公式サイトで再検証したところ、前段の比較には重要な修正が必要でした。ルイ・ヴィトンのネヴァーフルMMはフランスで2,100ユーロではなく1,550ユーロ、セリーヌのティーン トリオンフも比較対象によって3,400ユーロ前後です。以下は、2026年7月31日時点で確認できた公式価格を基に、1ユーロ=187円として組み直した記事です。
少し前まで、「ハイブランドの商品は本国で買うとかなり安いから、わざわざヨーロッパまで買いに行く」という話を聞くことがありました。といっても、実際には少し大げさな部分もあります。5年前や10年前であっても、日本からヨーロッパへ旅行すれば、航空券やホテル、現地での移動費を含めて30万円から40万円程度かかることは珍しくありません。バッグを1個か2個買っただけで旅行代金のすべてを回収できるほど安くなるケースは、もともと限られていました。
それでも、旅行のついでに買うのであれば、十分に合理的でした。日本の正規店より数万円、商品によっては10万円以上安くなることがあり、さらに免税手続きを利用すれば価格差が広がったからです。せっかくフランスやイタリアへ行くのであれば、現地でバッグを購入するという方法が人気だったのも不思議ではありません。
しかし、当時と現在では前提条件が大きく変わっています。数年前には1ユーロが120円台から130円台で推移する時期もありましたが、今回は1ユーロ=187円として計算します。さらに、欧州ではインフレ、人件費や原材料費の上昇、ブランド側の継続的な価格改定が重なっています。そのため、「フランスのブランドだからフランスで買えば必ず安い」とは言えなくなりました。
では現在、実際の価格はどうなっているのでしょうか。ルイ・ヴィトン、セリーヌ、サンローランから、それぞれ代表的なバッグを1点ずつ選び、日本とフランスの公式価格を比較してみました。
結論:免税前なら、日本価格とほぼ同じか、日本の方が安い
今回比較した3商品について、フランスの店頭価格を1ユーロ=187円で換算すると、次のようになります。
| ブランド | 商品 | 日本公式価格 | フランス公式価格 | 円換算 | 日本価格との差 |
|---|---|---|---|---|---|
| ルイ・ヴィトン | ネヴァーフル MM | 288,200円 | 1,550ユーロ | 289,850円 | フランスが1,650円高い |
| セリーヌ | ティーン トリオンフ/シャイニーカーフスキン | 594,000円 | 3,400ユーロ | 635,800円 | フランスが41,800円高い |
| サンローラン | サック・ド・ジュール スモール/スムースレザー | 550,000円 | 2,950ユーロ | 551,650円 | フランスが1,650円高い |
免税を考慮しない店頭価格だけを見ると、3商品ともフランスで購入するメリットはほとんどありません。ルイ・ヴィトンとサンローランは驚くほど日本価格に近く、セリーヌは日本の方が4万円以上安い計算です。
これは単純に「日本だけが安い」というより、ブランド側が各地域の為替や購買力、税率、競合状況を見ながら価格を設定しているためです。高級ブランドの価格は、現地通貨をそのまま為替換算して決められているわけではありません。世界各地域の価格差が極端に開かないよう、定期的に調整されています。
1.ルイ・ヴィトン「ネヴァーフル MM」

ルイ・ヴィトンを代表するトートバッグの一つが、ネヴァーフル MMです。定番モデルで販売地域も広く、日本とフランスの価格比較に適しています。
日本公式価格は288,200円、フランス公式価格は1,550ユーロです。1ユーロ=187円で換算すると289,850円となり、免税前ではフランスの方が1,650円高くなります。つまり、通常価格だけを比較すると、日本とフランスでほぼ同額です。(ルイ・ヴィトン)
商品リンク
ルイ・ヴィトン フランス公式サイト:Sac Neverfull MM
