ゴンチャはなぜタピオカブーム後も人気? 生き残り続ける理由と戦略

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皆さんはゴンチャのドリンクを飲んだことがありますでしょうか?

日本で「タピオカブーム」が巻き起こったのは2018年〜2019年頃。
当時は街の至る所にタピオカ店が立ち並び、行列ができる様子がニュースでも取り上げられました。そんな中で日本に本格参入したのが、台湾発祥のティーブランド「ゴンチャ(Gong cha)」です。

当初、多くの人が「タピオカ専門店のひとつに過ぎない」「ブームが終わればすぐ撤退するだろう」と見ていました。事実、ブームとともに急成長したタピオカ店の多くは、数年後に姿を消しています。ところが2025年現在でも、ゴンチャは国内で約200店舗を展開し続け、むしろ駅ナカやショッピングモールで見かける機会は増えています。

なぜゴンチャだけが淘汰を免れ、生き残り続けているのでしょうか。


1. 単なる「タピオカ屋」ではなく「ティーカフェ」への進化

最大の理由は、ゴンチャが「タピオカ店」ではなく「ティーカフェ」として自らを位置づけている点にあります。

ゴンチャは台湾発祥のブランドらしく、烏龍茶・ジャスミン茶・阿里山茶といった本格的な茶葉をベースにしたドリンクを提供しています。タピオカはあくまで“トッピングの一つ”に過ぎず、甘いミルクティーに偏らず、すっきりしたストレートティーやフルーツティーも楽しめる設計です。

出典元:https://www.gongcha.co.jp/menu/category/straighttea/

茶葉ごとに抽出時の湯温や抽出時間を変えてていねいに淹れています。香りや鮮度にこだわり、抽出後4時間以内のものだけをお客様に提供します。

この構造により、

  • 甘党の若者層はタピオカ入りミルクティーを

  • 健康志向の大人層は無糖・微糖のストレートティーを

  • お茶好きは香り豊かな烏龍茶や緑茶ベースを

と、それぞれの嗜好に応じて楽しむことができます。
つまり「ブームが去っても日常的に使えるカフェ」としての顔を持っているのです。


2. カスタマイズ性の高さと「自分だけの一杯」

ゴンチャはカスタマイズの幅が非常に広いのも特徴です。

  • 甘さ(ゼロ・控えめ・普通・多め)

  • 氷の量(なし・少なめ・普通・多め)

  • トッピング(タピオカ・ミルクフォーム・ナタデココなど)

これらを組み合わせることで、自分好みの味を作れるのです。

スターバックスにもカスタマイズ文化はありますが、ゴンチャの方が味覚に直結する調整幅が大きいため、「自分だけの一杯をデザインする楽しみ」が強調されています。この“参加型の楽しみ”はリピーターを増やす重要な要素となっています。

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3. 高品質なお茶のベース

筆者自身も台湾茶や中国茶に強い関心を持つ一人ですが、ゴンチャのベースティーは「本格派」とまではいかなくとも、国内のチェーン店で提供されるお茶としてはかなりレベルが高いと感じます。

もちろん、梨山茶や大禹嶺といった高級茶葉と比べれば雲泥の差があります。しかし、駅ナカや街中で手軽に購入できるドリンクとしては、烏龍茶やジャスミン茶の香りや余韻は十分に楽しめます。お茶マニアが飲んでも「ちゃんとしている」と感じられるレベルなのです。

この「安定した品質」を保ち続けている点は、他のタピオカ店との差別化に大きく寄与しています。


4. 飲んでいて飽きがこない「グラデーションのある体験」

例えば人気の黒糖ミルクティー。カップの底には黒糖シロップとタピオカ、上部にはミルクティーが重なり、時間の経過とともに味が変化していきます。

  • 混ぜずに飲めば、最初は濃厚な黒糖、次第にミルクティーの軽やかさへ

  • しっかり振れば均一な甘さとコクが広がる

つまり一杯の中で「味の移ろい」を楽しむことができるのです。これは、ただ甘い飲料を飲み続けるよりも飽きにくく、Lサイズでも最後まで楽しめる設計になっています。

飲み方次第で体験が変わる──この点がゴンチャの「日常的に通っても飽きない強み」になっていると言えます。


5. 戦略的な立地展開

ゴンチャは出店場所も巧みです。

  • 主要駅ナカ(新宿・渋谷・東京駅など)

