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池袋でウイグル料理を食べてみる、Doppam(ドパム)レビュー

「新疆ウイグル自治区」という名前は、ニュースや世界史の中で一度くらいは聞いたことがあると思います。
ただ、そこに暮らす人たちがどんな言葉を話し、どんな文化を持ち、普段どんな料理を食べているのかとなると、意外と知らないものです。
私も、独特な文化があるらしいという程度の知識しかありませんでした。

中国の西側にありながら、中央アジアにも近い。イスラム文化の影響があり、料理には羊肉やクミン、ナンやピラフが登場します。
中国っぽさとイスラム圏っぽさ、さらにトルコや中央アジアを思わせる雰囲気が一緒になっている。それなら一度食べてみようと思い、池袋にあるウイグル料理店「Doppam(ドパム)」へ行ってきました。

ウイグルとは。中国と中央アジアのあいだにある文化

そもそもウイグルとは何なのか。(※調べて知りました……)
ウイグル人は、中国西部の新疆ウイグル自治区を中心に暮らすテュルク系の民族です。イスラム教を信仰する人が多く、ウイグル語も中国語とは系統が異なり、トルコ語やウズベク語などと同じテュルク諸語に属しています。

地図を見ると、その文化に独特の雰囲気があることも少し分かってきます。新疆は中国のかなり西側に位置し、カザフスタンやキルギス、タジキスタンなど中央アジアの国々にも近い地域です。古くから東西を結ぶシルクロードの道筋の一つでもあり、人や物だけでなく、宗教、言葉、食文化など、さまざまな文化が行き交ってきました。現在の新疆を通る長安、天山回廊も、ユネスコによって中国と中央アジアを結んだシルクロードの重要な交易路として世界遺産に登録されています。

そう考えると、ウイグルの文化を単純に「中国の地方文化」と見るより、中国と中央アジアの接点に育った文化と考えた方が、実際の雰囲気には近いのかもしれません。

今回訪れたDoppamも、店に入った瞬間から一般的な中国料理店とはかなり違います。壁には大きな絨毯が並び、テーブルクロスにも中央アジアを思わせる幾何学模様があります。入口の看板には、一見するとアラビア語のように見える文字も書かれています。これは単なる装飾というわけではなく、現在のウイグル語ではアラビア文字をもとにした文字体系が使われています。

中国料理店とも違う。トルコ料理店とも少し違う。店の中にいるだけでも、中国、中央アジア、イスラム文化が重なっている地域なのだということが何となく伝わってきます。

ウイグル料理とはどんな料理なのか

ウイグル料理を見ていくと、まず目につくのが羊肉です。そこに小麦、米、玉ねぎ、人参、トマトなどを組み合わせ、クミンをはじめとした香辛料を使います。イスラムの食文化を背景に、ハラールの食材を使うことも大きな特徴です。(※これも調べて知りました)

代表的なのが、羊肉と人参などを米と一緒に炊く「ポロ」。中央アジアで広く食べられているプロフに近い料理です。そのほかにも、手延べ麺のラグメン、窯で焼くナン、羊肉を包んで焼くサムサ、羊肉の串焼きなどがあります。料理名だけ並べてみても、いわゆる日本で想像する中華料理とはかなり違います。

一方で、麺を炒めたり、肉と野菜を鍋で調理したりする料理も多く、完全に中央アジア料理というわけでもありません。中国側の食文化も入りながら、長い時間をかけてこの地域独自の料理になっていったのでしょう。

今回訪れたDoppamは、もともと地下鉄成増駅近くに店舗があり、その後池袋にも店舗を展開しています。料理だけでなくウイグル音楽にも力を入れている店で、公式サイトでも「Uyghur Music Restaurant」と紹介されています。

池袋店はモバイルオーダー式です。席に座って待っていても紙のメニューが出てくるわけではないので、スマートフォンから注文します。
私は最初に中国語で話しかけられましたが、日本語を話せるスタッフの方もいました。

ランチには「新疆焼き包子・羊肉ピラフセット」2,068円、「小缶羊肉煮込み・羊肉ピラフセット」2,068円、「ラグメン」1,628円、「大皿鶏辛煮まぜ麺セット」1,848円、「家庭風刀削麺」1,078円などがありました。初めて見る名前が多く、メニューを眺めているだけでもなかなか面白いです。

一口目は「薄い」

今回注文したのは「新疆焼き包子・羊肉ピラフセット」。
羊肉ピラフは、ウイグル料理ではポロと呼ばれる代表的な料理です。大きめの羊肉、人参、米が一緒に盛られていて、見た目だけなら比較的シンプルです。

