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病院通いの経験から学んだ、病気に上手にかかるためのポイント

人間の慣れというのは本当に怖いなと思います。小さい頃は病院へ行くのが怖かったのですが、自分自身や家族の通院で何百回と病院へ行くうちに、すっかり慣れてしまいました。病気そのものに対して鈍感になったというより、「怖がっていても仕方がないので、必要なことを一つずつやればいい」という感覚に近いです。

もちろん病気になりたいわけではありませんし、できるだけ長く健康に生きたいと思っています。ただ、過去の通院経験を振り返ると、病気になってから慌てるより、普段から少し準備しておいた方が結果的に落ち着いて対応できます。今回は医学的な知識を紹介するというより、患者側から見た「病院との上手な付き合い方」を、これまでの経験をもとにまとめてみます。

知っていると、少し怖くなくなる

私は高卒ですが、大人になってから生理学や細胞生物学を本当にさわり程度だけ勉強したことがあります。人間の体では細胞が絶えず入れ替わり、免疫細胞、神経、ホルモンなどが複雑に連携しながら生命を維持しています。細胞分裂や遺伝情報の複製にはエラーが起こり得ますし、免疫反応が過剰になればアレルギーが起こることもあります。こうした基本的な仕組みをほんの少し知るだけでも、「なぜ薬を飲むのか」「なぜこの検査をするのか」という意味が以前より理解しやすくなりました。

病院や病気に対する怖さも、何も知らない状態だと正体不明のものに感じますが、少し知識があるだけで「これは何を調べているのだろう」「次にどんな可能性を除外するのだろう」と客観的に考えられるようになります。ただし、素人が少し勉強した知識で自己診断するのは別問題です。知識は医師の代わりになるためではなく、診察や検査の意味を理解しやすくするために使うくらいがちょうど良いと思います。

体調が悪い日はカレンダーへ記録する

これはかなりおすすめです。病院へ行けば「いつから症状がありますか?」とほぼ必ず聞かれますが、自分のことなのに意外と思い出せません。「スポーツ中に怪我をした」「刺身を食べた翌日に急に腹痛が出た」など原因と日時が明確なら覚えていますが、徐々に悪化した症状は開始時点が非常に曖昧です。

「なんとなくだるい」「微熱が続く」「関節が少し痛い」「胃が重い」といった状態が続き、我慢できなくなってから病院へ行くと、「1週間前だったか、1か月前だったか……」となります。そこで体調がおかしいと思った日に、スマートフォンのカレンダーへ一言だけでも記録しておきます。「朝から喉が痛い」「夕方37.5度」「右膝が痛む」くらいで十分です。症状によっては体温や痛みの程度、服用した薬、その後どう変化したかまで記録しておくと、診察時にかなり説明しやすくなります。

ただし毎日朝晩の体温を必ず測れば病気が分かる、というものではありません。必要以上に数値を追いかけると逆に不安が強くなることもあるので、症状がある時に経過を残す程度で良いと思います。

入院や手術をした時は、病院名、入退院日、診断名、手術名などを別途残しておくと便利です。民間保険の請求だけでなく、後年ほかの病院を受診した時に過去の医療歴を聞かれることがあります。退院時の書類や診療明細をまとめて保管しておけば、記憶だけに頼らなくて済みます。

金曜の体調不良は少し慎重に

経験上、困るのが金曜の夕方から「何かおかしいな」と感じ始め、土日に急に悪化するパターンです。発熱、強い喉の痛み、腹痛など明らかに普段と違う症状があるなら、診療時間内に受診できないか考えた方が安心です。

もちろん軽い症状なら休養して様子を見ることもありますし、休日夜間の救急医療を軽症で利用すれば良いという意味ではありません。厚生労働省も、休日・夜間の救急医療機関は緊急性の高い患者のためのもので、可能なら通常の診療時間帯に受診するよう案内しています。(厚生労働省) だからこそ、金曜の日中にすでに明確な症状があるなら、「週末まで待つか」ではなく、その時点でかかりつけ医などへ相談する方が合理的です。

年末年始や大型連休も同じです。いざ具合が悪くなってから診療所を探すと、休診ばかりで焦ります。自治体には休日夜間急患診療所や当番医の情報が用意されているので、普段から自分の地域の案内ページを一度見ておくだけでも違います。埼玉県でも休日夜間の医療機関案内や救急電話相談が用意されています。

保険証、マイナンバーカード、お薬手帳、そして少しの現金

「当たり前じゃん!」と思うのですが、急に具合が悪くなると本当に頭が回りません。スマートフォンと財布だけ握って病院へ行き、「お薬手帳忘れた」「現金が足りない」となることがあります。

医療機関によって決済方法は違うため、現金もある程度持っていた方が安心です。マイナ保険証を利用できる医療機関も増えていますが、お薬手帳や薬局アプリなどで自分が現在飲んでいる薬を確認できる状態にしておくことも重要です。過去の薬だけでなく、現在の処方薬、アレルギー歴、持病などを正確に伝えられる方が診察は進めやすくなります。

医師は患者の人生をすべて把握しているわけではありません。その日の診察、検査、患者本人から聞いた情報などをもとに判断します。だからこそ「以前この薬で副作用が出た」「現在この薬を飲んでいる」「○年前にこの手術をした」といった情報は、患者側からきちんと伝える必要があります。

一人暮らしなら、簡単な入院セットを作っておくのも便利です。下着、タオル、歯ブラシ、充電器など最低限のものをまとめておけば、診察へ行ったその日に入院となった場合でも少し楽です。ただし救急時に荷物を準備するため受診を遅らせてはいけないので、あくまで普段から置いておくためのものです。

