富士を駆け抜けた“M”の牙 ― BMW M4が見せた本気の走り

クルマ
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BMWの中でも、今もっとも熱いモデルといえる「M4」。
今回、そのM4を富士スピードウェイの本コースで全開試乗してきました。
カタログスペックや街中の試乗では決して見えない“M”の真価を、サーキットで体感した結果をお伝えします。

M4とは何者か ― V8から直6ターボへ

試乗したのは BMW M4 クーペ。
エンジンは「S55B30A」型、3.0リッター直列6気筒 Mツインパワー・ターボ。
最高出力は431ps、最大トルクは56.1kgmを誇ります。

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先代E92 M3が積んでいたのは、自然吸気のV8・4.0リッターエンジン「S65」。
8,300回転まで吹け上がるそのエンジンは、まさにNAエンジンの極致でした。
スペック上は「420馬力/40.8kgm」だったため、
M4の登場時には「3リッター直6ターボ?スペックダウンでは?」と感じた方も少なくなかったと思います。

しかし実際に走らせてみると、その印象は根底から覆ります。
M4の走りは、数字の上では測れない“異次元の完成度”でした。

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富士スピードウェイで感じた“本物のM”

BMW 335iとRX-7でスパ西浦 走行会に参加

(335iのサーキット走行について詳しくは上記の記事を参照いただけます。)

この試乗の1週間前、偶然にもBMW 335iでサーキット走行会に参加していました。
同じ直列6気筒ツインターボを搭載する335i(306ps)と比べることで、M社のチューニングがどれほど別次元なのかを、鮮明に感じ取ることができました。

ピットで待機するM4に乗り込み、ステアリングの“Mボタン”を押してモードを変更。
シフトをマニュアルに入れ、アクセルを踏み抜いた瞬間――
まるで吸い込まれるようにレッドゾーンへ突き進み、ピット出口のわずかな直線であっという間に140km/hに到達します。

これまで「ターボ車は高回転が鈍い」と感じていた印象は完全に消えました。
Mの手によるツインターボは、もはやNAエンジンのように軽やか。
回転上昇にムラがなく、スロットルレスポンスは鋭く、レッドゾーン寸前まで伸びやかに吹け上がります。

またサウンドも官能的です。
回転が上がるにつれて音が甲高く変化し、ギアを上げる直前の“抜け”が最も心地よい。音だけでもM社の徹底したチューニング哲学が伝わってきます。

335iと比べると、同じ直6ツインターボでも世界が違います。
M4は「ツーリングクーペ」ではなく、完全に「サーキットを前提にしたマシン」。レスポンスはレーシングバイクのようで、低回転からのトルクもしっかり出るため、走り出しから力強さが際立ちます。

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DTCが守る“誰でも速く走れる”領域

富士スピードウェイの第1コーナーを抜けて加速していくと、M4はDTC(ダイナミック・トラクション・コントロール)ONの状態でも驚くほどの加速を見せます。
もしこの制御をオフにしていたら、軽くアクセルを開けただけでテールが滑り出すでしょう。
ピークトルクが一気に立ち上がる特性ゆえ、DTCオフで速く走るには相当の技量が必要です。

ただし、DTCをオンにしていれば心配は不要。
電子制御が介入して、タイヤの限界ギリギリを維持してくれるため、誰が乗っても安定して速く走ることができます。
この「安心して踏める速さ」は、まさに現代のMの魅力です。

ニュートラルな挙動と圧倒的な安定性

パワーが強烈な一方で、シャーシバランスは極めてニュートラル。
筆者はかつてRX-7に5年間乗っていましたが、M4の方がよりバランスが良く、安心して全開で攻め込むことができます。

試乗車に装着されていたのはミシュラン・パイロットスーパースポーツ。
そのグリップ性能もさることながら、ハンドルを通して伝わる路面情報が非常に正確で、180km/hを超えるコーナー進入でも不安を感じません。

通常のBMWではこの速度域になると、ハンドルが甘くなり接地感が薄れます。
しかしM4は違います。250km/hからのフルブレーキングでも姿勢が乱れず、ブレーキを残しながらスムーズにコーナーへ進入可能です。まるで車体全体が“意志を持って動く”ような感覚でした。

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M135i・M6との比較で見えるM4の立ち位置

M135iと比較すると、M4はまさにサーキット専用機です。M135iは低速~中速域に強く、ワインディングや峠では高い戦闘力を発揮します。
しかし富士スピードウェイのような高速サーキットでは、200km/hを超えた領域でM4が圧倒的に安定しています。

一方でM6と比べると、高速域ではM4が一歩譲ります。M6は560馬力を誇り、ホームストレートで270km/hに達しても余裕を残します。
M4は200km/hを超えると加速が鈍り始め、100-200km/h区間までは互角ですが、その先はM6の圧勝です。

実際、ある方のテストでは、ラジアルタイヤ仕様でM6が1分56秒、M4が1分57秒と1秒差。
それでもこの差は誇るべきでしょう。軽量でコーナリング性能に優れるM4は、富士の後半セクションで確実にM6を脅かします。

DCTの完成度 ― “電光石火”の変速

先代M3から採用されたDCT(ダブルクラッチトランスミッション)は、サーキットでこそ真価を発揮します。かつてのSMGとは比較にならない速さと正確さで、もはやMTを選ぶ理由がないほどです。

一度パドルで操作すれば、車速や回転にかかわらずコンピュータは介入しません。自分のタイミングでギアを上げ下げできるため、ドライバーの意図がそのまま走りに反映されます。
この“人と機械の融合感”こそ、M4の魅力の核心です。

完成度に死角なし ― トータルバランスの極致

筆者は決してプロドライバーではありませんが、M4に不満を感じる点は一切ありませんでした。
加速、ブレーキング、ハンドリング、剛性――どれを取っても完璧。
サーキットにノーマルのまま持ち込んでも、改造した国産スポーツと互角以上に戦える仕上がりです。

燃費面でも驚かされます。サーキット全開走行でリッター5〜8km、街乗りでは12km/L前後を実現。アイドリングストップまで搭載しているのですから驚きです。

唯一挙げるとすれば、内装の高級感が控えめな点でしょうか。ただ、スポーツ志向のM4にそれを求めるのは筋違い。内装の豪華さが欲しければAMGを選べばよい話です。M4は“走り”にすべてを注いだ純粋なマシンです。

総評 ― M4は「日常に持ち込めるレーシングカー」

ここまで試乗して、心から「欲しい」と思った車は久しぶりです。M4は、デートにも買い物にも使える実用性を持ちながら、サーキットに持ち込めば驚異的な速さを見せる“万能戦士”です。

1台で生活のあらゆるシーンをカバーできるBMWマジックには脱帽しました。ただし、もし購入を検討しているならM6ともぜひ比較してほしいです。「C63 AMGにすればよかった」「S4にすればよかった」と後悔することはありませんが、M4を買った後に「やっぱりM6も気になる…」と思う可能性はあります。

それほど両者は異なる魅力を持つ存在です。M6はパワーと余裕、M4は軽快さと万能性。自分の走るステージと性格に合わせて選べば、どちらも正解でしょう。


最後に一言。BMW M4は、走ることが好きなすべての人にとって“理想の相棒”です。

富士スピードウェイでその走りを体験した今、この車の真価は「スペック」ではなく「感情」で語るべきだと確信しました。本気で走り、本気で惚れる。そんなクルマが、M4です。

(欲しいので、頑張って貯金します……)

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