2025年11月、長年静岡の若者文化を支えてきた「静岡パルコ」が、2027年1月末をもって閉店すると発表しました。
静岡パルコ 2027年1月末をもって閉店を発表 「今後の商業環境の変化を中長期視点にて慎重に検討」 西武百貨店 静岡店跡を大幅改装し2007年3月にオープン(11/28 16:55配信・テレビ静岡)
静岡市中心街のシンボル的存在だったため、多くの人に衝撃が走りました。しかし、このニュースは単なる商業施設の閉店以上の意味を持っているのではないでしょうか。
静岡の”おまち”文化とはなんだったのか
静岡市では、中心街のことを”おまち”と呼んでいます。静岡県自体が、浜松・静岡・沼津・三島と明確に都市分けされていることもあり、静岡市に住んでいる人にとって、静岡市の中央に位置する呉服町や鷹匠、紺屋町などに行くことは特別なこと(体験)なのです。多数の飲食店やファッション、雑貨が揃っていて、デートなどもここを中心としています。
その”おまち”(静岡市中心部)では、2000年から2010年頃にかけて「静岡パルコ」「静岡マルイ(A館・B館)」「静岡109」の三つの大型ファッションビルが、若者文化の中心を担ってきました。
東京にも劣らないブランドラインナップで、一時期は全国でも珍しい地方なのに“若者向け商業施設が三棟並ぶ街”として注目されたほどです。
静岡パルコは、もともと 西武百貨店 静岡店の跡地を大規模に改装して2007年3月にオープンし、以来17年間にわたり静岡市の若者にとって重要な買い物・娯楽の場として存在してきました。
しかし、時代が進むにつれそのバランスは崩れていきます。

静岡109の閉店、東急スクエアへの転換、そしてケヤキプラザへ
最初に崩れたのは静岡109でした。

2014年に撮影
かつては「東京でしか買えない」ような個性あるファッションブランドが各フロアにぎっしりと入り、強い存在感を放っていましたが、長くは続かず撤退。2017年には 静岡東急スクエア としてリニューアルしました。
リニューアル後は、はじめこそ大型ファッションテナントが入りましたが、徐々に入居店舗は減少していき、「イオンモールにあるような全国チェーン」「100円均一」「低価格雑貨」こうした“どこにでもある店”ばかりが残る状態へと移行しました。
その後、2023年4月に東急スクエアも閉店し、跡地は現在の 「ケヤキプラザ」として運営されています。
しかしテナント数は大幅に減少し、
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1階:ダイソー、Standard Products
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2階:ドン・キホーテ
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3階:ゲームコーナー、TCGショップ
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4階以降:存在しない(クローズ状態)
という、かつてのファッションビルとしての役割を完全に捨てた形になりました。ここで私は、「静岡市の若者消費が限界に達しているのではないか」と強く感じました。
なぜなら、このケヤキプラザは 新静岡駅徒歩1分、静岡駅徒歩3〜5分という最高立地にあるにもかかわらず、上層階が長期にわたって空いたままだからです。
静岡マルイの閉店は決定的な転換点だった
次に静岡マルイです。

2014年頃の賑わっている時期
静岡マルイはA館・B館の2棟体制で、静岡松坂屋のすぐ隣にあり、ファッションの面で東京と比較しても遜色ない規模を誇っていました。
しかし、実際の現場を見ていると、静岡マルイはもう何年も前から弱り始めていました。

