ごま油というと、中華料理の仕上げに少量かけるものという印象があるかもしれません。しかし、種類を選べば、炒め物や揚げ物はもちろん、ドレッシングやお菓子作りにまで使える、かなり万能な油です。
なかでも私が愛用しているのが、九鬼産業株式会社のごま油です。九鬼産業では、ごまの焙煎温度を調整したうえで圧搾し、静置ろ過を繰り返すことで、色や香りの異なるさまざまなごま油を製造しています。
同じメーカーのごま油でも、ほとんど香りのないものから、料理に力強い香りを加える濃口まで、その個性はかなり違います。今回は九鬼産業のごま油について、わが家での使い分けや料理への活用方法、保管するときに気をつけていることを紹介してみます。
淡口から濃口まで、料理に合わせて使い分ける
料理を始めたばかりの頃は、小さな瓶のごま油を買い、中華料理の仕上げに少しだけ使うことが多いと思います。しかし九鬼産業のごま油は香りの幅が広く、種類を選べば、普段使っている米油や菜種油などと同じように調理用の油として使えます。
九鬼産業の公式サイトでは、ごま油を香りの強さによって分類しています。現在の案内では、香りのない「九鬼 太白純正胡麻油」が風味・香りレベル0、ほんのり香る「九鬼 金白純正胡麻油」がレベル1、ほどよい香りの「九鬼 ヤマシチ純正胡麻油」がレベル2となっています。
さらに香りを楽しみたい料理には、「九鬼 一番搾り純正胡麻油」や「九鬼 純正胡麻油 こいくち」などを選べます。ごま油という一つの調味料の中に、白ワインから重い赤ワインまでそろっているような面白さがあります。
九鬼 太白純正胡麻油は普段使いしやすい
九鬼 太白純正胡麻油は、ごまを焙煎せず、生のまま低温圧搾したごま油です。一般的な茶色いごま油とは異なり、焙煎ごま油特有の色や香りがほとんどありません。そのため、ごまの香りを強く出したくない料理にも使えます。
サラダのドレッシングはもちろん、炒め物、揚げ物、パスタ、お菓子作りなど、用途はかなり幅広いです。わが家では、ほかの植物油の代わりに使うこともあります。癖が少なく、料理の味を邪魔しにくいので、初めて使う人にも取り入れやすいと思います。
植物油には、原料を押しつぶして油を取り出す圧搾法と、食品製造で認められた溶剤を用いて油分を取り出し、その後に精製する抽出法があります。抽出法が使われていることだけを理由に、その油が危険、あるいは粗悪だと判断することはできません。
また、オリーブオイルの「エキストラバージン」は、本来、オリーブの果実から機械的または物理的な方法で得られ、一定の品質基準を満たしたものを指します。以前の文章では、溶剤抽出した油でもエキストラバージンと表示できるという趣旨を書いていましたが、この表現は正確ではありません。
油を選ぶときは、価格や健康的なイメージだけで判断するのではなく、原料、製法、香り、料理との相性、メーカーが公開している情報を見比べることが大切です。その点、九鬼産業は焙煎や圧搾の方法、料理ごとの使い分けを比較的詳しく紹介しているため、選びやすいメーカーだと思います。
天ぷらや煮物には香りのあるごま油を使う
もう少しごまの香りを楽しみたいときには、九鬼 金白純正胡麻油が使いやすいです。低温で時間をかけて焙煎しており、香りは穏やかですが、太白純正胡麻油よりもごまらしい風味があります。
公式サイトでは、天ぷら、和食、ドレッシングなどに向いていると紹介されています。自宅で天ぷらを揚げるときに使うと、衣からほんのりと上品な香りが立ち、一般的な植物油だけで揚げたときとは少し違った仕上がりになります。
大きな天然エビや白身魚など、素材そのものの香りや甘みを楽しみたい場合は、ごま油の香りを強くしすぎないほうがよいと思います。太白や金白を中心に使うか、ほかの油と混ぜながら、自分の好みに合う割合を探すのも面白いです。
煮物や炒め物には、九鬼 ヤマシチ純正胡麻油もよく合います。まろやかな味と軽い香りがあり、筑前煮やがめ煮に使うと、素材の味を残しながらコクを加えられます。香りが強すぎないため、和食にも使いやすいごま油です。
白身魚に片栗粉をまぶし、少し多めのごま油で揚げ焼きにするのもおすすめです。刻んだ長ネギを使ったタレを合わせると、ごま油の香りとネギの風味がよくなじみます。
ただし、どれほど香りのよい油でも、同じ味が続けば少しくどく感じることがあります。茹でたカリフラワーやスナップエンドウ、ミニトマトなど、味付けの軽い野菜を添えると、最後まで食べやすくなります。
濃口ごま油で料理を大きく変える
