ニコンSB-700 レビュー&使い方
2010年11月の発売から、すでに5年が経ちました。
編集部では現在、SB-700を3台と、ワイヤレススピードライトコマンダー「SU-800」を1台所有しています。
使用頻度が非常に高く、屋外・屋内問わず現場で酷使した結果、1台が故障してしまいました。そのため、新たに1台を買い直すことになり、改めて本製品を紹介したいと思います。
なお、上位モデルとして「SB-910」も存在します。確かに性能面ではSB-910のほうが優れていますが、操作系がまったく異なるため、慣れ親しんだSB-700を選びました。
ニコン基本のクリップオンストロボ
まさに、ニコンの「基本形」と言えるクリップオンストロボがこのSB-700です。
「首振り」とも呼ばれる、発光部(フラッシュ部分)の角度を自在に変えられる点が、最大の特徴です。
これにより、カメラ本体に内蔵されている「内蔵ストロボ」とはまったく異なる写真表現が可能になります。
いわゆる「バウンス撮影」にも対応しており、フラッシュの向きをカメラのレンズとは異なる方向──極端な話、レンズとは真逆の背面にある壁にまで光を反射させることができます。
ホットシューにセットするだけで完了
ニコンの一眼レフカメラには、ほとんどの機種に「ホットシュー」が装備されています。
SB-700はこのホットシューに差し込み、「L」の位置までロックすれば準備完了です。
なお、他社製の一眼レフカメラでも一応使用可能です。ただし、自動調光(TTL)などの機能は動作しないため、すべて手動での設定が必要になります。
その後は、カメラ本体とストロボ本体の電源をONにすれば、約1秒ほどで撮影可能な状態になります。
外観はかなり大型で、フルサイズ機の「D1桁」ボディに装着すると、全体の印象も非常に大きくなります。
たとえばD4にSB-700を装着した場合、合計重量は約1,780gにもなります。
さらに大型のレンズを装着すれば、総重量は軽く2kgを超えるでしょう。
D1桁のボディにはフラッシュが内蔵されていませんが、これはプロが外付けストロボの使用を前提としているためです。
さらに本格的な運用では、外部電源を接続することで、ストロボを安定して連続発光させるセッティングが行われることもあります。
SB-700の最大の特徴は首振り
SB-700の最も大きな特徴は、発光部を回転・可動させられる「首振り」機構にあります。
写真のように、360度ほぼ自由な方向に向けることが可能です。
さすがに真下には向けられませんが、レンズの水平よりも上の角度であれば、真上・真横・真後ろなど、自在に発光方向を設定できます。
これにより、光をコントロールして、被写体や空間に応じた最適なライティングが可能になります。
「首振りバウンス撮影」がなぜ重要なのかについては、次のページで実際の作例とともに詳しく解説します。
なお、SB-700を内蔵ストロボと同じように正面発光で撮影すると、以下のような結果になります。
ストロボの光はとても強いため、明るく撮影することはできますが、強い光を直接被写体に当ててしまうと、「エグさ」が出てしまい、かえって写真が汚く見えることがあります。
せっかくのフォートナム・アンド・メイソンの可愛らしい紅茶缶も、そんな強烈な直射光のせいで台無しになってしまいます。
ところが、ストロボの首を振ってバウンス撮影を行うと、写真の印象はまったく変わります。
どうでしょう?
まるで肉眼で見たときのような、自然で柔らかい光に変わっているのがわかるはずです。
この写真、実は夜の暗い室内で撮影されたものなのですが、そうは思えないほど自然な雰囲気ですよね。
これは、SB-700の発光部を真上(天井方向)に向けてバウンス発光させた作例です。
ただ、細かく見ると、紅茶缶の上にある「板」が影になってしまっており、さらに缶の天蓋部分が背景の布(クロス)に反射して写り込んでいます。
では、次の写真では「板の影」と「缶の反射」に注目して見てみましょう。
どうでしょうか?
先ほど気になっていた「板の影」や「缶の反射」が、しっかり抑えられているのが分かります。
これは、SB-700の発光部を背後の壁に向けてバウンス発光させた例です。
このように、発光の角度を変えることで、影の出方を自在にコントロールすることができます。
まさに、バウンス撮影の恩恵と言えるでしょう。
どうでしょう?
