大人のためのファイファイコンポーネント PDX-Z10 ― デザインと実用性の狭間で

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かつてオーディオといえば、巨大なスピーカーと重厚なアンプを備えた「ピュアオーディオ」の世界が主流でした。しかし2000年代以降、iPodやPCオーディオ、そしてネットワーク再生の普及とともに、コンポーネントは新しい形を模索するようになりました。

その中で登場したのが ファイファイコンポーネント PDX-Z10。メーカーが掲げるコンセプトは「自分らしく、心地よく、こだわる音楽ライフのための新世代コンポーネント」。インターネットラジオ、DLNA、ネットワーク再生、iPod接続など、当時としてはマルチメディア機能を網羅した意欲作でした。

確かにデザインは画期的で、初めて目にすると「これはただのコンポではない」と思わせる存在感があります。しかし実際に使ってみると、その印象は大きく揺れ動きます。


外観と基本デザイン

まず筐体のサイズ。厚みこそ薄いものの重量はしっかりあり、置き場所は一般的なプリメインアンプ並みに確保する必要があります。前面パネルは徹底的にシンプル化され、左下に電源ボタン・USB入力・ライン入力・ヘッドフォン端子がまとめられています。ボタン類は電源スイッチのみで、その他の操作はすべて中央のボリューム上に配置された静電式タッチセンサーで行う設計です。

見た目には未来的でスタイリッシュ。しかし実際には誤操作が多発。曲送りや停止、CDエジェクトがすべて隣接したタッチセンサーに割り振られており、ちょっと触れただけで意図しない操作が走ってしまう。人間工学的にはかなり無理がある配置と言わざるを得ません。


機能性と拡張性

PDX-Z10は拡張性が豊富で、ライン入力は2系統、さらにフォノ入力まで備えています。スピーカー端子には高品質なパーツが採用され、見た目にも高級感があります。ピュアオーディオの流れを汲むだけあって、大型スピーカーを十分に鳴らす駆動力も備えています。

ただし前面USB端子の配置は疑問が残ります。これほど徹底してフロントパネルをミニマルに仕上げているのに、どうしてUSBだけを前に出したのか。背面に配置すれば見た目も機能性もさらに洗練されたはずです。

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また、前モデルX-Z9では専用iPodドックを1万円以上で別売りしていたにもかかわらず、本機ではあっさりとUSB接続に対応。ユーザーからすれば「最初から対応できたのでは?」という思いが残ります。カメラ業界がファームアップで古い機種にも新規格対応を提供するのとは対照的に、オーディオ業界では「新機種優先」で既存ユーザーが置き去りにされがちです。


操作性という大きな壁

最大の不満は操作性にあります。付属リモコンは質感こそ高級感がありますが、実際の操作はストレスの連続。iPodを操作しようとするとカーソルが遅く、反応ももっさり。目的の曲にたどり着くまでにイライラが募ります。

さらにワイヤレス接続を実現する別売りアダプター(AS-BT100)は1万円前後と高額ながら、ペアリングに毎回コード入力が必要。iPod touchやiPhone4で試しても同じ挙動で、これが仕様なのか不具合なのか判断もつかない。しかも接続後の音質は劇的に劣化。まるで代車のカーラジオを聴いているようなレベルで、「これで高音質設計を謳うのはどうなのか」と疑いたくなる出来栄えです。

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ONKYO、DENON、YAMAHA、marantzといった王道メーカーのプリメインアンプに触れていると、PDX-Z10の操作性の悪さが際立ちます。「良い音を出す以前に、快適に操作できることがいかに重要か」を再確認させられる瞬間です。


音質面の評価

では肝心の音はどうか。Bluetooth接続は例外として、USBやCD再生時の音質は比較的フラットで素直。低域や高域が突出することなく、ピュアオーディオらしい落ち着きがあります。大型スピーカーを駆動できる力があるため、「これ1台でCDからネットワーク再生まで済ませたい」という人には一定の魅力があります。

ただしイコライザ機能を使うと一転、廉価ミニコンのようなドンシャリ傾向に変貌。ライブ感を演出するプリセットもありますが、「一体何を目指しているのか」と首をかしげたくなる仕上がりです。前モデルZ9のように専用スピーカーと組み合わせて販売すれば、もう少し明確な方向性が出せたかもしれません。

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製品ポジションの曖昧さ

PDX-Z10は団塊世代をターゲットにしたと言われています。確かにデザイナーズ家具のような外観は、リビングに置いたときの存在感や所有欲を満たしてくれるでしょう。ところが実際の操作性や機能面ではせっかちな人、実用性を求める人にはストレスの方が大きい。

結果として「高機能・高デザイン・中途半端な使い勝手」という、やや宙ぶらりんな立ち位置になってしまっています。

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総評 ― 相性を見極めるべき一台

Z9から続くシリーズと長く付き合ってきた筆者ですが、PDX-Z10に関してはどうしても好きになれない部分が多い。硬くて大きな箱を前にして音楽を聴いていると、どこか落ち着かない。もちろん音質自体は悪くありませんし、デザインも先進的。しかし「日常的に触れる製品」として考えたとき、相性の悪さを強く感じます。

結論としては、ネット通販で安易に購入するのは避けるべき。必ず実機を前にして、操作感や相性をしっかり確かめてから選ぶことをおすすめします。

 

 

 

 

 

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