最近、ネットフリックスでサンリオの人気キャラクター「マイメロディ」と「クロミ」が活躍するオリジナルアニメが配信されているのをご存じでしょうか。
カバー写真は、https://www.sanrio.co.jp/news/goods/mu-netflix-anime-202507/より引用

私自身、マイメロディというキャラクターは知っていましたが、どこか「子ども向け」の作品という先入観が強く、これまで真剣に視聴したことはありませんでした。ところが、何気なく1話だけ観てみたところ、その完成度に驚き、思わず最後まで見入ってしまいました。
その理由のひとつが、映像表現の独自性にあります。この作品はCGではなく、フェルトや布を使った実際の人形を用いたストップモーションアニメ。いわゆる「コマ撮り」で、一体一体のフィギュアをわずかに動かしながら撮影を重ねる気の遠くなるような手法で制作されています。
ピングーやニャッキ、最近のプイプイモルカーを思わせる懐かしさと新しさの融合であり、そこにNetflixらしい潤沢な制作費と最新のカメラワークが組み合わさることで、他に類を見ない圧倒的な映像美が実現しています。背景の色彩設計や画角の工夫も細部まで徹底されており、単なる人形劇の枠を超えて「美術作品のようなアニメ」に仕上がっているのです。
キャラクターの再解釈と物語の深み
一方でストーリーやキャラクター描写にも大きな特徴があります。
過去に日本で放送されていた2Dアニメ版のマイメロディは、どこか天然で空気を読まず、クロミを困らせたり意地悪に映る場面が多かった記憶があります。
しかしNetflix版の彼女は大きく変わり、優しく友達思いで、ただ少しおせっかいが過ぎるだけという「理想的なキャラクター」として描かれています。逆にクロミは嫉妬や劣等感からマイメロディを妨害したり、トラブルを招く立場が強調され、両者のコントラストが鮮明になっています。
ただし単純に「善」と「悪」に分けられているわけではなく、物語を追うごとにクロミの感情の裏側や不安が掘り下げられ、なぜそう振る舞うのかが丁寧に描かれます。そして最終的にはマイメロディとクロミがお互いを理解し、協力し合う流れに帰結していく。
この「対立から和解」への過程は王道的ですが、心理的な描写が細やかで、子ども向けアニメの枠を超えた深さを感じさせます。
さらに展開にも工夫があり、序盤は日常系のゆったりとしたリズムで進み、中盤以降は一気にスピード感が増し、舞台や状況が次々と切り替わることで飽きさせない構造になっています。映像の緻密さと相まって、大人が見ても十分楽しめるストーリーテリングが成立していると感じました。
可愛さと重厚さを併せ持つ、大人向けサンリオ作品
ただし、この作品の大きなポイントは「見た目は子ども向けなのに、中身はかなり大人向け」だということです。フェルト人形の温かみやキャラクターの可愛らしさは、小学校低学年の子どもでも楽しめるように設計されていますが、ストーリーの内容は心理的にやや重たく、時に不気味さや緊張感を漂わせる演出が目立ちます。
例えば闇を象徴するようなシーンや、少し不安を煽るような描写が差し込まれており、小学生にとっては怖く感じる場面もあるでしょう。もちろん、血やグロテスクな要素はなく、暴力的な描写もコミカルにデフォルメされているので安心して観られますが、全体としては小学校高学年から中学生、そして大人の鑑賞にこそ向いている作品だと感じます。
特に私のように「サンリオは子ども向け」と思い込んでいた大人にこそ見てほしい作品で、可愛さと深みを両立させた稀有なアニメーションの完成形だといえるでしょう。さらに、大人の目から見ても「優しさとは何か」「愛情とはどうあるべきか」といった普遍的なテーマを思い出させてくれる場面が多く含まれています。
普段こうした“子ども向けアニメ”を避けている人でも、1話だけでも試しに観てみれば、その奥にある温かさや丁寧さに驚くはずです。結果的に私は「ストーリーの展開」だけでなく「手作業の丁寧さや美術性」に感動し、気づけば完全にこの作品に引き込まれていました。



