FELT(フェルト)という名前を、今の東方Projectファンはどの程度知っているのでしょうか。
2010年に活動を始め、2021年末までの約11年間。NAGI☆を中心に、Maurits“禅”Cornelis、舞花、Vivienne、美歌らが参加し、FELT-001『Milky Wink』からFELT-032『START』まで、ベストアルバムを含めて32タイトルを残した東方アレンジサークルです。
2010年代の東方アレンジを振り返ると、コミックマーケットや博麗神社例大祭では膨大な数のCDが頒布され、ニコニコ動画やYouTubeにも毎日のように新しいアレンジが投稿されていました。その中でFELTは、頻繁にライブを行うバンドでも、動画投稿を活動の中心にするサークルでもありませんでした。活動の中心にあったのは、あくまで「アルバムを作ること」です。例大祭、夏コミ、冬コミという同人音楽の周期に合わせるように新作を重ね、ときには過去の楽曲を再編集し、リミックスを加え、同じ原曲からまったく違う景色を描きながら、FELTという作品群を少しずつ積み上げていきました。
一方で、『Runway Drive』をはじめとする楽曲はSOUND VOLTEXなどの音楽ゲームにも収録され、2015年には新宿MARZでワンマンライブも開催されています。活動中から一部の旧譜は中古市場で定価を上回る価格がつき、再販も行われました。そして2021年、いつの間にか姿を消すのではなく、最後の作品を「最後の作品」として完成させたうえで活動を終えています。FELTとは、いったいどのようなサークルだったのか。その始まりから順を追って見ていきます。(※1万文字超えの長文となっています。)
発熱巫女~ずからFELTへ
FELTは、2010年9月の『Milky Wink』から始まったように思われがちですが、厳密にはその前に、東方アレンジサークル「発熱巫女~ず」での共同制作があります。2010年3月、第7回博麗神社例大祭で頒布された発熱巫女~ず『A Story』収録の「I Wish」を見ると、アレンジはNAGI☆+Tim Vegas、ヴォーカルは舞花、ギターはNAGI☆、ベースはMaurits“禅”Cornelisとなっています。つまり、のちにFELTを形作る重要な人物たちは、FELTという名前が生まれる以前から、一つの楽曲を一緒に作っていたのです。
同年8月の発熱巫女~ず『The Lotus』でもNAGI☆、舞花、MZCによる共同制作は続き、その後NAGI☆は自らのサークルとしてFELTを立ち上げます。後年の回想によれば、最初から独立した大規模な体制が整っていたわけではなく、発熱巫女~ずのスペースを借りるなど、Tim Vegasや周囲の助力を受けながら最初の作品を頒布していました。FELTを「発熱巫女~ずから分裂して生まれたサークル」と捉えるよりも、発熱巫女~ずを通じて築かれた制作人脈の中から、NAGI☆がもう一つの作品世界を立ち上げたと考える方が実態に近いはずです。FELT結成後も両者の関係は続き、イベントでは隣接スペースを取ったり、合同会計で頒布したりすることもありました。
32作品と11年間、FELTの歴史を時系列で見る
FELTの作品を時系列に並べてみると、その制作ペースには驚かされます。特に2012年から2019年までは、ほぼ毎年「例大祭・夏コミ・冬コミ」の3回に合わせて新しいタイトルを発表していました。以下ではアルバムだけでなく、ライブ、音楽ゲーム、旧譜の再販、YouTubeでのアーカイブ公開、活動終了までを同じ時間軸にまとめています。アルバム名をクリックすると、現在FELT公式YouTubeチャンネルの「ポッドキャスト」に整理されているので、公式プレイリストから無料で聞くことができます。
| 年月 | No./出来事 | 作品・楽曲 | イベント・主な出来事 |
|---|---|---|---|
| 2010/3/14 | FELT前史 | 発熱巫女~ず『A Story』「I Wish」 | 第7回博麗神社例大祭。NAGI☆、舞花、MZCらが共同制作 |
| 2010/9/19 | FELT-001 | Milky Wink | 博麗神社例大祭SP。FELT始動 |
| 2010/12/30 | FELT-002 | Fairy Queen | C79 |
| 2011/5/8 | FELT-003 | Flower Flag | 第8回博麗神社例大祭。震災により当初予定から延期 |
| 2011/8/13 | FELT-004 | Blue Drop | C80 |
| 2011/9/11 | FELT-005 | Rebirth Story | 例大祭SP2。最初のベストアルバム |
| 2011/12/30 | FELT-006 | Silver Drive | C81。Runway Drive収録 |
| 2012/5/27 | FELT-007 | Stand Up | 第9回博麗神社例大祭 |