かつて1ユーロ=130円であれば、1,550ユーロは201,500円です。現在の日本価格との差は約86,700円となるため、当時であれば「旅行のついでにフランスで買うとかなり安い」という話が成立しました。しかし187円では、為替だけで約8万8,000円も円換算額が増えます。商品の価格差が消えた最大の理由は、この為替変動です。
2.セリーヌ「ティーン トリオンフ」

セリーヌからは、ブランドを象徴するトリオンフの金具を使ったティーン トリオンフを比較します。サイズ、素材、色によって価格が異なるため、ここでは日本とフランスで確認できるシャイニーカーフスキン仕様を基準にしました。
日本公式サイトではブラックのシャイニーカーフスキンが594,000円、フランス公式サイトでは同仕様が3,400ユーロです。円換算すると635,800円となり、免税前ではフランスの方が41,800円高くなります。(セリーヌ)
商品リンク
セリーヌ フランス公式サイト:Sac Triomphe Teen
セリーヌは、今回の3ブランドの中で最も日本価格の優位性が明確です。免税手続きを行わずに購入するのであれば、フランスで買うより日本の正規店で買った方が安く、国内でのアフターサービスや持ち運びのリスクまで考えると、日本で購入する合理性が高いといえます。
3.サンローラン「サック・ド・ジュール スモール」

サンローランからは、ブランドの代表的なトップハンドルバッグであるサック・ド・ジュール スモールを選びました。日本でのスムースレザー仕様は550,000円、フランスでは同じスモールサイズのスムースレザー仕様が2,950ユーロです。円換算すると551,650円となり、免税前ではフランスの方が1,650円高くなります。(ysl.com)
商品リンク
サンローラン フランス公式サイト:Sac de Jour Small
サンローランも、免税前では日本とフランスの価格がほぼ完全に一致しています。ブランド側が為替を考慮して地域価格を調整していることが分かりやすい例です。
VAT還付を受けると、フランスの方が安くなる
ここまでの価格は、フランスの付加価値税、VATを含んだ店頭価格です。日本などEU域外に居住する旅行者は、所定の条件を満たし、出国時に手続きを行うことでVATの還付を受けられます。フランス政府も、EU域外居住者が一定の条件下で免税購入を利用できることを案内しています。(Douane)
ただし、フランスの標準VAT税率が20%だからといって、店頭価格の20%がそのまま返ってくるわけではありません。税込価格に含まれる税額自体は価格の約16.67%であり、そこから免税事業者や決済会社の手数料が差し引かれます。実際の還付率は店舗、還付方法、カードか現金かによって異なりますが、ここでは便宜上、購入価格の13%が戻ると仮定します。
| ブランド・商品 | フランス店頭価格の円換算 | 13%還付後の概算 | 日本公式価格との差 |
|---|---|---|---|
| ルイ・ヴィトン ネヴァーフル MM | 289,850円 | 約252,170円 | フランスが約36,030円安い |
| セリーヌ ティーン トリオンフ | 635,800円 | 約553,150円 | フランスが約40,850円安い |
| サンローラン サック・ド・ジュール スモール | 551,650円 | 約479,940円 | フランスが約70,060円安い |
免税が正常に完了すれば、3商品ともフランスの方が安くなります。ただし、その差は「本国なら数十%安い」というほど大きくありません。今回の試算では約6~13%程度です。
特にルイ・ヴィトンのネヴァーフル MMは、免税後でも差額は約3万6,000円です。数年前のように10万円近い差が生まれる状況とは大きく異なります。セリーヌも約4万円、サンローランは約7万円安くなる計算ですが、バッグを購入するためだけに渡航費を負担して採算が取れる水準ではありません。
日本帰国時の税金を忘れてはいけない
