【特集】ZRX1200 DAEG インプレッション ― 受け継がれる正統派ネイキッドの魅力

クルマ
この記事は約10分で読めます。

ZRX1200 DAEG(ダエグ)のフォトレビュー&インプレッション

今回は、カワサキが誇る伝統的なネイキッドモデル「ZRX1200 DAEG(ダエグ)」をご紹介します。発売から早くも5年が経ちましたが、現在ではカワサキ唯一の正統派ネイキッドとして存在感を放っています。

カワサキの大型バイクの主力は、Z1000やNinja1000といった北米やヨーロッパ市場を意識したデザイン・性能を持つモデルへとシフトしています。そのなかで、昔ながらのオーソドックスなスタイルを守り続けているのは、DAEGとW800のみとなりました。

DSC_0081

ゼファー750・1100やZRX1200といった往年の名車で育ってきた私にとって、DAEGが今もラインナップに残っているのは非常に嬉しいことです。今回は、そのなかでも2014年に登場した特別仕様「Black Edition」の試乗インプレッションをお届けします。

DSC_0095

過去のZRXシリーズとGPZ900Rを意識したカウル

新しいクリアレンズのマルチリフレクターヘッドライトとともに、このバイクの顔となっているのがZRX特有のフロントカウルです。かつてはZRX-2という丸型ライト仕様のモデルもありましたが、このカウルを見れば「おっ、ZRXだな」と気づくライダーも多いはずです。

ダエグでは、そのデザインがさらに進化。往年の名車GPZ900Rのフロントマスクを取り入れたことで、伝統と新しさが融合した美しいスタイルに仕上がっています。ネイキッドらしい骨太な雰囲気の中に、カワサキの歴史が息づいていると感じられるポイントです。

燃料タンク容量は従来と同じ18Lを確保し、シャーシなど基本構造の多くもZRX1200Rと共通。ただし、大きな違いはキャブレター仕様からインジェクション仕様へと進化した点です。これにより冷間時の始動性が改善され、燃費も向上しました。

DSC_0107

ダエグは完全な日本国内仕様として設計されており、メーターは180km表示。ミッションのギア比も国内の道路環境に合わせたクロスレシオとなっています。

性能面では、ZRX1200Rの最高出力95馬力から15馬力アップの110馬力へと進化。最大トルクも10.9kgmに向上しました。もちろんフラッグシップのZZR1400には及ばないものの、公道を走るうえでは十分すぎるパワーを備えています。日常からワインディングまで、ライダーに余裕ある走りを約束してくれる仕上がりです。

特別仕様としてカラーリングとシートの変更

「ブラックエディション」の最大の特徴は、随所に施されたブラックの統一感です。

従来はメッキ仕上げだったインジェクションカバーなどもブラックで塗装され、精悍で引き締まった印象に仕上がっています。

また、シートは旧車を思わせるタックロールシートを採用。これまでのDAEGはレーシーでシンプルな雰囲気が強調されていましたが、タックロール化によってクラシカルなネイキッドらしい印象が加わり、往年のファンにはたまらない仕上がりとなっています。

DSC_0112

エンジンカバーとラジエーターはリンクル塗装

エンジンカバーやラジエーターは、通常のブラック塗装やヘアライン仕上げではなく「リンクル塗装(チヂミ塗装・結晶塗装とも呼ばれる)」に変更されています。高温で圧着するこの塗装は強度が高く、熱を帯びるパーツでも色褪せにくいのが特徴です。

さらに、角度によって光の反射が変化し、社外パーツのような独特の存在感を放ちます。純正でありながらカスタム車のような仕上がりを楽しめるのも、このブラックエディションならではの魅力といえるでしょう。

DSC_0134

巨大な純正マフラー+エキパイ

排気系パーツは従来よりも大型化され、1200Rと比べるとより滑らかで丸みを帯びた形状となっています。従来は「ノーマルマフラー=野暮ったい」という印象がありましたが、ダエグの純正マフラーは造形美があり、十分に“魅せられる”デザインといえるでしょう。