| 2012/6/23 | LIVE | ― | 「秋葉文化祭 第二章」赤坂BLITZに出演 |
| 2012/8/11 | FELT-008 | Little Planet | C82 |
| 2012年 | 音楽ゲーム | Runway Drive | SOUND VOLTEX BOOTHへ収録 |
| 2012/12/30 | FELT-009 | Ground Snow | C83。Liminality収録 |
| 2013/5/26 | FELT-010 | Icicle fall | 第10回博麗神社例大祭 |
| 2013/8/12 | FELT-011 | Abyss nova | C84 |
| 2013/12/30 | FELT-012 | Grow Color | C85 |
| 2014/5/11 | FELT-013 | Rebirth StoryⅡ | 第11回博麗神社例大祭。2枚組 |
| 2014/8/16 | FELT-014 | Fortunes Gate | C86 |
| 2014~2016 | 音楽ゲーム | Liminality、Hail Storm、Innocent Eyesなど | SOUND VOLTEXへの収録が拡大 |
| 2014/12/29 | FELT-015 | Cold Snap | C87 |
| 2015/5/10 | FELT-016 | Sevens Head | 第12回博麗神社例大祭 |
| 2015/8/14 | FELT-017 | World Trick | C88 |
| 2015/10/24 | LIVE | FELT LIVE 2015 | 新宿MARZ。初のワンマンライブ |
| 2015/12/30 | FELT-018 | Spatial Moving | C89 |
| 2016/5/8 | FELT-019 | Rebirth Story III | 第13回博麗神社例大祭。2枚組 |
| 2016年 | 再販 | 初期旧譜の一部を再販 | イベント・委託で再供給 |
| 2016年 | 音楽ゲーム | crescent moon、Never Let It End | SOUND VOLTEXなどへ収録 |
| 2016/8/13 | FELT-020 | Parallel Cross | C90 |
| 2016/12/29 | FELT-021 | Fluster Escape | C91 |
| 2017/5/7 | FELT-022 | Increase Beat | 第14回博麗神社例大祭 |
| 2017/8/11 | FELT-023 | Rising Nebula | C92 |
| 2017/12/29 | FELT-024 | Flying Fantastica | C93 |
| 2018/5/6 | FELT-025 | Rebirth Story4 | 第15回博麗神社例大祭 |
| 2018/8/10 | FELT-026 | Darkness Brightness | C94 |
| 2018/12/30 | FELT-027 | Pure Heart | C95 |
| 2019/5/5 | FELT-028 | Illstarred Dive | 第16回博麗神社例大祭 |
| 2019/6 | 再販 | 初期作品をまとまって再販 | 委託店で再び新品流通 |
| 2019/8/12 | FELT-029 | Star Piece | C96 |
| 2019/12/31 | FELT-030 | Last Wink | C97。通常シリーズの一区切り |
| 2020/8 | 活動終了を予告 | ― | 次のアルバムを最後にすると発表 |
| 2020~2021 | Audio Archives | 過去作品を公式YouTubeで順次公開 | 現在の公式アーカイブの基礎になる |
| 2021/12/31 | FELT-031 | Rebirth Story5 | C99。最後のベストアルバム |
| 2021/12/31 | FELT-032 | START | C99。FELT最後のアルバム |
| 2021/12/31 | 総括 | FELT Liner notes | 全32作品をメンバー自身が振り返る冊子を制作 |
| 2026/1/8 | 活動終了後 | New World | CHUNITHMへ新規追加 |
こうして並べてみると、2012年から2019年までの規則正しさが目を引きます。ベスト盤を挟みながらも、毎年ほぼ3回のペースでタイトルを作り続けていました。また、2012年にはすでに『Runway Drive』がSOUND VOLTEXへ収録され、その後『Hail Storm』『Liminality』『Innocent Eyes』『crescent moon』『Never Let It End』も加わっています。現在のjubeatにも『Runway Drive』は収録されており、2026年には活動終了から4年以上を経たFELTの『New World』がCHUNITHMへ追加されました。CDを頒布していた時代が終わった後も、楽曲そのものは別の経路を通じて、新しい聴き手へ届き続けているのが驚きです。
