ついにDACの世界へ──FOSTEX HP-A7レビュー

テック&ガジェット
この記事は約5分で読めます。

オーディオの世界に足を踏み入れると、多くの人が同じルートを辿ります。

まずは良いヘッドフォンを手にし、そこで「もっと良い音で鳴らしたい」という欲求が湧き上がります。すると自然にDAC(デジタル・アナログ・コンバータ)やヘッドフォンアンプに目が向いてしまうのです。

私もその一人でした。

ゼンハイザーの名機 HD650 を購入し、浮かれ気分で秋を迎えたものの、ネットで情報を探すうちに「このヘッドフォンはアンプで本領を発揮する」との声を何度も目にしました。しかも、HD650はインピーダンスが高く、安価なアンプでは力不足だという意見も多く見られました。そこで候補に挙がったのが FOSTEX HP-A3。価格は3万円前後で、コストパフォーマンスに優れた複合機として定評がある製品です。

しかし、休日にオーディオ専門店を訪れた私は、数時間後には上位機種HP-A7を抱えて帰宅していたのです。

コスパ抜群のHP-A3を買いに行ったつもりが

当初は冷静にHP-A3を検討するつもりでした。ところが、専門店での視聴体験が私の判断を大きく揺さぶりました。HD650を繋ぎ、数枚のCDを聴き比べてみると、確かにHP-A3でも十分に良い音がします。ところが、A7に切り替えた瞬間に広がる音場、見通しの良さ、楽器の分離感が明らかに違いました。

「ヘッドフォンに近い金額をアンプに投じるのはどうなのか?」

そんな疑問は一瞬で吹き飛び、気がつけばクレジットカードを差し出していたのです。

asd

HP-A7は視聴したときより音質が良い

これまでの経験からすると、専門店での試聴は往々にして「夢の音環境」でした。

専用のクリーン電源や高級なケーブル、さらには部屋そのものが音響に最適化されており、帰宅すると「なんだか違う」と落胆することも少なくありませんでした。

ところが、HP-A7は逆でした。

むしろ家で聴いたときのほうが素晴らしく感じたのです。理由はシンプルで、DAC性能が非常に優れていたからです。ヘッドフォンアンプ部分は正直に言えば「少しクリアになったかな?」程度でしたが、DACとしての実力は圧倒的で、音楽の楽しみを根底から変えてくれました。

具体的には、

  • 10万円前後の単体CDプレーヤーよりも楽器の生々しさを感じられる

  • ドラムの定位やボーカルの立ち位置が明確に浮かび上がる

  • 弦楽器やギターの響きが自然で伸びやかに広がる

まるで「目の前で演奏されている」と錯覚するほどの臨場感に心を打たれました。


HP-A7andHD650mini

ONKYO SE-200PCI LTDとの比較

私は以前からPC用サウンドカード ONKYO SE-200PCI LTD を愛用していました。こちらも高評価を得ている製品です。

両者を比較すると、

  • SE-200PCI LTDは低音がどっしりと安定し、全体的に重心の低い音を聴かせる

  • HP-A7は中高域の解像度が高く、楽器のニュアンスを瑞々しく表現する

「音の重厚さ」ならオンキヨー、「音楽の楽しさ」ならフォステクス。そう感じさせる対比でした。


DACとしての真価:豊富なデジタル入出力

HP-A7の魅力のひとつは、その入出力端子の豊富さです。

それまで私にとってケーブルといえば、せいぜいアナログRCAや映像用コンポジット端子くらいの認識でした。しかし、光デジタル(S/PDIF)、同軸デジタル、さらにはUSB接続の恩恵を受けて初めて「デジタル伝送のありがたさ」を体感しました。

PC、CDプレーヤー、PS3、DVDプレーヤーなど、あらゆる機器を繋ぎっぱなしにして、セレクターひとつで切り替えられる利便性は格別です。音質はもちろん、日常的な操作性まで大きく変えてくれました。

HP-A7backpanelsetu

ヘッドフォンアンプとしてのHP-A7

本来HD650を高音質で再生するために導入したのですが、正直に申し上げるとヘッドフォンアンプ部分の劇的な進化はあまり感じられませんでした。

「ややクリアになったかな?」程度で、プリメインアンプのヘッドフォンジャックとの差をブラインドテストで見抜けるかどうかは疑問です。

ですので、もし本格的にヘッドフォンアンプを追求するなら、DACと分離して専用アンプを導入する選択肢もあるでしょう。しかし、それはさらなるオーディオ沼に足を踏み入れることを意味します。私はあえてそこで立ち止まることにしました。


ONKYO ND-S1との組み合わせ

HP-A7を導入してわずか数日後、さらにもう一台機材を追加してしまいました。

それが ONKYO ND-S1 です。

iPodやiPhoneを差し込むだけで、同軸デジタルや光デジタル出力を可能にするDDC(デジタル・デジタル・コンバータ)。これをHP-A7と組み合わせることで、iTunesライブラリの音源までもが鮮やかに蘇りました。ストリーミング全盛の時代にあっても、この手軽さと高音質は大きな魅力です。


総合評価と結論

HP-A7は、ヘッドフォンアンプ単体として見れば決して最強ではありません。しかし、DACを中心に据えた複合機としては非常にバランスが取れており、7万円という価格に十分見合う価値があると断言できます。

  • DAC性能は、10万円級の単体プレーヤーに匹敵する

  • 豊富なデジタル入出力で機器を自由自在に繋げる

  • HD650のポテンシャルを引き出し、音楽の楽しさを再発見できる

ネット上では賛否両論ある製品ですが、私にとっては「沼に進むための一歩」ではなく、「音楽を心から楽しむための伴走者」となりました。

オーディオは終わりのない旅です。ですが、HP-A7は確実に私の音楽生活を豊かにしてくれた一台でした。

タイトルとURLをコピーしました