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ライカM Typ240で巡る、ヘリテージ・オークションズのスター・ウォーズ展

表参道から歩いてすぐ、神宮前のエバーグリーンインシティで開催されている「Heritage Auctions Japan ポップカルチャー・オークション展」を見てきました。あいにくの雨でしたが、会場の中にはそれを忘れてしまうほど素晴らしい品々が並んでいます。特に『スター・ウォーズ』は旧三部作をはじめ、プリクエル三部作や近年の作品まで幅広く、しかも普通のグッズではなく、映画やドラマの撮影で実際に使われたプロップが中心です。スター・ウォーズが好きでも、こうした撮影小道具をまとめて間近で見る機会はそう多くありません。

一般的な展覧会のように設定画や映像を中心に見せるのではなく、ここに置かれているのは撮影現場に実際に存在していた「物」です。ライトセーバー、ヘルメット、ドロイド、衣装など、スクリーンの中ではほとんど気づかないような細かな傷や塗装まで見ることができます。スマートフォンで明るく鮮明に撮影した会場写真ならInstagramなどにもたくさん出てくると思うので、今回は少し趣向を変えて、十年以上前のデジタルレンジファインダー、Leica M Typ240を持って会場を巡ってみました。

ヨーダとR2-S8、映画の中にあった「物」を見る

会場に入ってまず目に入ったのがヨーダとR2-S8でした。ヨーダは映画やドラマを通してあまりにも見慣れた存在ですが、こうして立体物を目の前にすると、映像の中で見る印象とは少し違います。CGや映像処理によって完成するスター・ウォーズの世界も、その手前には造形、塗装、衣装、機械仕掛けといった人間の手仕事があり、その積み重ねによって架空の世界が作られていることがよく分かります。

R2-S8も面白い展示でした。『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』に登場した遠隔操作式のアストロメク・ドロイドで、表面をよく見ると新品の玩具のような均一さはありません。白い外装には汚れや擦れがあり、パネルの合わせ目も含めて、映画の中で必要とされた「使い込まれた機械」の質感がそのまま残っています。普通のコレクター品なら傷や汚れは価値を下げる要素になりそうですが、撮影用プロップでは、それすらも撮影現場を通ってきた来歴の一部です。

会場には『マンダロリアン』関連のヘルメットなど、比較的新しい作品のアイテムもあり、1970年代から現在まで続いてきたスター・ウォーズの造形を一度に見比べることができます。デザインは時代によって少しずつ変化しているのに、どれもひと目でスター・ウォーズだと分かる。このシリーズが半世紀近く続いている理由の一つは、物語だけでなく、こうした独自の造形が膨大に蓄積されてきたことにもあるのだと思います。

ダース・ベイダーと、妙にまぶしいストームトルーパー

さらに奥へ進むと、ダース・ベイダーと銀色に輝くストームトルーパーが立っています。写真では少し分かりにくいのですが、等身大のベイダーはかなり大きく、暗い会場で正面から見るとなかなかの威圧感があります。映画では照明や構図、音楽まで含めてダース・ベイダーという存在が完成していますが、黒いヘルメットと肩から落ちるケープだけでも、シルエットは驚くほど完成されています。

隣に立つクローム仕上げのストームトルーパーは、さらに不思議です。一瞬、スター・ウォーズというより現代美術か、高級店のショーウインドウに置かれたオブジェのようにも見えます。黒い背景と展示照明をすべて反射しているため、M Typ240で撮ると形そのものより光が先に写り込みます。ピカピカすぎて何を撮っているのか分からなくなる瞬間もありますが、それも実物を見たときの印象には近い気がしました。

スター・ウォーズの展示というと、キャラクターの等身大模型を並べたイベントを想像しがちですが、今回の展示は少し方向が違います。ヘリテージ・オークションズは、これらを博物館の収蔵品として集めているのではなく、売買されるコレクターズアイテムとして扱うオークションハウスです。そのため会場には、美術館とは少し違う独特の緊張感があります。目の前にある物は、何十年も同じ場所に収蔵され続ける展示品ではなく、いずれ誰かの所有物になる可能性があるのです。

ライトセーバーは近くで見るほど「撮影道具」だった

個人的に最も面白かったのはライトセーバーでした。今回の展示では『帝国の逆襲』『ジェダイの帰還』のダース・ベイダー用ライトセーバーをはじめ、アナキン、オビ=ワン、ドゥークー伯爵、メイス・ウィンドゥ、ダース・モール、クワイ=ガン・ジン、レイ、カイロ・レンなど、各作品に関連する撮影用ライトセーバーが多数展示されています。主催者によれば、一般公開としては史上最大規模のスター・ウォーズのライトセーバー・コレクションとのことです。