FELTはいつ頃から人気だったのか
同人サークルである以上、商業レーベルのような売上ランキングをもとに「ここでブレイクした」と断定することはできません。ただ、2012年に『Runway Drive』がSOUND VOLTEXへ収録され、その後も複数の楽曲が音楽ゲームへ採用されたこと、2015年にはワンマンライブが実現したこと、さらに活動中から一部の旧譜が品薄になっていたことを考えると、2010年代前半から徐々に存在感を強め、2010年代半ばにはすでに一定のファン層を築いていたと見るのが自然です。
当時の中古市場にも、その様子は少し表れています。2015~2016年には『Fortunes Gate』『Grow Color』が500円前後、『World Trick』も数百円から1,000円程度で落札されている一方、『Rebirth Story』は4,000円前後、『Silver Drive』には4,500円、『Fairy Queen』の未開封品には6,250円という落札例がありました。つまり、FELTのCD全体が高値だったわけではなく、初期盤や一部の人気作品から先にプレミア化が始まっていたということです。その後、旧譜の再販も行われましたが、活動終了後には再び価格が上昇しています。現在見られる中古価格の高騰は、活動終了後に突然始まった現象ではありません。その前段階は、FELTがまだ現役だった2010年代半ばにはすでに見え始めていました。
一枚の作品としてまとめる
一枚のアルバムには、異なるヴォーカリストの楽曲が一緒に収められ、NAGI☆とMZCによる性格の違うアレンジが並びます。
その間にはギターやシンセサイザーを中心としたインストゥルメンタル、IntroductionやInterlude、さらには過去曲を別のアレンジャーが作り直したRemixまで入る。それらすべてを含めて、一枚のFELTでした。
例えば『Silver Drive』を見ると、Runway DriveはNAGI☆のアレンジ、美歌の作詞、舞花のヴォーカルです。その次の「Light My Life」と「In The End」では、MZCのアレンジ、Renkoの英語詞、Vivienneのヴォーカルへと切り替わります。さらに「Galaxy」「Revelations」「SINK」のようなインストゥルメンタルが入り、美歌自身が歌う「After rain」「Under cloud」もあり、最後は「A Silent Voyager」のMZCによるリミックスで終わります。ジャンルも歌い手も、それぞれの役割も違う曲が並んでいるのに、アルバムを通して聴くと、不思議なほど一つの作品としてまとまっています。
後期の『Spatial Moving』も同様です。NAGI☆によるインスト「Appearance Fall」から始まり、舞花の「OUR SHIP」、Vivienneの「MAGIC!」、MZCのインスト「Doloza」、再び舞花の「Song for」、Erisによるインストとリミックス、MZCやNAGI☆のインストを経て、最後は美歌のLost Daysで閉じます。FELTのアルバムは、特定の歌手の楽曲を集めたものではありません。複数の作家と歌い手がそれぞれ異なる役割を担いながら、一枚を通して一つの流れを作る、総合的な作品だったと言えます。
舞花、FELTの日本語ヴォーカルを象徴する声
舞花はFELT結成以前からNAGI☆との共同制作歴があり、第1作『Milky Wink』の「Sky Gate」からFELTの中心的なヴォーカルを担っています。広い音域を見せつけるというよりも、まっすぐな声の輪郭と、静かな部分からサビへ向かって徐々に感情を高めていく歌い方が印象的です。NAGI☆によるポップ/ロック寄りのアレンジとの組み合わせも多く、FELTの日本語ヴォーカルから入るなら、まずこの組み合わせを聴いてみると、その輪郭をつかみやすいです。
初期の代表例としては、第1作のSky Gate、春を題材にしたFlower Flag、そしてFELTの代表曲の一つとなったRunway Driveがあります。さらにLittle Novaや「Hail Storm」「OUR SHIP」など、時期とともにサウンドが変化しても、舞花の声はFELTの日本語曲をつなぐ大きな軸であり続けました。
Vivienne、英語詞とMZCの音響が作った、もう一つのFELT
Vivienneの楽曲へ移ると、同じアルバムの中でも空気が大きく変わります。英語詞を中心に、MZCによるハウス、エレクトロニック、プログレッシブな要素を持つアレンジと組み合わされることが多く、舞花の楽曲とはまた違う方向からFELTの世界を広げていました。歌声そのものが前面へ飛び出すというよりも、ヴォーカルがシンセサイザーやリズム、空間系の音処理と溶け合っていくような楽曲も少なくありません。