排気量1200cc、1気筒あたり300ccという大排気量を支えるため、エキパイも極太。まさにビッグバイクらしい存在感と満足感があります。ただし、音量はしっかり抑えられているため、80〜90年代の旧車サウンドに慣れたライダーからするとやや物足りなさを感じるかもしれません。

インジェクション仕様に移行してからは、認定証が付いていない社外マフラーが一切使用できなくなり、車検規制も厳格化されました。そのため、往年のZRXの血統を感じさせる「Z1000R+カーカーのメガホンマフラー」といった組み合わせを再現できないのは少し寂しいところです。

もっとも、ヨシムラやツキギといった老舗メーカーからは手曲げマフラーなどがリリースされており、純正では物足りないライダーにとっては交換という選択肢も十分にあります。カスタムの余地が残されている点も、ZRX1200 DAEGの楽しみのひとつといえるでしょう。

DSC_0115

ダエグのホイールは、なんとZZR1400と共通仕様。従来のシンプルな3本スポークから一新され、社外品を思わせる凝ったデザインとなっています。スポークが細身になったことで足元が引き締まり、スポーツ感を強く演出しています。

フロントブレーキは、従来の6ポッドから4ポッドへ変更。さらにディスクはウェーブ形状となり、見た目の迫力だけでなく放熱性や軽量化にも貢献しています。足回りの細かな変更点を見ると、カスタム市場で人気のある社外パーツを意識した作り込みが随所に感じられます。もしかすると、将来的には純正でブレーキホースがステンメッシュ化されるのでは……と思わせるほどのこだわりです。

ブレーキキャリパーが6ポッドから4ポッドに戻された点については、制動力に不足はなく、タッチや容量も十分。もし好みに合わなければ、ブレーキパッドを交換するだけでフィーリングを調整できる余地も残されています。

DSC_0097

ZRXといえばフトコロ(車載容量)の大きさ!

ZRXシリーズといえば、忘れてはならないのがシート下の車載容量。

私自身、かつて400ccのZRXに乗っていたことがありますが、地味に感動したのがこの収納力でした。スクーターと比べるのはさすがに酷ですが、同じネイキッドバイクの中で比較すると驚くほど広いスペースが確保されています。

DSC_0135

このダエグも例外ではなく、シート下にはしっかりとした容量があります。試しにニコンD600(一眼レフカメラ)をはじめ、財布、タオル、工具などを入れてみましたが、問題なく収まりました。ちょっとしたツーリングや撮影に出かける際でも安心できる収納力です。

※カメラは精密機械なので、そのまま走行しないでくださいね!

さらにシート後方には、車検証や書類を入れる浅めのスペースも用意されています。大きな荷物には向きませんが、ちょっとした小物を入れるには十分。ちなみにこの下にはヒューズボックスがあるので、電装系に不具合が出たときには覚えておくと便利です。

DSC_0138

パニアケースを付けなくても、ある程度の荷物が積める――これもダエグの隠れた魅力のひとつ。ネイキッドでありながら実用性もしっかり備えている点は、長く付き合えるバイクとして大きなポイントだと思います。

ダエグの走行性能

気になるダエグの走行性能ですが、その完成度は非常に高いものです。比較対象はどうしても昔のカワサキ車になりますが、ゼファー750や1100と比べると雲泥の差。20年分の進化を如実に感じさせてくれます。

ボディ剛性は高く、加速は滑らかで、ブレーキの制動力も強力。コーナリング性能も素直で、あらゆる面で従来のネイキッドより数段上の仕上がりです。

DSC_1230

スズキのGSX1400(青白カラーのモデル)にも乗った経験がありますが、キャブ仕様だったこともあり「ガツン」と蹴られるような加速感が特徴でした。一方、インジェクション化されたダエグは加速が非常にスムーズで、速さを感じつつも扱いやすさがあります。コーナリングではダエグの方が安定感があり、理想のラインをきれいにトレースできる素直なハンドリングを見せます。

かつてのゼファー1100のように「頑固で曲がらない」カワサキとはまるで別物。体重を強く預けなければ曲がらなかった時代から比べると、ダエグは圧倒的に進化しています。