一気に雰囲気が変わり、被写体の持つ空気感や世界観が引き立ってきます。
フォートナム&メイソンのオリエンタルでクラシックな雰囲気にもよくマッチしていますね。

このように、発光の角度を変えるだけで、写真の雰囲気はガラッと変わります。
たとえば、女性モデルを撮影するポートレートでは、被写体に強い光を直接当てるのはNGとされています。
そんなときは、バウンス撮影を活用することで、柔らかく自然な光に変わり、美しく撮影することができます。
さらに応用として、白いレースのカーテンに向けてフラッシュを当てれば、
まるでシルクのように柔らかく拡散された光を得ることができます。
また、青いカーテンに向けて発光すれば、写真全体に青みがかかるなど、
ストロボを使った色味や影の演出は実に多彩です。
白いキャップや半透明プレートは、光を拡散(ディフューズ)するアイテム
SB-700に付属している白いキャップやカラーフィルターは、光を柔らかく拡散させるためのアクセサリーです。
特に、屋外などでバウンスさせる壁や天井がない環境では、被写体に直接光を当てなければならない場面が多くなります。そういったときに、これらのディフューザーが非常に役立ちます。
また、内蔵されている**白いプレート(キャッチライトカード)**は、簡易的なバウンス撮影に使ったり、光の方向を微調整したいときに便利です。
バウンス撮影の際、この白いプレートがわずかに前方へ光を反射させることで、天井からのバウンス光と直接光のバランスが取れたライティングになります。
さらに、大きな面積で光を拡散するための専用アイテムも市販されています。
空気を入れて膨らませるバルーン型ディフューザーや、写真のような半透明のハンペン型ソフトボックスなど、種類はさまざまです。
ただし、手元にそうした専用品がない場合でも、工夫次第で代用できます。
たとえば、コンビニの白いビニール袋を膨らませてストロボの前に被せるだけで、光が柔らかくなり、即席のディフューザーとして使えます。
写真撮影においては、「専用の機材を使わなければならない」という決まりはありません。
その場の状況に合わせて、身近なものを活用し、きれいな写真が撮れることが何より大切なのです。
カラーフィルターのオレンジとグリーン
「これは何に使うの?」と思う方もいるかもしれません。
カラーフィルターは、ただ演出効果のために色を変えるだけのアイテムではありません。
基本的には、ストロボの光の色温度を、撮影環境の照明と合わせるために使用するものです。
■ オレンジフィルターの使い方
オレンジは、**暖色系の照明が使われている部屋(例:バー、カフェ、自宅の電球色照明など)**で使用します。
このような場所で、真っ白なストロボ光をそのまま当ててしまうと、**照明の黄色とストロボの白色が混ざって、汚い「ミックス光」**になってしまいます。
たとえば、バースデーパーティでろうそくの光だけで撮影したい場合、オレンジフィルターを装着すると、
まるでストロボを使っていないかのような自然な雰囲気で撮影できます。
■ グリーンフィルターの使い方
グリーンは、意外かもしれませんが蛍光灯の部屋で使います。
蛍光灯の光は青みがかっているため、その中でストロボを炊くと、色温度が合わずに肌が赤っぽく写ってしまうことがあります。
そこで、ストロボの光にグリーンを加えることで、青みの強い蛍光灯とバランスを取り、中和するのです。
これによって、事務所やオフィスのような青白い部屋でも自然なライティングでモデル撮影が可能になります。
リモート撮影にも使える超便利な機種
SB-700の何がすごいかと言えば、リモート撮影にも対応している点です。
写真のようにスタンドに立たせて使うのは、「部屋に飾っておくため」ではありません!
たとえば、もう1台SB-700を用意すれば、プロがよく使う「多灯撮影」が可能になります。
2台を仮に「A」「B」と名付け、それぞれを別々の場所に設置し、任意の光量で発光させることができるのです。
本来は専用の「リモートコマンダー」という機材が必要ですが、SB-700は**1台をカメラに装着して「マスター」に設定することで、もう1台を赤外線で「スレーブ発光」**させることが可能です。
この赤外線通信は、テレビのリモコンのような仕組みに近く、イメージとしては簡易的な無線通信と考えてもよいでしょう。
おおよそ3〜5メートルの範囲であれば、ストレスなく動作します。
たとえば、1台はカメラに装着して天井バウンス用として使用し、もう1台は人物の背後に設置して後ろからのライティングに使う、といったことも可能。
まさに、光を自由自在にコントロールできるというわけです。
その際に便利なのが、付属のスタンドです。家具の上に置いたり、底部のネジ穴を使って三脚に取り付けたりと、さまざまな設置方法に対応しています。非常に使い勝手がよく、リモート撮影の幅を広げてくれます。
【裏技】アンブレラホルダーで、SB-700をスタジオ仕様に!
ちょっとした裏技的な使い方として、Amazonなどで販売されている**「アンブレラホルダー」を使えば、SB-700のようなクリップオンストロボを、まるでモノブロックストロボのように**活用することができます。
このホルダーには、アンブレラ(撮影用の傘)を挿し込む穴と、三脚に取り付けるためのネジ穴が備わっています。
価格はなんと950円(送料無料・執筆時点)!
プロ用のモノブロックストロボ(例:コメット製)でライティングを組もうとすると、10万円を超えるのは確実ですが、SB-700をうまく組み合わせれば、簡易的なスタジオ撮影もギリギリ可能です。
実用上の注意点
もちろん、SB-700は電源容量が限られており、冷却性能も高くないため、連続発光には向きません。
しかし、物撮りや簡単なポートレート撮影であれば、十分に実用的です。
実際に筆者は、SB-700を5年間使い、1万枚以上を撮影していますが、プラスチック製とは思えないほどタフな印象です。
プロが使っても「便利だなぁ」と感じる機種ですし、SB-910であればさらに安定性が高まります。
耐久性と注意点
ただし、ハードに使い続けると、少しずつ劣化が現れるのも事実です。
たとえば:
-
測光用のプレ発光が不安定になる
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カラーフィルターを装着していないのに誤認識する
といったトラブルが出始めます。
とはいえ、丁寧に使えばそう簡単に壊れることはありません。
価格はわずか約3万円で、これだけの性能が得られるのは驚異的です。
コストパフォーマンスの高い一台と言えるでしょう。
















