ライカM11レビュー:Typ240から進化した最新レンジファインダーの実力

テック&ガジェット
この記事は約8分で読めます。

ライカ店舗でM11を触らせてもらいました!
2013年発売のライカM Typ240と比較して簡単に紹介してみます。

ライカM11とは?

ドイツの老舗カメラメーカー「ライカ」が製造する最新のレンジファインダーカメラです。長い歴史と伝統を受け継ぎながら、最新技術を盛り込んで設計されたフラッグシップモデルになります。

M11の最大の特徴は、やはり6000万画素のフルサイズCMOSセンサー。Typ240と比較すると解像度は格段に向上しており、風景撮影でもポートレートでも、細部までくっきりとブレなく記録できます。

外観は従来のMシリーズらしいクラシックでシンプルなデザインを踏襲しています。「一見同じ」に見えますが、中身は大きく進化。ボディはマグネシウム合金製となり、軽量化と耐久性を両立しています。持ち運びやすさと堅牢性を兼ね備えているのが印象的でした。

さらに、従来のM型でお馴染みだった「底板を外してのバッテリー交換」という儀式的な操作が廃止され、新設計により底板を外さずに交換可能になっています。これにより、バッテリー交換がぐっと簡単かつ実用的になりました。

ライカM11 | Leica Camera JP
ライカM11は独自のトリプルレゾリューションテクノロジーを採用した撮像素子、より広いISO感度域、SDカードスロットおよび内蔵メモリーのデュアルメモリー仕様、大容量バッテリー、さらに直感的で使いやすいメニュー構成など、ライカMシステム史上最...

https://leica-camera.com/ja-JP/photography/cameras/m/m11-p-black

ライカM11のもう一つの特筆点はISO感度です。ISO64からISO50000までの広い感度設定が可能で、低照度環境でもノイズを最小限に抑えたクリアな画像が得られます。夜間のスナップや室内撮影といった難しい光条件下でも、高品質な写真を残せるのは大きな進化といえるでしょう。

さらにM11には、新たにマルチフィールド測光やライブビュー機能、Wi-Fiによるリモート操作といった現代的な撮影機能が加わっています。伝統的なレンジファインダーでありながら、最新のデジタルカメラとしての使い勝手も大幅に向上しています。

M11はアルミニウムボディに?

今回、ボディは従来の真鍮製からアルミニウム製に変更されました。

ライカのマニアにとっては、ブラックペイントのボディを使い込むことで塗装が削れ、下地の真鍮が現れる“エイジング”こそが魅力とされてきました。私もそのことを知らずに「下地の真鍮が見えてきたので、タッチペンで黒く直そうと思っている」とライカ専門店で話したところ、マニアではない斬新な発想だと笑われてしまった経験があります。

しかし今回のアルミボディでは、いくら傷がついても下地の色が現れることはありません。つまり“エイジング”の楽しみはなくなった一方で、軽量性と丈夫さを両立する実用的な進化を果たしたとも言えるのです。伝統と最新技術の間でライカが選んだ答えが、このアルミボディ採用なのだと感じました。

※写真は削れて地金が見えてしまった私のライカM Typ240

慣れといってしまえばそれまでですが、旧式の方が安心するという人も多いのではないでしょうか。例えば「レンジファインダーカメラ」と最新の「電子ビューファインダー」の違いは、私にとって車のメーターの違いに近い感覚です。

私は古典的なタイプなので、車のメーターはやはりアナログの針が付いているものが好みです。自ら発光することがないので目に優しく、動きも滑らか。物理的な計器として存在することで、安心感があるのです。

2010年頃の車は、アナログメーターとデジタル表示が融合した中途半端な時期でした。ところが2020年以降になると一気にフル液晶化が進み、今ではほとんどの車が液晶モニター式のメーターになっています。

私はエンジンを切ったあと、メーターの針が「ゼロ」で静止している状態を見ると安心できるのですが、デジタルメーターだと画面そのものが消えてしまうため、ハンドル奥が真っ暗闇になってしまいます。これがどうにも不安で、落ち着かなくなるのです。

つまり電子ビューファインダーのカメラやアルミボディのカメラも同じで、最新化によって性能は上がっているものの、人間の直感的な感覚としては昔のモデルのほうが馴染む、という人が一定数いるということです。

意外にも動画撮影が非搭載

ちょっと驚いたのが、Typ240には搭載されていた動画撮影機能が、M11では廃止され、静止画専用となっている点です。最近のデジタルカメラは動画対応が当たり前になっているので、この仕様は意外な選択だなと感じました。

操作性はキープコンセプト

ライカの操作感そのものはほぼ変わっていません。トッププレートのダイヤル操作が少し変更されましたが、サイズ感やダイヤル・ボタンの位置などは従来モデルに近く、おそらく2〜3日も使えばすぐに慣れてしまうでしょう。