  • ショッピングモールや繁華街の一等地

  • 若者や通勤者が立ち寄りやすい立地

これにより「待ち合わせ前に一杯」「通勤帰りに買って帰る」といったシーンで利用しやすくなっています。タピオカ店の多くが路地裏の小規模店舗で展開していたのとは対照的です。


6. 季節限定商品・コラボ戦略

日本限定のフレーバー(抹茶、ほうじ茶ラテ、期間限定フルーツティー)や人気キャラクターとのコラボに加え、芸能人やアイドルを起用したPRでも話題を生み出しています。

https://www.gongcha.co.jp/menu/category/season/

たとえば K-POP グループ Stray Kids の Felix をグローバルアンバサダーに迎え、カップスリーブや店内演出を展開。本田望結さんが発表会でゴンチャ愛を語ったり、アイドルグループ超ときめき♡宣伝部との限定メニューや番組企画も行われました。

こうしたコラボは単なる限定商品に留まらず、ファンの拡散力を活かして常に“次に試したいメニュー”を生み出し、新規顧客の獲得につながっています。


7. スターバックスとの比較

スターバックスと比較すると、両者は似て非なる存在です。

項目

ゴンチャ

スターバックス

ブランド

台湾茶を中心としたティーカフェ。
トッピングやカスタマイズ性で若年層〜30代に支持。

コーヒーを中心に
「サードプレイス(居場所)」を
提供。空間体験とブランド力が主軸。

商品構造

・茶葉ベースのドリンク
(烏龍茶・ジャスミン等)
・タピオカはトッピングの一つ
・季節限定や日本独自商品が豊富
・甘さ・氷・トッピングを細かく調整可能

・コーヒー主体(エスプレッソ系
・フラペチーノ)
・季節限定フレーバーでSNS映え
・カスタマイズ性はあるが茶は少ない

顧客体験

・テイクアウト前提、移動中に楽しめる
・細かいカスタマイズで「自分だけの1杯」
・客単価500〜700円

・店内空間が重要、作業や会話に最適
・ブランド体験込みで客単価600〜800円
・利用動機は休憩・社交・作業

成長戦略

・都市部・駅ナカに集中出店し若者層を吸収
・タピオカ依存から脱却し「お茶ブランド」に拡張
・季節商品・コラボで話題継続

・グローバル規模で展開
・フード・グッズ・アプリで収益多角化
・ブランド=ライフスタイルアイコン

スタバが「居場所と空間体験」を提供するのに対し、ゴンチャは「高品質なお茶を手軽に楽しむ」点に強みがあります。両者は競合というより補完関係にあり、気分やシーンによって使い分けられているのです。


ゴンチャは「お茶のブランド」として定着した

タピオカブームの時代、ゴンチャは「タピオカ専門店」の一つに見えたかもしれません。しかし実際には、

  • 本格的な茶葉を軸に据えたティーカフェ

  • 幅広い層に応じるカスタマイズ性

  • 飽きさせない味わいと商品設計

  • 立地戦略と限定商品の継続投入

これらによって「日常のカフェ需要」に深く入り込みました。

スターバックスが「コーヒーと居場所」で日常を支える存在であるのに対し、ゴンチャは「お茶とテイクアウト」で日常に根付いている。まさに日本におけるティードリンク文化の代表的存在へと進化したのです。

タピオカは単なる入口に過ぎず、その先に広がるお茶の世界観こそが、ゴンチャをブームの後も生き残らせた最大の理由なのです。

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