秋の夜長にもう一度――「銀河鉄道の夜」を味わう3つの方法

コラム
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こんにちは。夜もだんだん長くなり、秋の深まりを感じる今日この頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

秋といえば「読書の秋」。子どもの頃、夜の静けさの中で本を開いた記憶をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

そんな読書の秋にぜひ思い出していただきたいのが、宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜』です。少年時代に親しんだ方も多く、今なお世代を超えて読み継がれる文学作品のひとつ。岩手出身の賢治が描いたこの物語は、孤独な少年ジョバンニと友人カムパネルラが銀河鉄道に乗り込む幻想的な旅を通して、「ほんとうの幸い」とは何かを私たちに問いかけます。

けれど、原作を読んだきりで記憶がぼんやりしている方もいらっしゃるかもしれません。そんなときは、活字だけではなく、映像や音声を通じて「銀河鉄道の夜」を新しい角度から味わってみてはいかがでしょうか。今回は、名作を異なる形で体験できる三つの作品をご紹介します。


劇場アニメ『銀河鉄道の夜』(1985)

「銀河鉄道の夜」のメディアミックスといえば、まず思い浮かぶのが1985年に公開された劇場アニメ版でしょう。漫画家・ますむらひろしによる擬人化された猫キャラクターを原案に、ジョバンニやカムパネルラたちが“猫”として登場するユニークな映像作品です。

監督は杉井ギサブロー。『鉄腕アトム』や『タッチ』など数々の名作アニメを手がけた人物でありながら、この作品では子ども向け映画でありながらも全編に影を落としたような雰囲気を漂わせ、夢と現実の狭間を揺らめくような不思議な時間を演出しています。

忘れがたいのが、エンディング。常田富士男による朗読「春と修羅」序章とテーマ音楽が重なる瞬間、映画を見終えた私たちは喪失感と寂寥感に包まれます。まるでジョバンニとともに夢から醒めたあと、現実に取り残されたような感覚になるのです。

また、堀絢子演じるザネリの「ラッコの上着が来るよ」というセリフの小憎らしい響きも印象的。原作にない場面やアレンジも多く、賢治の世界を新しい視点で再解釈した意欲作といえるでしょう。


プラネタリウム番組『銀河鉄道の夜 -Fantasy Railroad in the Stars-』(2006〜)

もしあなたが映像体験で“星空”を全身に浴びたいのなら、KAGAYA Studioが制作したプラネタリウム番組『銀河鉄道の夜』がおすすめです。2006年に池袋の「サンシャインスターライトドーム満天」で初上映され、観客動員数100万人を突破。その後も全国各地で上映され、DVDとしても親しまれています。

プラネタリウムのドームいっぱいに広がるCG映像は、一般的な3D映画を凌ぐ圧倒的な臨場感。冒頭の学校のシーンから、銀河鉄道が駆け抜ける宇宙の野原、あかあかと燃えるサソリの星、天上に輝くサザンクロス……。画面の一つひとつが緻密に描き込まれており、目が二つしかないことを悔やむほどに視覚的な情報量に圧倒されます。

上映当初は室井滋がナレーションを務め、現在全国上映版では宮沢賢治と同郷の声優・桑島法子がその役を担っています。声と映像の調和が、観客を銀河鉄道の旅へと誘い、星空の下で読む原作とはまた違った感動を与えてくれるでしょう。

プラネタリウムに足を運んだことがない人でも、この番組が上映されているならぜひ体験してみてください。秋の夜にふさわしい贅沢な時間になるはずです。


星海社朗読館『銀河鉄道の夜』第9章「ジョバンニの切符」(2010)

最後にご紹介するのは、耳で楽しむ『銀河鉄道の夜』。2010年にUstreamで配信された「坂本真綾の満月朗読館」の第一夜作品です。

坂本真綾といえば、声優としてナタリー・ポートマンの吹き替えやミュージカル『レ・ミゼラブル』でエポニーヌ役を演じた経験を持つ多彩な表現者。その透き通るような声で朗読される「ジョバンニの切符」は、原作テキスト以上に純朴で儚い響きを帯びています。

抜粋されているのは第9章。双子座の宮を過ぎ、ジョバンニが現実に戻り、川辺でカムパネルラの父と出会う場面まで。物語のクライマックスが彼女の声にのせられることで、ジョバンニやカムパネルラの心情がより鮮やかに浮かび上がります。

夜、布団に入り、明かりを消して聴けば、まるで星の原野を駆け抜けるような夢に包まれるでしょう。静かな秋の夜長にぴったりの体験です。


おわりに

いかがでしたでしょうか。

『銀河鉄道の夜』は、子どもの頃に教科書や文庫本で触れた方も多いでしょう。しかし、時間が経つにつれて「あれ、どんな話だったっけ?」と記憶が曖昧になっている方も少なくありません。

けれど、映像や朗読といった新しい形で触れることで、忘れていた感動や新たな発見に出会うことができます。

  • 映画で体験する幻想的な夢の旅

  • プラネタリウムで没入する星々の世界

  • 朗読で耳に響く、言葉そのものの美しさ

それぞれが異なる表現でありながら、すべてが宮沢賢治の「ほんとうの幸い」を問いかけてくる作品です。

秋の夜長、ジョバンニやカムパネルラとともに、もう一度あの銀河鉄道に乗り込んでみませんか。

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