Google検索は参考資料であって診断書ではない

症状をGoogleで検索すると、かなり怖い病気まで候補に出てきます。そして不安になると「自分は絶対この病気だ」と思い込みたくなります。しかし、検索結果だけで診断することはできません。同じ腹痛でも原因は大量にありますし、症状の組み合わせ、年齢、既往歴、診察所見、検査結果などを合わせて判断するのが医療です。

そのため診察室で「Googleにこう書いてあったので、この病気だと思います」と結論を決めてしまうのはあまり良くありません。一方で、「この症状が心配で受診しました」「家族にこの病気があり、気になっています」と不安の理由を伝えること自体は悪いことではないと思います。

また、最初の診察で原因が分からないことも当然あります。医療ではすべての患者に最初からCTやMRI、内視鏡などを行うわけではなく、症状や診察所見から必要性を判断します。ただ、症状が改善しない、悪化する、新しい症状が出るという場合には、再受診したり、必要に応じて別の医療機関へ相談することも大切です。

患者側にも「どこへ行くか」の知識が少し必要

病院選びも意外に難しいです。「胃腸科」と書いてあれば胃腸のことは何でも専門だろうと思ってしまいますが、現在は標榜される診療科も多く、得意分野は医師や医療機関によって違います。胃痛なら消化器内科、手術が必要な疾患なら消化器外科というように、大まかな役割の違いを知っていると受診先を選びやすくなります。

ただし「胃腸科外科なら薬物療法をしない」「消化器内科なら必ず内視鏡をする」というように単純に分けられるわけではありません。実際の診療内容は各医療機関によって異なるため、ホームページなどで医師の専門分野、可能な検査、紹介先などを確認する方が確実です。

頭痛も同じで、原因によって内科、脳神経内科、脳神経外科、耳鼻咽喉科など受診先が変わることがあります。自分で判断できない時には、かかりつけ医へ相談したり、地域によっては救急相談を利用できます。#7119は、急な病気やけがで「救急車を呼ぶべきか」「今すぐ受診すべきか」と迷った場合に、医師・看護師・救急救命士などから助言を受けられる仕組みです。全国すべての地域で同一条件ではありませんが、実施地域は拡大しています。(防災科学技術研究所)

ただし胸の強い痛み、突然の麻痺、意識障害、呼吸困難、大量出血など明らかに緊急性が高い状態では、#7119で様子を見るのではなく119番が優先です。

民間医療保険は「安心を買うもの」と割り切る

民間の医療保険については、人によって必要性がかなり違います。日本には公的医療保険や高額療養費制度があるため、民間保険へ入らなければ医療を受けられないわけではありません。一方、一人暮らしで貯蓄が少ない、入院すると仕事を休むため収入が減る、個室代などに備えたい、といった事情があれば加入に意味があることもあります。

最近は月額数百円程度から入れるシンプルな保険もありますが、価格だけでなく、入院給付の条件、免責、支払日数、対象外となる疾病などを確認する必要があります。「安いからとりあえず入っておけば安心」とも言い切れませんし、「公的保険があるから民間保険は全部不要」とも言い切れません。自分の貯蓄と収入、家族構成などを考えて決めるものだと思います。

病院にも相性がある

医療機関によって診療方針が違うことはあります。同じ症状でも「まず薬で経過を見ましょう」という医師もいれば、「一度検査して確認しましょう」という医師もいます。これは必ずしもどちらかが間違いというわけではなく、患者の年齢、症状、検査歴、危険因子などから判断が変わることがあります。

ただ、症状が長く続いているのに説明に納得できない、治療しても改善しない、質問しても十分な説明を受けられないという場合には、別の医師へ相談するという選択肢もあります。いわゆるセカンドオピニオンは本来、重大な病気の治療方針について別の専門医の意見を聞く仕組みですが、日常診療でも医療機関を変えて再評価してもらうことは可能です。

ピロリ菌についても、検査や除菌治療が公的医療保険の対象になるかどうかは、胃内視鏡所見など一定の条件によって変わります。そのため「自分から検査を希望すると必ず自費、医師が言えば必ず保険」という単純な仕組みではありません。検査を希望する場合は、その医療機関で自分が保険適用の条件に当てはまるか確認するのが確実です。

上手に病気にかかる、という考え方

人間はかなり複雑な仕組みで動いていて、どれだけ健康に気をつけても絶対に病気にならないという保証はありません。食生活を整え、運動して、睡眠を取っていても病気になる時はあります。

だからこそ「病気にならないことだけ」を目標にすると、何か起きた時に怖くなりすぎます。それよりも、普段から症状を記録する習慣を持つ、飲んでいる薬を把握する、近所の医療機関を知る、休日の相談先を確認する、健康診断や必要な検査を受ける。そうした準備をしておけば、病気になった時にも少し冷静に動けます。

「上手に病気にかかる」というのは、病気を軽く見るという意味ではありません。身体の異変を放置せず、必要以上に怯えず、必要な時にはきちんと医療へつながるという意味です。

人間というのは不思議なバランスで生きています。いつかどこかが調子を崩すことは避けられないかもしれません。それでも、できることを一つずつ準備しておけば、病気は正体不明の恐怖ではなく、「対処すべき出来事」として少し落ち着いて向き合えるようになると思います。

なるべく病気にならず、もしなってしまった時には、できるだけ上手に病気にかかりましょう。