これも好みが分かれる部分ですが、個人的にはシャッター音は昔のモデルのほうが心地よかったと思います。

ベースプレート(底蓋)の廃止

私は10年以上ニコンを使ってきたので、ライカ独特の底蓋交換は本当に面倒だと感じていました。

「ニコンなら片手でバッテリー交換できるのに……」

「メディアも片手で交換できるのに……」

そう思いながら「ライカのベースプレートは重いし削れるしアカン!」とまで思っていたのです。

「ライカのベースプレートは重いし削れるしアカン!」と思っていたのに、実際に底蓋不要になったM11を使った瞬間。

ところが今回、底蓋不要になったM11を触った瞬間——

「ベースプレート、あのままで良かったのに……!」と、まさに手のひら返しをしてしまいました。

確かに交換時は大変なのですが、ベースプレートはデザイン性が美しく、なにより金属のプレートに守られている安心感がありました。今回のワンタッチ交換式になったことで、便利になった反面、一般的なコンパクトカメラのような安っぽさを感じてしまいます。

とはいえ、実際のところ1回の充電で数百枚は余裕で撮影できます。趣味で一日に二、三百枚撮る程度なら、夜に帰宅して充電しつつSDカードをバックアップすれば十分です。頻繁に交換する機会が少ないので、不便さを感じる人は多くないでしょう。

もちろん、一日に何千枚も撮影するプロであれば交換の容易さがありがたいはずですが、一般的なユーザーにとっては「便利になったけど、ちょっと味気ない」という印象になるかもしれません。

レンジファインダーが見やすく!

ファインダーの中がクッキリして歪みが少なくなり、確かに見やすくなりました。

……とはいえ、もともとレンジファインダーカメラを使っている人間というのは、そもそも頭のネジが飛んでいる(褒め言葉)ので、高性能になったところで「へぇ〜」くらいで、そこまで感動はしません。

ライブビューも進化したそうですが、私は一度も使ったことがないので「ふーん」で終了。

ライブビューが好きならソニーとかフジフィルムとか、そっちのカメラを使えばいいんじゃないですか?知らんけど……、というのが正直な感想です。

私は元々ニコン信者で、D2X → D3 → D4 → D4S → ライカM (Typ240) という流れで来ています。他社のことはまったく分かりません。2018年のキヤノン EOS-R発売時にレビューしたことがありますが、あの電子ファインダーは本当に無理でした。ファインダーの中に液晶画面があるというだけで体が拒絶反応を起こします。

そんな経緯もあり、私はずっとニコンの一眼レフ信者だったのですが、最終的にライカMのレンジファインダーを覗いて「コク……(うんうん、こういうのでいいんだよ)」と納得してしまいました。

つまり結論としては——オッサン老害にはライカMが最高、ということです。

多分、夜の撮影には最高

まだデモ機でしか触っていないので本格的に試せてはいませんが、ISO感度の設定範囲は64〜50000、さらに画像記録時の色深度は14bitという仕様。これはもう夜の撮影に相当強いはずです。

参考までに、Typ240のISO感度は100〜6400。数字だけ見れば悪くなさそうですが、実際には一昔前のニコン機と同じ感覚で、常用できるのは100〜400程度。800は緊急用と割り切るレベルでした。Nikon D2Xの常用100〜200、緊急用400よりはマシですが、現代のデジタルカメラ基準で考えるとノイズが多く、画質の劣化も顕著です。

その一方で、iPhone 15 Pro Maxなどは夜の公園で片手で撮っても驚くほどきれいに写る時代。Typ240では、夕焼けを撮ったあとはほぼ眠ったまま、というのが現実でした。

それに対してM11なら、夜間でも十分に使えるはずです。ポートレートから夜景、夜の散歩スナップまで幅広く楽しめる——そんな期待を抱かせてくれるカメラです。

総合的にはどう?

まとまりのない感想になってしまいましたが、結論として言えるのは「オールマイティに一日中撮影したい人にとって、M11は非常に良いボディ」だということです。軽量化され、性能も全体的に底上げされており、安心してメイン機として使える完成度を持っています。

ただ一方で、昔のライカが好きだった人にとっては、受け入れがたい点もあるでしょう。これは仕方のないことで、進化の過程で古い文化や味わいが切り捨てられるのは、カメラに限らずどんな機械でも同じです。

私は車で言えばBMWを何台も乗り継いできましたが、最新のBMWにはどうしても馴染めません。最新技術がふんだんに盛り込まれ、iPadのようなモニターや自動連動するスマホ機能、鮮やかな青色LEDのメーターやライト……確かに便利で先進的なのですが、私が愛した2008年以前のBMWは、標準ナビすらなく、シンプルで剛性が高く、機械として完成されていました。そして車内はアンバー色の穏やかな明かりで統一され、落ち着きと安心感があったのです。

カメラも同じで、古き良きものが好きな人にとっては、最新モデルを選ぶのは時に難しい決断になると思います。だからこそ、たとえ予算が100万円以上あったとしても、いま手元にある機材をすぐ処分してしまうのではなく、一度じっくり最新機種を触ってみるのが良いでしょう。それで「やっぱりこれなら使っていけそうだ」と思えたら、乗り換えを検討するのがベストです。

逆に、これまでライカを触ったことがない人であれば、最初からM11のような最新機種を手にすることで、違和感なくシンプルにライカの世界を楽しめると思います。

いずれにしても、新しいモデルは完成度が非常に高いので、ぜひ一度ショールームや実機を体験して、自分に合うかどうか確かめてみてください。

タイトルとURLをコピーしました