大麦への取り組みを見ると、かなり明確な思想を持った蒸留所です。

R-01は完成品というより、その思想の「第1章」のような一本でした。

今飲んで最高のウイスキーかと聞かれれば、そこまでは言えません。

でも10年後、「R-01の頃から飲んでいた」と言えたら、ちょっと嬉しい。

そんなタイプのウイスキーです。