「もう本は売れない時代」にブックオフへ祈る理由

Pickup
この記事は約5分で読めます。

人間の脳みそというのは本当によくできていて、さまざまな新しい知識を得ることに感動するのですが、特にその情報が新鮮だったり、衝撃的だったり、センシティブだったりすると、ドーパミンが分泌されて中毒のようになってしまいます。

特にツイッターなどのSNSは、この人間の知的好奇心を巧みに刺激してくれます。役に立つ情報や役に立たない情報、くだらない情報までがランダムに流れてきますが、一貫して新鮮な情報がタイムラインを更新するたびに飛び出してくるので、やめられない原因の一つになってしまっています。私自身もその影響を強く感じており、このツイートを見て大いに共感しました。

一昔前までは、ブックオフは本の愛好家から否定的に捉えられる存在でした。個人の書店がなくなってしまい、こだわりのある店主が厳選して並べた本も失われていったからです。個人の書店や古本屋は店主の思想や趣向が強く反映されていて、その考え方に共感できる店を見つけたときには大きな感動があり、それを文化として大切にしていた人も多かったのかもしれません。とはいえ、ビジネスとしては難しく、入荷は不安定で、必ずしも安定した売上が見込めるわけではなく、半ば趣味的な経営のお店がほとんどでした。

この写真のように、東京の神保町などに行けば今でも古本屋が立ち並び、80年代や90年代のようにこだわって選書している店もあります。しかし経営上の理由から本の値段は高騰し、中には新品の価格を超えるものもあり、手が届きにくい商品が増えています。そのため現在では、本当に必要な知識人や専門家、大学院生などに向けて知を提供する場所となってしまっているのです。

一方で、私のように知的好奇心から何かのテーマを掘り下げたい人や、触りだけでも学びたい人、新書を読むような感覚で知識に触れたい人にとっては、ブックオフのように大量の古本を並べる店は非常にありがたい存在です。

都市部では回転率が高いため、新しい本が頻繁に入れ替わり、100円や200円といった安価で専門性の高い知識を得ることができます。ガチャガチャを回すような感覚で本を買えるため、本を読む入門体験としてはとても貴重なのです。

少し話が逸れますが、私は昨年、次のような体験をしました。

1980年代から1990年代に日本で流通していた時計について調べていたのですが、当時の情報はインターネット上にほとんど存在せず、海外サイトでわずかに触れられている程度でした。そこで神保町を訪れ、本屋を10軒ほど回って資料を探したのですが、ぴったりと紹介しているものはなく、非常に驚きました。わずか30〜40年前に流通していた、しかも高級な時計であるにもかかわらず、情報がほとんど残っていなかったのです。インターネットには無限に情報があるように思えますが、実際には個人ブログやツイートで断片的に触れられる程度で、当時どのように認識されていたのかすらわかりませんでした。

最終的には、タイトルから「紹介されていそうだ」と思った当時の雑誌をメルカリで購入し、特集記事から当時の状況を知ることができました。しかしその雑誌も、個人が処分したものがたった数冊、500円程度で出品されていただけでした。

つまり私のように関東に住み、ある時計の情報を得たいと思っても、残り数冊の出品物を買う以外に方法がないのです。これは一つの事例にすぎませんが、あらゆる分野で同じ現象が起きているのではないでしょうか。幸い私はメルカリで当時の雑誌を入手できましたが、それも失われてしまえば、地方のブックオフを車で何十軒も回り、カタログや雑誌を探すしかなくなります。

もう一つ、私が偶然撮影していた面白い写真があります。2008年10月23日、静岡のブックオフで撮影したもので、そこにはマツダRX-7の専門書が30冊ほどまとめて売られていました。おそらく家庭の事情でスポーツカーを手放す際に、一緒にコレクションしていた本も売ったのでしょう。これほどの専門書が同時に入荷することは珍しく、当時私自身もRX-7に乗っていたため、面白いと思って写真を撮ったのです。振り返れば、この状況こそが20年近く経った今でも「最もRX-7の情報が集まっていた瞬間」だったとも言えるでしょう。

学術的な分野や科学技術、医療の知識のように、常に最新情報へと更新されていくジャンルでは、古い本はすぐに価値を失い、今の情報こそが最良とされます。しかし、時計や車のように「盛り上がっていた時期」が限られる分野では、その時期の資料こそが情報量のピークを示しています。当時の雑誌や専門書には数千種類のパーツの価格、製造元、性能などが細かく記録されており、今となっては信じられないほど貴重な情報源です。中古部品を探す人にとっても役立つ記述が多く、資料としての価値は計り知れません。

つまり、現代ではSNSによって瞬時に最新情報を得られる一方で、活字や雑誌の文化は衰退し、当時存在していた情報が失われつつあります。そして皮肉にも、かつては町の本屋を潰すと批判されたブックオフが、今ではこうした文化を辛うじて存続させる「最後の砦」になっているのではないでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました