日本人では、先天赤緑色覚異常のある人は男性の約5%、女性の約0.2%とされています。男性なら20人に1人、女性なら500人に1人ですから、決して珍しい話ではありません。クラスや職場に何人か男性がいれば、その中に色の見分け方が少し違う人がいてもまったく不思議ではないわけです。
一般に「色盲」と呼ばれてきたものは、すべての色が白黒に見えるという意味ではありません。多くの場合は、特定の色の組み合わせを見分けにくかったり、明るさや周囲の色によって判断が変わったりします。先天性のものは生まれつきの色覚特性であり、本人にとってはそれが普段の見え方です。一方で、目の病気などによって後から色の見え方が変わる場合もあるので、全部を単純に「個性だから気にしなくてよい」とまとめることもできません。このあたりが少しややこしいところです。
では、人はそもそもどのように色を見ているのでしょうか。仕組みを調べてみると、意外とテレビやデジタルカメラに似た部分があります。そして、この仕組みを利用して、見分けにくい色を少しでも確認しやすくできないか。そう考えて作ったのが、Web・iPhoneサービスの「色盲補正カメラ」です。
https://apps.apple.com/jp/app/id6808549841
色が見える仕組みは、テレビやカメラに少し似ている
目の奥にある網膜には、光を受け取る視細胞として杆体細胞と錐体細胞があります。杆体細胞は暗い場所で働きやすく、光の明るさを捉えるのが得意です。もう一方の錐体細胞は明るい場所で働き、色や細かな形を見分ける役割を持っています。かなり大ざっぱに言えば、杆体は明暗を見るセンサー、錐体は色を見るセンサーという感じです。
錐体にはL錐体、M錐体、S錐体という3種類があり、それぞれ長い波長、中間の波長、短い波長の光に反応しやすくなっています。よく赤・緑・青に対応すると説明されますが、一つの錐体が一つの色だけを見るスイッチではありません。3種類の反応が重なり、それを脳が比較して、私たちはさまざまな色として感じています。どれかの錐体の働き方が一般的なものと異なると、特定の色の差を拾いにくくなるわけです。
ここで思い出すのが、昔のブラウン管テレビです。画面を近くで見ると、赤・緑・青の小さな光が並び、その光らせ方を変えることでフルカラーを作っていました。現在の液晶なども表示原理は違いますが、画素を赤・緑・青の成分に分けて色を作る考え方は似ています。デジタルカメラでも、一般的な単板式センサーでは赤・緑・青のカラーフィルターを並べたベイヤー配列などを使い、それぞれの画素で得た信号を計算してカラー画像にしています。
もちろん、人間の目とカメラがまったく同じ仕組みというわけではありません。ただ、複数の光の信号を組み合わせて色を作るという点では、かなり面白い共通点があります。逆に考えると、カメラ側で色の差や明るさ、輪郭を少し調整すれば、本人が拾いにくい情報を別の形で渡せる可能性があるわけです。
見分けにくい色を、自分で確かめられるようにする
赤と茶、紫と紺、薄いピンクとグレーなど、色の名前を聞けば違いは分かっても、実際の生活では迷いやすい組み合わせがあります。洋服を選ぶとき、地図やグラフを見るとき、写真を確認するとき。色だけを手掛かりにすると、「たぶんこちらだと思うけれど、はっきりとは分からない」という場面が出てきます。
そこで公式Webサイトには、登録なしで試せる5問チェックを用意しました。円の中に見える数字や形を選んだり、色を見比べたりする簡単な内容です。これだけで色覚型や程度が分かるわけではありませんが、「これはすぐ分かるのに、こちらは急に分からない」という自分の傾向を見る入口にはなると思います。Web版の回答は保存せず、サーバーにも送信しません。
開発中に何度も試してみると、色のパネル同士を見比べて「どれが一番近いですか」と聞く問題は、意外と負担が大きいことが分かりました。見分けにくいから試しているのに、その見分けにくい色の中から一つを選んでくださいと言われるわけです。これ、冷静に考えるとなかなか難しい話です。一方、つぶつぶの円を見て「5が見える」「3が見える」「何も分からない」と答える形式は、見えたものをそのまま押せるので比較的答えやすくなります。そのため、問題は一度作って終わりではなく、回答ログや操作時の負担を見ながら何度も作り直しています。
30問の回答から、迷いやすい組み合わせを見る
iPhone版には、もう少し詳しく試すための30問チェックがあります。開発途中では、2つの色が同じに見えるところまで、色相、彩度、明るさの3本のスライダーを動かす方式も試しました。しかし、これはあまりに難しく、精密そうに見えても回答の揺れを増やしてしまいます。カラーコーディネーターでもない人に3要素を同時に調整してもらうのは、さすがに無理があるという感じです。

現在は、円の中に見えた数字を選び、はっきり見えなければ「わからない」を押せる形式を中心にしています。「わからない」は不正解というより、その配色では数字を拾いにくかったという記録です。同じ系統の問題を少しずつ条件を変えて提示し、回答がある程度重なるかを見ることで、一度だけの偶然に引っ張られにくくしています。
ここで表示するのは医療的な診断結果でも、色覚型や程度を断定する数値でもありません。あくまで、このiPhoneと今回の表示条件では、どの色の組み合わせに迷いが見られたかという傾向です。回答と作成したプロフィールは端末内で扱い、利用開始に会員登録は必要ありません。色の見え方はかなり個人的な情報ですから、最初からなるべく端末の外へ出さない設計にした方が自然だと考えました。
色を派手にするのではなく、別の手掛かりを加える
チェックが終わると、カメラ映像や保存した写真で複数の表示方法を試せます。自然な印象をなるべく残しながら色の差を広げる表示、違いを強く見せる表示、色の境界に輪郭を加える表示などを切り替えられます。画面中央付近の色名を表示する機能もありますが、これは「この色は絶対に赤です」と断定するものではなく、自分で確認するときの補助情報です。
最初は、見えにくい色を単純に濃くすればよいのではないかとも考えました。しかし、全部を鮮やかにすると別の色まで派手になり、かえって差が分かりにくくなることがあります。逆に全体の彩度を少し抑え、明るさや輪郭で違いを見る方が分かりやすい場面もあります。要するに一つの万能な補正を作るというより、何種類かの見方を用意し、その場で確認しやすいものを選べる方が現実的なのだと思います。
名前は「色盲補正カメラ」ですが、このアプリを通せば一般色覚者とまったく同じ色が見える、というものではありません。色覚特性を治療するアプリでもなく、現時点では科学的な検証を積み重ねている途中です。また、薬や食品、電気配線、道路上の信号など、安全に関わる判断をこのアプリだけに任せることはできません。急に色が分かりにくくなった場合や、左右の目で見え方が大きく違う場合、視力や視野にも変化がある場合は、アプリで試すより先に眼科へ相談してください。
作れば作るほど、色の見え方を一つの数値へまとめる難しさが分かってきます。それでも、見分けにくい色を名前や輪郭といった別の情報へ置き換えるだけで、確認しやすくなる場面はあります。今の段階では「正しい色を見せる魔法のカメラ」ではなく、自分が使いやすい表示を探すための道具です。現在はApp Storeで無料公開しており、すべての機能を無料で試せます。
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