さらに、スポーツ走行を楽しみたいならGPR-α13などのハイグリップタイヤを履かせることで、より高度な走行も可能。サスペンションやフロントフォークはプリロード調整に対応しており、タイヤや体重、ライディングスタイルに合わせてセッティングできる点も嬉しいところです。

唯一気になるのは燃費。まだ慣らし運転中(5000回転以下)ながら、リッターあたり12km程度でハイオク仕様。やや燃費は悪めですが、それも「カワサキらしさ」と割り切れば納得できる範囲でしょう。

総評

総じて、ZRX1200 DAEGは非常によく出来たバイクです。旧車乗りからすると少し物足りなさを感じるかもしれませんが、新車で購入して長く付き合うには最適な一台といえるでしょう。シンプルな構造ゆえに飽きが来ず、末永く楽しめる点も魅力です。

個人的に強く思うのは、ゼファー750は人気でありながら規制によって突然消えてしまい、ゼファーχやZRX400も惜しまれつつ絶版となったことです。バイク人口が減少し、各メーカーが輸出市場を意識したモデルにシフトする中で、ダエグのようにオーソドックスなスタイルを守る大型ネイキッドが現行で販売されているのは非常に貴重なことだと思います。(その点、ホンダが旧車然としたスタイルをあえて新車で投入したCB1100を出しているのも特筆すべきでしょう。)

つまり、熱心なカワサキ乗りにとって、このスタイルを持つネイキッドを“新車で”手に入れられるのは、そろそろラストチャンスかもしれません。ゼファーやZ2のような往年のモデルが再販される可能性もありますが、そのまま次世代のデザインへ移行してしまう可能性も高いのです。

カワサキの「このスタイル」が好きなら、迷わず早めに手に入れることを強くおすすめします。扱いやすく素直な特性を備えたダエグは、誰にでも安心して薦められる一台です。

ZRX1200 DAEG スペック
メーカー名 カワサキ
型式 EBL-ZRT20D
車両重量 246 kg
乾燥重量
全長×全幅×全高 2150 mm × 770 mm × 1155 mm
車種名 ZRX1200 DAEG ブラックリミテッド
総排気量 1164cc
定地燃費 25.8 km/L ( 60 km/h走行時)
メーカー希望小売価格(東京地区) 1,160,250 円
スペック
エンジン
型式 ZRT20AE
エンジン型式 水冷4ストローク・並列4気筒DOHC4バルブ
総排気量 1164cc
圧縮比 10.1
内径(ボア) 79.0 mm
行程(ストローク) 59.4 mm
燃料供給方式 インジェクション
キャブレター形式 フューエルインジェクション
点火方式 電子進角式トランジスタ
潤滑方式 ウエットサンプ
始動方式 セルフスターター
エンジンオイル容量 3.5 L
燃料タンク容量 18 L
性能
最高出力 81 kw (110 ps) / 8000 rpm
最大トルク 107 N・m (10.9 kg・m) / 6000 rpm
最高速度
燃費 25.8 km/L ( 60 km/h走行時)
最小回転半径 2.7 m
車体関係
フレーム形式 ダブルクレードル
キャスター 24 度 / 30 分
トレール 100mm
タイヤサイズ(前) 120/70-ZR17M/C 58W
タイヤサイズ(後) 180/55-ZR17M/C 73W
ホイールトラベル(前) 115
ホイールトラベル(後) 122
ホイールサイズ(前) J17M/C×MT3.50
ホイールサイズ(後) J17M/C×MT5.50
ブレーキ(前) デュアルディスク310mm(外径)
ブレーキ(後) シングルディスク250mm(外径)
懸架方式(前) テレスコピック(インナーチューブ径43mm)
懸架方式(後) スイングアーム(オイルショック)
ステアリングアングル(右) 38
ステアリングアングル(左) 38
変速機
クラッチ形式 湿式多板
変速機形式 常噛6段リターン
変速比 1速 2.733
2速 1.947
3速 1.590
4速 1.333
5速 1.153
6速 1.035
1次減速比 1.615
2次減速比 2.444
無段変速車変速比

DSC_1214

タイトルとURLをコピーしました