代表的な曲としては、『Silver Drive』のLight My LifeとIn The End、そして『Rebirth Story III』のcrescent moonなどがあります。「Liminality」「Lost in the Abyss」「Puppet in the Dark」も、FELTの中に電子音楽的、あるいはプログレッシブな側面が強く存在していたことをよく表している楽曲です。
美歌、歌い手であり、独創的な歌詞を書いた
美歌は、少し特殊な立ち位置にいた人物です。ヴォーカリストとして多くの曲を歌う一方で、作詞家としてもFELTを支えました。舞花が歌う『Runway Drive』の歌詞も美歌によるもので、自分が歌わない楽曲にも言葉を与えています。FELTの日本語曲にたびたび現れる、喪失、祈り、時間、記憶、痛み、そしてそれでも前へ進もうとする感覚を考えるとき、美歌を単に「三人目のヴォーカル」として捉えるだけでは不十分でしょう。
自身が歌う曲では、『Flower Flag』のMoonlight shines、『Fortunes Gate』のWhile Hiding A Crime、『Spatial Moving』のLost Daysなどがあります。舞花の声へ提供した歌詞とはまた違い、自身の声で歌う曲では、内側へ向かって沈んでいくような静けさや陰影が強く現れることもあり、FELTのアルバムの中で独特の位置を占めています。
三人はそれぞれまったく違う声を持っていますが、アルバムごとに誰か一人をフィーチャーするのではなく、同じ一枚の中で入れ替わりながら登場します。その間にインストやリミックスが入り、曲によってNAGI☆、MZC、BOYZ PARTY、Eris、KURUMIらの役割も変わっていきます。この構成こそ、FELTを単なる「東方ヴォーカルサークル」と言い切れない理由の一つでもあります。
NAGI☆とMZC、違う音楽性を一枚に収める
FELTの制作の中心にいたのが、NAGI☆とMaurits“禅”Cornelisです。NAGI☆は代表=社長として作品全体をプロデュースしながら、自ら編曲、ギターなどの演奏、プログラミングを担当しました。一方のMZCは、編曲、リミックス、ベース、シンセサイザーなどを担い、ハウスやエレクトロニック、プログレッシブといった方向からFELTの音楽を広げていきました。
二人を単純に「NAGI☆はロック、MZCは電子音楽」と二分できるものではないです。第1作『Milky Wink』の「Sky Gate」「All This Time」では、NAGI☆のアレンジにMZCがベースで参加しています。NAGI☆自身も後年、「Runway Drive」を制作していた頃、MZCのシンセサイザーの使い方から刺激を受けていたことを振り返っています。二人がそれぞれ別々の曲を作っていただけではなく、お互いの音を聴き、その影響が別の楽曲へと入り込んでいたのです。
さらにBOYZ PARTY、Eris、KURUMIなどが、時期によって編曲、リミックス、演奏に加わります。FELTの統一感は、全員が同じ音楽を作ることで生まれたものではありません。むしろ、それぞれ異なる音楽性を持つ人たちが自由に曲を作り、それをNAGI☆が一枚の作品として組み立て続けたところに、FELTならではの特徴があります。
AOのジャケットと「アルバム」という作品
FELTでは、音楽と同じくらいジャケットの存在も重要でした。2作目『Fairy Queen』以降、多くの作品でAOがイラストを担当し、後期にはグラフィックデザインまで含めて、FELTの視覚的な世界を形作っています。AOは後年の回想で、当初は東方Projectそのものをほとんど知らず、いわゆるキャラクター商品らしさへ寄せすぎるのではなく、東方を知らない人でも手に取りやすいジャケットを意識していたことを語っています。
この考え方は、FELTの音楽にもよく似ています。東方Projectの原曲を知っていれば、旋律がどこに残され、そこからどのように再構成されたのかを追う楽しみがあります。しかし原曲を知らなくても、ポップス、ロック、ハウス、エレクトロニカとして、一曲の音楽がきちんと成立している。ジャケットも同じように、キャラクターについての知識がなければ理解できないものではなく、一枚の音楽作品へ入っていくための入口として成立していました。
またFELTには、一曲ずつ切り離して聴くのと、アルバムの曲順に沿って聴くのとでは、印象が大きく変わる作品が数多くあります。Introductionから始まり、異なるヴォーカル曲やインストゥルメンタルを行き来し、Interludeを挟み、過去曲のRemixを経てOutroductionへ着地する。AOのジャケット、アルバムタイトル、そして曲順まで含めて一つの作品として組み立てる意識が、FELTにはかなり強くあったように思います。
どの作品から聴けばいいのか?