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徐々にテナント撤退
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フロアの電気を消せないため、広大なスケルトン空間にわずかなフリースペースだけが残る
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無料で快適な自習スペースを作ってもほとんど人が来ない
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最後は100均やガチャなど、短期間で入れ替わる軽いテナントばかりに
つまり、需要そのものが消えていたのです。そして2021年、静岡マルイは完全閉店しました。
跡地には駿河屋本店という、通販や全国展開しているアニメショップが入っていますが、かつての賑わいとは程遠い状況です。
このマルイの閉店は「静岡中心街のファッション需要が壊れた瞬間」だったと思います。
残された静岡パルコも撤退へ ― 若者需要の“母数そのもの”が不足
そして最後に残った静岡パルコ。
マルイが消え、109(東急スクエア)が消え、若者向け商業ビルとしては静岡唯一の存在となったため、私は「ここにニーズが集中して強くなるのでは?」と考えていました。
しかし結果は逆でした。テナントの入れ替え、リニューアル、イベント開催など、できる限りの努力をしても客数は戻らず、2027年1月末での完全閉店が決定しました。
ここで私は気づきました。
静岡では「若者のための大型ファッションビル」という業態そのものが、もはや成立しないほどの市場規模まで縮小してしまったのだと。
単にライバルが撤退したから有利になるのではなく、市場そのものが消滅しつつあったという現実です。

静岡パルコ跡地が“商業ビルとして復活する可能性は極めて低い”
百貨店型の構造を持つビルには非常に重いコストがのしかかります。
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エスカレーター、エレベーターの更新
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空調、給排水設備の更新
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非常用設備、防災センター
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警備、人件費
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照明・共用部の電気代
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路線価に基づく高額な不動産評価額
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固定資産税の高さ
これらを考慮すると、商業ビルとして採算を取るためには 70〜80%のテナント入居率が必要になると予想できます。
しかし現状、
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既にマルイ跡地が空洞化
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東急スクエア跡地(ケヤキプラザ)は上層階が長期空室
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若者向け商業需要が壊滅状態
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どこにでもある低価格チェーンしか入居していない
こうした状況を見ると、静岡パルコ跡地が再びファッションビルとしてリニューアルし、70%を埋める未来はほぼゼロに近いと言わざるを得ません。
静岡パルコ跡地の今後の3つのシナリオ
私は、静岡パルコ跡地の未来は次の3パターンに収束すると考えています。現時点での予想です。
①【50%】長期間の空きビル化(数年〜数十年放置)
最も現実的なシナリオです。
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売れば巨額の損失
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解体費も莫大
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新テナント需要がない
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公共用途も入りにくい
この条件がそろっているため、長期放置は大いにあり得ます。
②【20%】医療・高齢者施設・クリニックモールへの転換
次に現実的なのが医療・介護系です。
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静岡は高齢化が進んでいる
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需要は安定している
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テナント撤退が少ない
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高齢者富裕層向けサービスは成立しやすい
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設備改修が比較的容易
1階に飲食、上階にクリニック、上層に介護・リハビリなどの複合モデルは十分に考えられます。
③【30%】地元大企業による買収・再活用
静岡には、鈴与・静岡銀行・スズキ・ヤマハ・ホンダ・TOKAIグループなど、莫大な資金力を持つ企業が存在しています。
採算よりも、
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イメージ戦略
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拠点性
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社員の利便性
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地元貢献
を重視すれば、買収して自社ビルとして運用する可能性は残されています。
ただし建て替えは建設費の高騰により現実的ではなく、確率はやや低めです。
葵タワーの状況も示すように、静岡中心街は「商業で再生する時代」ではない
葵タワーの戸田書店跡はレンタルオフィス(リージャス)、小規模ショップなどが入っているものの、かつてのような求心力はありません。

これは「静岡中心街はもはや商業で再生するフェーズではない」ことを示しています。
最後に ― 若者向けファッションビルが復活する可能性は0%に近い
これまでの状況を総合すると、
静岡パルコ跡地に新たなファッション系商業ビルが入る可能性は、限りなくゼロに近いと考えています。
静岡109 → 東急スクエア → ケヤキプラザ
静岡マルイ
そして静岡パルコ
三つすべてが閉じられた今、
若者をターゲットとした大規模ファッションビルという業態が静岡で成立する時代は完全に終わりました。
今後は「商業」ではなく、「医療・介護」「オフィス」「高齢者向けサービス」「地元企業の拠点」などへと役割が移るでしょう。

静岡中心街は、大きな時代の転換点に立たされています。