映画の中ではライトセーバーは極めて完成された未来の武器に見えます。しかしケース越しに実物へ近づくと、急に「撮影のために作られた道具」であることが見えてきます。金属の筒にスイッチのような部品が付き、グリップには細かな加工が施され、用途によっては撮影用のブレードを取り付ける構造になっています。遠くから見ると完璧なSFの武器なのに、近づくほど工作物らしくなっていく。その距離による印象の変化が非常に面白いところでした。

写真の一本は、展示札によればDisney+『オビ=ワン・ケノービ』でユアン・マクレガー演じるオビ=ワンが使用したヒーロー・ライトセーバーです。映画やドラマを見ていると、私たちは当然ライトセーバーの「光」を見ています。しかし撮影後に現物として残るのは光ではなく、この金属の柄です。そう考えると、この小さな物体が撮影され、VFXが加わり、音が乗り、最終的に世界中の人が知る架空の武器へ変わっていくという、映画制作の工程そのものが少し見えてくる気がします。

Leica M Typ240で撮るには、むしろちょうどいい

今回持っていったLeica M Typ240は2013年発売のカメラで、現在のミラーレス機と比べれば高感度性能もオートフォーカスもありません。そもそもM型ライカにはオートフォーカス自体がないので、暗い展示室でガラスケース越しの小物を撮るには、決して便利なカメラではありません。ショーケースには照明が写り込み、人が動けば一度ピントを外しただけで撮影のタイミングを逃します。

ただ、この展示にはむしろM Typ240くらいが合っていたようにも思います。明るさを無理に持ち上げず、黒いものは黒いまま、照明が当たった金属だけが浮かび上がる。最新のカメラなら暗部までかなり綺麗に起こせますが、会場で実際に見た印象はもう少し暗く、ケースの奥から物が現れるような感じでした。ダース・ベイダーなどは特に、黒い部分をすべて見せてしまうより、輪郭だけが光の中に残っているくらいの方が似合います。

そしてM型ライカの場合、撮影している時間そのものも少し違います。ピントを合わせ、露出を決め、ガラスへの反射を避けられる位置を探してから一枚撮る。展示品を次々と記録するというより、一つの物の前で少し立ち止まることになります。今回はスター・ウォーズを見に行ったというより、スター・ウォーズの世界を作った「物」を眺めながら、それを一つずつ撮って歩いたという感覚に近い展示でした。

総額1,500万ドルを超える、少し変わった無料展示

「Heritage Auctions Japan ポップカルチャー・オークション展」にはスター・ウォーズだけでなく、『ウォーキング・デッド』の衣装、ポケモンカード、『マジック:ザ・ギャザリング』、クラシックゲーム、スポーツ関連品など、500点を超えるコレクターズアイテムが展示されています。主催者発表では総額1,500万ドル、約24億円を超える規模とのことで、これだけの物を神宮前の建物に集めながら入場無料というのは、なかなか大胆な展示です。

スター・ウォーズだけを目的に訪れても十分に楽しめますし、映画の撮影小道具やアンティーク、オークションの世界が好きな人なら、細部を見始めるとかなり時間がかかると思います。完成した映画だけを見ていると忘れてしまいますが、スクリーンの向こうには膨大な数の衣装、小道具、模型、機械、そしてそれを作った人たちが存在しています。そうした「映画になる前のスター・ウォーズ」を、ガラス一枚を隔てた距離で見ることができる素晴らしい展示会でした。

開催は2026年10月27日まで。入場無料ですので、スター・ウォーズが好きな方はもちろん、映画のプロップそのものをじっくり見たことがない方にも面白いと思います。会場は巨大な美術館ではありませんが、その分一つ一つの品との距離が近く、世界のオークション市場で高額取引されるようなコレクターズアイテムが突然目の前に置かれているという、少し現実感のない体験ができます。

イベント情報

Heritage Auctions Japan ポップカルチャー・オークション展

会期:2026年9月18日(金)〜10月27日(火)
開館時間:11:00〜18:30
休館日:月曜日および祝日
※9月21日(月)〜23日(水)、10月12日(月)は休館
会場:東京都渋谷区神宮前6-13-3 エバーグリーンインシティ
入場料:無料
※展示内容は変更となる場合があります。会場ではヘリテージ・オークションズへの委託出品や入札に関する相談も行われています。

参考資料・関連情報

Heritage Auctions Japan「ポップカルチャー・オークション展」プレスリリース(PR TIMES)

Heritage Auctions 東京オフィス

PHILE WEB「スター・ウォーズ」撮影用プロップ等を紹介する現地レポート

スター・ウォーズ ウェブログ「Heritage Auctions Japan ポップカルチャー・オークション展」イベントレポート