FELTの代表曲を一曲だけ決めるのは難しいですが、サークルの外側まで広がった楽曲という意味では、Runway Driveは外せません。『Silver Drive』収録、原曲は東方永夜抄「プレインエイジア」。NAGI☆のアレンジ、美歌の歌詞、舞花のヴォーカルという、FELT初期を象徴する組み合わせで、SOUND VOLTEXに収録された後、jubeatにも展開しています。そのほか「Hail Storm」「Liminality」「Innocent Eyes」「crescent moon」「Never Let It End」なども音楽ゲームへ収録され、FELTを同人イベントの外へ届ける入口になりました。
アルバム単位で全体像をつかむなら、『Rebirth Story』シリーズが分かりやすいです。単なるベスト盤ではなく、新曲やリミックスも含めながら、その時点までのFELTをあらためて組み直したシリーズです。初期の姿を見るなら『Milky Wink』『Fairy Queen』『Flower Flag』『Silver Drive』、中期までをまとめて聴くなら『Rebirth StoryⅡ』、後期へ向かう変化を見るなら『World Trick』以降、そして最終地点を見るなら『Last Wink』『Rebirth Story5』『START』という流れになります。
ただ、FELTの場合、代表曲だけを順番に聴いていくのと、一枚のアルバムを頭から最後まで通して聴くのとでは、かなり違った印象を受けます。現在、公式YouTubeでは全32作品がアルバム単位のプレイリストとして整理されています。興味を持った作品があれば、年表のアルバム名から開き、ぜひIntroductionから最後まで、曲順どおりに聴いてみてください。
2015年10月24日、最初で最後のワンマンライブ
FELTは、ライブを中心に活動するサークルではありませんでした。2012年6月には赤坂BLITZの「秋葉文化祭 第二章」へ出演していますが、FELT単独で行われた公演は、2015年10月24日に新宿MARZで開催された「FELT LIVE 2015」が最初で最後でした。公式に発表された編成は、Vocalが舞花、Vivienne、美歌、GuitarがNAGI☆、BassがMaurits“禅”Cornelis、DrumsがHIRO。CDの中で曲ごとに組み合わされていた主要人物たちが、一つのステージへ集まりました。
しかし結果的には、これがFELTにとって最初で最後のワンマンライブとなりました。その後もイベントへの参加やアルバム制作は続きましたが、二度目の単独公演が行われることはありませんでした。FELTにとってライブは活動の主軸ではなく、最後までやはり「作品を作る」という行為こそが中心にあった。そのことを象徴する出来事でもあります。
ここについては、別の記事でも触れたいと思います。
Last WinkからSTARTへ、終わり方までFELTだった
2019年12月31日、30作目となる『Last Wink』が発表されます。第1作のタイトルが『Milky Wink』だったことを考えると、非常に象徴的な名前です。後年NAGI☆は、この頃には30作という区切りで通常シリーズを終え、最後にもう一つ特別な作品を作ろうと考えていたことを振り返っています。そのため、FELTの終了を「コロナ禍によって突然活動できなくなった」ではなく、少なくとも活動を締めくくるという意識は、それ以前から存在していました。
2020年8月には、次のアルバムを最後にすることが正式に告知されます。同じ時期から、過去作品を公式YouTubeへ一曲ずつ公開する「Audio Archives」も進められました。CDの頒布を終える一方で、それまで作ってきた音楽を、これからも聴ける形で残していくための作業です。そして2021年12月31日、コミックマーケット99でFELT-031『Rebirth Story5』とFELT-032『START』が同時に頒布されました。さらに、全32作品についてメンバー自身が振り返る『FELT Liner notes』も制作されています。
