「百貨店外商」という知られざる世界――特別顧客だけが体験できる現実

コラム
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アクセスランキングを見ると、百貨店の外商やブランドの特別優待について関心を持っている人が意外と多いようです。正直、私はあまり語りたくないテーマでもあります。なぜなら知ったところで一般的にはメリットが少なく、どこかクローズドな世界だからです。

インスタグラムでは「私は特別な顧客です」と言わんばかりに外商イベントに参加した様子を投稿している人も見かけます。気になる人も多いと思うので、久々に少し触れてみます。

基本的には、百貨店で一定以上の年間購入額を達成すると、通常のカードから外商カードへの切り替え案内が届くことがあります。さらに、居住しているマンションのグレードやエリアの資産状況によっても届き、必ずしも高額な買い物をしていなくても自然と外商の案内が来るケースがあります。

ただし、発行基準や対応は百貨店ごとに大きく異なります。
ある店舗では年間の利用額を厳しく見られる一方、別の店舗では「この人は今後も継続して利用してくれそうだ」と判断されれば、比較的柔軟に外商カードを提供している印象です。つまり、一律の基準があるわけではなく、店舗や担当者の裁量が大きい世界だといえるでしょう。

2015-2019年頃まで利用していたカード


サービスの実態と現代的な価値

多くの人が気になる「外商のメリット」です。
実際に受けられるのは新作商品の優先案内や、顧客の嗜好に合わせた個別提案といったものが中心です。専任の担当者がまるでAIのように「この人ならこういうものが好きだろう」とセレクトしてくれるので、人によっては便利に感じるでしょう。言えば車や家までも紹介してくれます。

また、年に一度はホテルを貸し切った伊勢丹 丹青会のような特別イベントが開催され、宝飾品やブランドバッグの限定モデル、高額な工芸品などが一堂に集まります。その場で職人が手作業のハンドペイントを実演してくれたり、華やかな演出もあり、確かに特別感のある体験ではあります。
私が昔行ったときは5,000万円程度のダイヤモンドも売られていました。

とはいえ、冷静に見れば必ずしも「そこでしか買えない」商品は少なく、現代的にはその価値は限定的です。特に若い世代にとってはInstagramやECサイトのアルゴリズムの方が圧倒的に便利で、好みに合った商品がタイムラインに流れてきて、そのままワンタップで購入できる仕組みの方が自然に馴染むでしょう。

一方で、50代以上の顧客にとっては「自分の好みを覚えて提案してくれる」という人間的なサービスは大きな安心感につながるので、この世代には今なお根強い人気があります。

さらに外商の中でも高額顧客になると、自宅に商品を持ってきてもらい、手持ちの服やバッグと実際に合わせながら選ぶといったプライベートな体験も可能になります。人前に出たくない芸能人や有名人にとっては、自宅で音楽やアロマを楽しみながらリラックスして買い物ができることは大きなメリットでしょう。

しかし、一般的な20代や30代にとっては、わざわざ「自宅に呼ぶ」ほどの必要性は薄く、むしろ気軽に買い物へ出かける体験そのものに楽しみを感じるはずです。つまり外商の特別サービスは、プライバシーや体裁を気にする一部の富裕層には価値がある一方、若い世代にとってはInstagramやオンラインショッピングの方が現実的で便利、というのが実情なのだと思います。


外商顧客の現実と私の実感

外商顧客になると、専任の担当者がつき、家具や絵画の手配からワインやケータリングまで幅広くサポートしてくれる場合があります。人によっては、まるでフードデリバリーのように菓子や食料品を届けてもらう使い方をしている人もいるようですが、その範囲は百貨店の方針や担当者との信頼関係に大きく左右されます。

私自身も一時期外商顧客でしたが、そのとき感じたのは、カードの利用履歴を担当者が細かく把握している点でした。会った際に「この前ここに行かれましたよね」と言われることもあり、正直なところ少し気持ち悪さを覚えました。確かにライフスタイルに合わせて提案してくれるのは便利なのですが、裏を返せば行動や購入履歴を逐一把握されているということでもあります。

また、私が去年まで付き合いが多かったワイン界隈では、月に数百万円単位で使う人たちがブランドのクローズドイベントに招かれていました。シャンパンや高級チョコレートを片手に新製品を紹介されたり、その場で購入することもできるのですが、実際には常にSNS用の写真を撮っている人や、全身をそのブランドで固めた人が集まり、落ち着いて買い物を楽しむという雰囲気ではなかったと聞きます。


海外で直接購入するという選択肢

結局のところ、外商という仕組みはどう考えても「高齢者向けのサービス」もしくは「有名人・芸能人など外に出られない特別な立場の人」だと思います。50歳から80歳くらいの方にとっては、自分の好みを覚えて提案してくれる担当者がつき、買い物の手間を減らしてくれるのはありがたいでしょう。ですが、20代や30代の若い世代にとっては、InstagramやECのアルゴリズムがリールやフィードで自然におすすめを流してくれ、そのままワンタップで購入できる時代です。その利便性やスピード感と比べると、外商のサービスはどうしても古臭く感じられてしまいます。

さらに言えば、並行輸入や海外通販を活用すれば、コストは半分以下になることも珍しくありません。もちろん偽物のリスクはありますが、そこを見極められる目さえあれば、バイマや海外の公式サイトを使う方が圧倒的に賢い選択肢です。まだ日本で販売されていない新作を先取りすることだって可能ですし、外商を頼るメリットは薄いでしょう。

あえて禁句を言ってしまえば――本当に特別なモデルや仕様のアイテムが欲しいなら、日本の百貨店で外商に頼み込むよりも、製造国の直営店や工房に直接行って大きな買い物をする方がはるかに近道です。例えばロンドンで好きなブランドがあるなら、飛行機に乗って現地のハロッズやセルフリッジズ、ハーヴェイ・ニコルズ、あるいは直営店に行って、5万ポンドほどを一気に使えば、その場で「上客」と認識してもらえるでしょう。その結果、限定品や特別なサービスを本国ならではのスピード感で受けられるのです。

代理店を通している時点で、残念ながら「中間マージンを払っている情弱」になりかねません。限られた枠を狙って日本の百貨店で外商カードを持つよりも、本国で直にお金を落とした方が、オリジナルオーダーや限定的な体験に直結するのは明らかです。

ただしもちろん、芸能人やハイステータスな人たちは海外に気軽に行けなかったり、時間を割けないこともあるでしょう。その場合は国内の百貨店経由が最も現実的になります。結局のところ「外商を使う意味があるかどうか」は、資金力だけでなく、ライフスタイルや環境に大きく左右されるのだと思います。

と、随分と大層な文句をついていますが、私自身はもっぱら「肉のハナマサ」で100g 78円の胸肉を買って自炊する生活を送っておりますのよ、おほほ。

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