実際に一口食べて最初に思ったのは、「薄い」でした。塩味が強いわけではなく、砂糖の甘さもありません。一般的な中華料理のように、一口目から調味料の味がはっきりと来るわけでもない。ところが二口、三口と食べていると、不思議と印象が変わってきます。

薄いはずなのに、だんだん味が濃く感じられるのです。羊肉の旨味、人参の甘さ、米が吸った肉汁、そして全体をまとめている油のコクが、食べ進めるほど少しずつ出てきます。一口目に分かりやすい味を作るのではなく、噛んでいるうちに素材の味が重なってくるような感じです。

特に印象的だったのが油でした。決して脂っこくはないのですが、米粒にはきれいに油が回っていて、どこかバターのような甘く香ばしい匂いがあります。実際にどんな油を使っているのかまでは分かりませんが、羊肉から出た脂や玉ねぎなどの香りが混ざっているのでしょうか。油そのものがおいしい、と感じる料理は意外と少ない気がします。

人参も酸っぱくありません。日本で細切りの人参を見ると、酢やドレッシングのような味を何となく想像しますが、こちらは人参そのものの甘さに、スパイスと油が絡んだような味です。派手ではありませんが、最後まで食べていて飽きません。むしろ食べ始めよりも、食べ終わる頃の方がおいしく感じました。「滋味深い」という言葉がよく似合います。

そしてもう一つが焼き包子です。

運ばれてきたばかりなので、とにかく熱いです。表面にはしっかり焼き色がついていますが、生地は思った以上にもっちりしています。割ってみると中には羊肉が入っていて、こちらも味付けそのものはかなり控えめです。ただ、噛むと肉汁と一緒にクミンの香りがふっと出てきます。

クミンを大量に振った料理のように強烈な香りではありません。羊肉の後ろから少しだけ香る程度で、それがポロの穏やかな味によく合っています。熱々のもちもちした生地、羊肉の旨味、クミンの香り。この焼き包子だけでも、普段あまり食べることのない味でした。

安いかは分からないけれど、良い体験

ランチで約2,000円と考えると、決して安いとは言えません。ただ、普段ほとんど触れることのない食文化を一皿で体験できると思えば面白かったです。

意外だったのが、食べ終わった後です。米にも油はしっかり使われていますし、羊肉も入っているのに不思議と胃が重くなりませんでした。塩味や甘味を強くして食べさせる料理ではないためか、最後まで食べても疲れないのです。濃すぎる味付けが苦手な人には、案外食べやすい料理なのかもしれません。

唯一不満なのが、モバイルオーダーなのに会計は現金のみだったことです。少なくとも私が訪れたランチでは現金払いでした。注文はスマートフォンなのに、最後だけ急に現金になります。現在の支払い方法やディナーについては変わる可能性もあるので、行く場合は一応現金を持っていた方が安心だと思います。

今回はポロと焼き包子でしたが、メニューを見ているとラグメンや大皿鶏、炒め麺もかなりおいしそうでした。特にラグメンはウイグル料理を代表する麺料理なので、次に行くなら食べてみたいところです。

新疆ウイグル自治区という名前は知っていても、そこにどんな文化や食べ物があるのかまでは、なかなか知る機会がありません。しかし一皿食べてみると、中国と中央アジアの間にある土地で、長い時間をかけてさまざまな文化が行き交ってきたことが、料理から少しだけ見えてきます。

一口目は薄い。でも、食べているうちにだんだんおいしくなる。最後の一口まで食べて、ようやくこの料理の良さが分かるような、不思議な食事でした。池袋で少し変わったものを食べてみたいときには、こういう選択肢もなかなか面白いと思います。

参考資料

UNESCO World Heritage Centre「Silk Roads: the Routes Network of Chang’an-Tianshan Corridor」
https://whc.unesco.org/en/list/1442

Oxford Research Encyclopedia of Asian History「The Uyghurs: Making a Nation」
https://academic.oup.com/edited-volume/61799/chapter-abstract/546313303

Oxford Research Encyclopedia of Food Studies「Islam, Ethnicity, and Cuisine in China」
https://academic.oup.com/edited-volume/61795/chapter-abstract/568371120

Ayoufu, Yang, Yimit「Uyghur food culture」Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28802283/

Doppam 公式サイト
https://doppam.jp/

Omniglot「Uyghur language and alphabets」
https://www.omniglot.com/writing/uyghur.htm