ナムルや焼肉のタレ、中華料理など、ごまの香りをはっきりと出したい料理には、九鬼 純正胡麻油 こいくちが向いています。少量でも存在感があるため、仕上げに加えるだけで料理の印象が大きく変わります。
この濃口ごま油をあえて唐揚げに使うと、家庭の唐揚げとは少し違う、本格的な中華料理を思わせる力強い香りに仕上がります。好みは分かれるかもしれませんが、ごま油の香りが好きな人には一度試してほしい使い方です。
さらに、刻んだニンニクと玉ネギを具入りラー油と一緒に炒め、醤油を加えたタレをかけると、かなり危険なビールのお供になります。摘みたての大葉を添えれば香りに軽さが加わり、ビールが何本あっても足りなくなるような料理が完成します。おいしいからといって、食べすぎと飲みすぎには注意が必要です。
香りの強いごま油は、高温で炒める料理にもよく合います。ただし、油から煙が出続けるほど加熱すると、風味が落ちるだけでなく、発火の危険もあります。フライパンを十分に温めたら、煙が立ち続ける前に具材を加え、安全な火加減で調理してください。
自家製のごまドレッシングを作る
市販の合わせ調味料を使わなくても、ごま油があれば自家製のごまドレッシングやごまだれを作れます。
炒りごまをフライパンで軽く炒り直し、すり鉢やミルで細かくします。そこへごま油、穀物酢、レモン果汁、砂糖、醤油などを加え、好みの濃さになるまで混ぜれば完成です。
市販品のように毎回まったく同じ味にはなりませんが、酸味を強くしたり、甘さを控えたり、香りの異なるごま油を混ぜたりと、その日の料理に合わせて調整できます。太白純正胡麻油を使えば穏やかに、濃口を少量加えれば香りの強いドレッシングになります。
最近のわが家では、うま味調味料や果糖ぶどう糖液糖、たんぱく加水分解物を含む合わせ調味料をなるべく使わず、必要なタレやドレッシングを自分で作るようにしています。
すべてを手作りするのは時間も費用もかかるため、無理に徹底する必要はありません。それでも、基本になる油を自分の好みに合ったものへ替えるだけで、料理の香りや口当たりはかなり変わります。ごま油は、その違いを感じやすい調味料の一つです。
ごま油はどのように保管するのか
九鬼産業が案内している基本的な保管方法は、開封前、開封後ともに「直射日光を避け、常温・暗所で保存」です。開封後は蓋をきちんと閉め、涼しく暗い場所に置きます。
冷蔵庫へ入れる必要はありません。ごま油は低温になると白く濁ったり、成分が固まったりすることがあります。品質上の問題ではなく、常温へ戻せば使えるようになりますが、普段の保管は冷暗所で十分です。
九鬼産業では、開封後は風味を考慮して2~3か月を目安に使うことを推奨しています。味や香りが普段と違うと感じた場合は、期間内であっても使用を控えたほうが安心です。
わが家では1600gの大きな缶を購入することがありますが、そのままでは毎日の料理に使いにくいため、清潔で完全に乾いた小瓶へ少量ずつ移しています。水分が入ると品質を損なう原因になるため、洗った瓶を使う場合は、内部まで十分に乾燥させることが重要です。
残った油は元の缶の蓋をしっかり閉じ、光と高温を避けて保管します。小瓶へ何度も継ぎ足すのではなく、使い切ってから瓶を洗浄し、完全に乾燥させて次の分を入れるようにしています。
以前は缶ごとジッパー付きの袋へ入れ、空気を抜けば酸化を防げると考えていました。しかし、袋の空気を抜いても缶の内部にある空気まで取り除けるわけではありません。そのため、「この方法ならほとんど酸化しない」とまではいえません。大容量缶を買う場合も、開封後2~3か月程度で無理なく使い切れるかを考えて選ぶのがよいと思います。
料理に合わせてごま油を選ぶ楽しさ
ごま油は、仕上げに数滴たらすだけの調味料ではありません。香りのない太白から、穏やかな金白やヤマシチ、力強い濃口まで使い分けることで、サラダ、天ぷら、煮物、炒め物、唐揚げ、ドレッシングと、さまざまな料理に活用できます。
最初から何本もそろえる必要はありません。まずは癖の少ない九鬼 太白純正胡麻油か、ほどよく香る九鬼 ヤマシチ純正胡麻油を一本使ってみると、一般的なごま油との違いが分かりやすいと思います。
料理の内容に合わせて香りを選び、ときには二種類を混ぜて自分好みの風味を作る。ごま油を単なる油ではなく、一つの調味料として考えるようになると、毎日の料理が少し面白くなります。
そんなわけで、いつもの食卓に、少しだけこだわったごま油を加えてみてはいかがでしょうか。