さらに重要なのが、日本へ帰国するときの税関申告です。海外旅行者が持ち込む「その他の品物」の免税範囲は、海外市価の合計20万円までです。ただし、1個で20万円を超える品物は、その商品の全額が課税対象になります。税関も、25万円のバッグを例に、25万円全額について課税されると明記しています。(国税庁)
今回の3商品はいずれも20万円を超えるため、原則として帰国時に申告が必要です。実際に課される税額は、商品の素材、関税分類、課税価格、携帯品としての計算方法などによって異なります。革製バッグは関税の対象になる可能性があり、加えて消費税と地方消費税も考慮する必要があります。
したがって、先ほどの「免税後に3万6,000円から7万円安い」という差額が、そのまま最終的な利益になるわけではありません。日本側の関税・消費税、クレジットカード会社の海外事務手数料、為替の上乗せ、免税還付の手数料を加えると、実質的な価格差はさらに縮小します。
なぜ昔は安く、今は安く感じにくいのか
最大の要因は円安です。たとえばネヴァーフル MMのフランス価格1,550ユーロを比較すると、為替によって円換算額は大きく変わります。
| 為替レート | 1,550ユーロの円換算 |
|---|---|
| 1ユーロ=130円 | 201,500円 |
| 1ユーロ=150円 | 232,500円 |
| 1ユーロ=170円 | 263,500円 |
| 1ユーロ=187円 | 289,850円 |
1ユーロ=130円の時代と187円の現在では、同じ1,550ユーロの商品でも円換算額が88,350円増えます。欧州での商品価格が変わらなくても、日本人にとっては為替だけで大幅な値上がりになります。
実際には、欧州の商品価格自体も上昇しています。高級ブランドは原材料費、人件費、物流費、店舗運営費の上昇に加え、ブランド価値を維持するための戦略的な値上げも行っています。一方で、日本価格も値上げされていますが、各社は世界的な価格差が過度に広がらないよう調整しているため、単純な為替換算より日本価格が低く設定されるケースがあります。
それでも現地購入に意味はあるのか
現地購入に意味がなくなったわけではありません。旅行がすでに決まっており、欲しい商品が現地にあり、免税手続きを確実に行い、日本帰国時の税金まで含めても安いのであれば、現地で購入する価値はあります。また、日本で入手困難な色や限定モデル、現地店舗だけの在庫に出会えることもあります。
しかし、「バッグを安く買うためにフランスへ行く」という考え方は、現在の為替ではほぼ成立しません。仮にバッグが5万円安く買えても、航空券とホテルで30万円以上かかれば、当然ながら経済的には損です。あくまで旅行のついでに購入し、その結果として数万円安くなればよい、という位置づけになります。
まとめ
現在のように1ユーロ=187円まで円安が進むと、フランスのハイブランドであっても、免税前の価格は日本とほぼ同じか、日本の方が安くなります。今回の比較では、ルイ・ヴィトンとサンローランは免税前でほぼ同額、セリーヌは日本の方が約4万円安い結果でした。
免税還付を受ければ、フランスの方が約3万6,000円から7万円安くなる可能性があります。ただし、日本帰国時の関税・消費税、カードの海外利用手数料、還付手数料まで含めると、最終的な差額はさらに小さくなります。
かつて「ヨーロッパでブランドバッグを買うと大幅に安い」と言われた背景には、単なる本国価格の安さだけでなく、円高、比較的低かった欧州価格、免税制度という三つの条件が揃っていました。現在はそのうち最も大きな要素である為替が逆方向に動いています。
今の結論は明確です。旅行のついでに買うなら現地購入を検討する価値はありますが、価格だけを理由にフランスへ買いに行く時代ではありません。商品によっては、日本の銀座や表参道の正規店で購入した方が、価格、手続き、保証、持ち帰りの安全性まで含めて合理的です。
※価格は2026年7月31日時点で各ブランドの日本・フランス公式サイトに表示された価格を基にしています。為替は比較のため1ユーロ=187円で固定しています。商品価格、在庫、為替、免税還付率、税関での課税額は変動するため、購入時には必ず最新情報をご確認ください。