つまりFELTは、いつの間にか更新が途絶え、数年後になって「あれが最後だったのか」となったのではなく最後のアルバムを、最後の作品だと分かったうえで作りました。そして、そのタイトルは『END』でも『LAST』でもなく、『START』でした。NAGI☆は後の回想で、終わることによって、そこからまた始められるという意味を込めたことを語っています。
2026年1月には、活動終了から4年以上を経て『New World』がCHUNITHMへ追加されました。FELTという制作活動そのものは2021年で完結しています。しかし、そこで作品まで止まったわけではありません。音楽ゲームを通じて初めてFELTを知る人もいれば、公式YouTubeのアーカイブから十年以上前のアルバムへ遡っていく人もいます。
FELTとは何だったのか
FELTは、2010年代の東方アレンジが最も多様だった時代に、32タイトルというまとまった作品群を残したサークルでした。しかし、その特徴は単に作品数が多かったというだけではありません。NAGI☆とMZCという異なる音楽性を持つ二人を中心に、舞花、Vivienne、美歌という性格の異なる三つの歌声があり、そこへRenkoらの歌詞、BOYZ PARTYやEris、KURUMIらのアレンジや演奏、そしてAOのアートワークが加わっていました。
一枚のアルバムの中には、日本語ヴォーカルのロックがあり、英語ヴォーカルのハウスがあり、ギター主体のインストがあり、電子音楽があり、過去曲のリミックスもあります。それらを別々の作品として分けるのではなく、一枚のCDに順番をつけて収める。その繰り返しによって、「FELTらしい」という、言葉で説明しようとすると意外に難しい統一感が生まれていました。
またFELTは、最後まで作品単位で活動しました。ワンマンライブは一度きりでしたが、その後もアルバムを作り続け、30作目の『Last Wink』を経て、自ら活動終了を告知し、過去曲のアーカイブを始め、最後に『Rebirth Story5』と『START』を残しました。偶然そこで止まったのではなく、最後のピースまで自分たちの手で置いて、終わったサークルです。
FELTとは何だったのか。その答えを一つに決める必要はないのかもしれません。ただ、2010年代の同人音楽に確かに存在した「CD一枚を作品として作る文化」を振り返るとき、FELTの32タイトルは、その時代を知るための非常に分かりやすい一つの記録として残っています。そして活動終了後も、その音楽は公式YouTubeや音楽ゲームを通じて、当時FELTを知らなかった人たちのもとへ、今も少しずつ届き続けています。
参考資料・出典
FELT公式サイト
https://feltmusic.net/
FELT Discography
https://feltmusic.net/discography
FELT公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@Felt2010
FELT公式YouTube「ポッドキャスト」/アルバム別公式プレイリスト
https://www.youtube.com/@Felt2010/podcasts
発熱巫女~ず『A Story』
https://hatsunetsumikos.net/astr/
FELT LIVE 2015 公式特設ページ
https://feltmusic.net/LIVE2015/
KONAMI SOUND VOLTEX 公式楽曲情報
https://p.eagate.573.jp/game/eacsdvx/iii/p/common/info/sdvx_mlist.html
KONAMI jubeat 公式楽曲情報
https://p.eagate.573.jp/game/jubeat/ave/music/
セガ CHUNITHM 公式サイト
https://info-chunithm.sega.jp/
FELT Liner notes 関連資料。NAGI☆、Maurits“禅”Cornelis、舞花、Vivienne、美歌らによる各作品の制作回想、FELTの活動終了までの経緯を参照しています。





