皆さんは普段、どのようにして紅茶を選んでいるでしょうか。
百貨店の紅茶専門店で実際に茶葉を観察して選ぶ方、フォションやハロッズのような海外の食品ブティックで購入する方、カルディなどの輸入食品店を利用する方、あるいはスーパーマーケットで特にこだわらず手に取る方など、そのスタイルは実に多様です。
しかし、よほど鮮度にこだわる企業でない限り、店頭に並ぶまでに茶葉は高温多湿や直射日光といった悪条件にさらされ、長時間の輸送や加工工程のなかで酸素に触れ続け、酸化が進んでいるのが実情です。この傾向は特に大企業の商品で顕著に見られます。茶園の倉庫で保管された茶葉が、貿易港の高温多湿な倉庫で長期間放置され、その後湿度の高い船便で長い時間をかけて輸送される。日本に到着してからも工場のラインで再び酸素にさらされながらパッキングされ、スーパーに並ぶまでにさらに時間がかかる——。こうした過程を経て、市場に出回っている紅茶の中には、実際には何年も前の収穫品である場合も少なくありません。
ここでは、高確率で美味しいお茶を選ぶ方法と、その後の保管の仕方についてご紹介します。
前提知識「お茶は経年劣化する」
紅茶の賞味期限は数年単位で設定されているものが多いですが、実際に美味しく飲める期間は驚くほど短く、長くてもせいぜい2週間ほどです。乾燥した茶葉は水分を吸いやすく、周囲の匂いも取り込みやすい性質を持っています。直射日光でも劣化しますが、最大の問題は酸化です。一度開封すると、脱酸素剤を入れて袋を熱圧着するくらいでなければ、風味はどんどん失われていきます。旬の紅茶は特有のフレッシュな香気が消え、味わいが平板になってしまいますし、フレーバードティーは吹き付けられた香料が揮発・変質し、やはり2週間ほどが限界でしょう。
また、冷蔵庫で保管する方もいますが、これは特殊な高水分の緑茶を除いておすすめできません。冷えた茶葉が常温に触れると表面に結露が生じ、水分で傷むだけでなく、冷蔵庫内の食品の匂いを吸収してしまうからです。
まず茶葉の状態をよく観察する
店頭に茶葉が並んでいる場合は、実際に目で確認したり香りを確かめてみましょう。茶葉の写真が掲載されていなかったり、現物を置いていない紅茶や店舗は、品質に疑問を持った方がよいかもしれません。香りがほとんどしないもの、酸化や湿気によって干し梅のような匂いがするもの、埃っぽさやカビ臭があるものは要注意です。
良質な紅茶には新芽が多く含まれ、小さな産毛のような「毛茸(もうじ)」がびっしりと生えています。これは埃ではなく、新芽の証です。また、細かく裁断された茶葉は表面積が大きいため繊維が露出しやすく、酸化が急速に進む点も覚えておきましょう。
さらに、茎の量もチェックすべきポイントです。基本的に紅茶の製造過程では茎は取り除かれるもので、意図的に残すことはほとんどありません。茎が多いということは、摘採から選別に至るまで管理が行き届いていない証拠であり、安価な低級茶である場合が多いのです。茎自体は緑茶やほうじ茶では甘みを加える役割もありますが、紅茶ではそうした利点はほとんどありません。茎が多いほど、流通や保管の質も推して知るべし、と考えてよいでしょう。
一方で、ダージリンなどの高級な農園物であれば、茶葉が美しく撚られているものを選ぶことで繊細な風味に出会える確率が高まります。手摘み・手揉捻による伝統的な加工の特徴が表れているのです。

パッケージや保管状況を見る
次にパッケージを観察してみましょう。華やかで凝った装飾が施されたものは、見た目に力を入れるあまり肝心のお茶の質が伴っていない場合が少なくありません。経験上、密封されていることを前提に、むしろ簡素なパッケージの方が美味しい茶葉に出会える確率が高いといえます。旬の紅茶のように鮮度が命のものは、とにかく早いパッケージングが求められるため、結果的に質素な外装になることも多いのです。
もちろん、可愛らしい見た目のパッケージは贈り物として魅力的ですが、実際には「お茶を贈る」というより「パッケージを贈る」状態になりがちです。その場合、中身が飲まれずに放置されたり、最悪の場合は廃棄されてしまうこともあります。そうなれば渡した側も受け取った側も残念な気持ちになってしまうでしょう。お茶という嗜好品をプレゼントに選ぶ際には避けて通れない課題のひとつです。特にお茶マニアのこだわりはワイン愛好家にも匹敵するほど強く、見た目より中身で勝負する方が確実に喜ばれます。
さらに、店の保管状況も確認しましょう。アルミ袋に窒素を充填し、酸化を極力防いでいるものであれば問題は少ないですが、量り売りの茶葉は酸化が進んでいることが多く、衛生面でも不安が残ります。ある専門店では、香りを試すために大きな缶の蓋を開け、客の鼻先に差し出している様子をよく見かけますが、その近くで会話している人の唾液や飛沫の影響を考えると、購買意欲がそがれるのも無理はありません。
まとめ
紅茶を選ぶうえで本当に大切なのは、華やかなブランド名や見た目ではなく、鮮度・茶葉の状態・保管方法の三点です。
茶葉は収穫直後から少しずつ劣化が始まり、酸化や湿気、光の影響で香りや味わいが失われていきます。だからこそ、茶葉の見た目や香りを確認し、茎の少なさや撚りの美しさから品質を見極めること、さらにパッケージや店の保管環境に目を配ることが、美味しい一杯に出会う確率を大きく高めます。
紅茶は嗜好品であると同時に、鮮度が命の農産物。選び方と扱い方次第で、その魅力を存分に味わえるかどうかが決まるのです。


