総額30万円以上の高級ワインが飲める?グランマルシェ・デュ・ヴァン 銀座店

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有楽町と数寄屋橋の交差点に立つ東急プラザ銀座は、最新のファッションや文化が集まるスポットとして知られていますが、地下へ降りていくとまた違った趣の世界が広がっています。落ち着いた照明の下にはおしゃれな飲食店が密集し、キャビアやシャンパンを扱う高級店も数多くあります。ところが、その一番奥にひっそりと佇む「グランマルシェ・デュ・ヴァン 銀座店」は、まだ大きく知られていない隠れた名所です。

外から見ると目立つ場所ではないため、通りすがりに気付くことは少ないのですが、ワイン好きにとっては宝箱のような空間で、特にブルゴーニュ愛好家には驚きの体験が待っています。地方ではまず見かけない超高級ワインが並び、どれもエノマティックによって少量から提供されているため、普段は手が出せない銘柄に気軽に触れられます。初めて訪れたとき、その贅沢さと敷居の低さの絶妙なバランスに感動する方は多いはずです。

エノマティックとプリペイドカードの仕組み

この店舗の魅力の中核を成すのがエノマティックと呼ばれるワインサーバーです。温度管理や酸化防止の機構が備わっており、高級ワインを最適な状態で少量ずつ提供できることから、世界中のワインバーで導入が進んでいます。ここでは1本10万円近いワインが千円台から試飲でき、これほど高品質のラインナップを気軽に楽しめる場所は都内でも多くありません。

利用には専用のプリペイドカードが必要で、最初にカードを購入します。5000円以上チャージすると発行手数料が無料になり、10000円チャージで500円分のサービスが付与されるため、高級ワインを中心に試したい場合は最初から多めにチャージした方がお得です。カードをエノマティックに挿入し、量を選んでボタンを押すだけでワインが注がれます。水は無料で提供されているので、重たいワインを飲んだ後のリセットにも便利です。

250円程度で試せるワインも多く、経験値を上げたい初心者や、自分の味覚の傾向を知りたい方にも最適な環境です。ブルゴーニュの一級畑からカリフォルニアのカルトワインまで、多様な銘柄に少量から触れられる場所は都内でも貴重です。

実際に味わったワインたちとその印象

ここからは実際に試飲したワインのテイスティングメモを順に振り返ります。同じブルゴーニュでも銘柄によってこれほど違うのかと驚かされ、少量でも確かな学びと発見があります。

まず、フィサンのクロ モロー モノポールは石灰質的な酸味が際立ち、あっさりとしてスリムな味わいでした。余韻が短いため、抜栓から時間が経っていた可能性もあります。開けた直後の方が香りの立ち方や果実味がより豊かだったのではと感じられます。

フィリップ・シャルロパンのシャブリ 1er フルショームは、樽香がしっかりと主張しており、特にバニラのニュアンスが明確に感じられます。甘夏や文旦など、日本の柑橘類の皮を割ったときの香りを思わせる苦味と爽やかさがあり、エレガントで余韻も長く続く一本です。骨格も十分で、10年以上の熟成に耐えそうなポテンシャルがあります。

マルク・モレのサン・トーバン プルミエ・クリュ シャルモワは、複雑なモレ一族の系譜を考えると頭が混乱しますが、ワイン自体の完成度は高く、アンレミリィに匹敵する素晴らしい畑です。樽の香りは強いものの、柑橘ではなく乾いた木材、特に新品の桐箪笥を思わせる香りが特徴で、飲むと甘みが強く料理との相性も良い印象です。

今回の試飲の中でもっとも衝撃的だったのは、ピエール・ダモワのシャペル・シャンベルタンです。香りにはキノコやプーアール茶のような深みがあり、冷涼感と熟成果実のバランスが素晴らしく、香りだけで高い品質を感じ取れます。飲み頃が早く訪れており、エキスの厚みと旨みが強く、口に含んだ瞬間から深みが一気に広がります。ジュブレ・シャンベルタンにありがちな筋肉質な革の香りとは異なり、英国の香水を思わせる気品ある香り立ちが魅力的です。

クロード・デュガのジュブレ・シャンベルタンは、生花の香りがきれいに立ち上がり、特に菊の花のニュアンスが印象的でした。酸味はやや強めでしたが、抜栓から時間が経っていた点を踏まえれば納得の範囲で、全体として質の高さを感じました。

シャルロパンのクロ・ド・ヴージョは、とにかく濃厚でパワフルです。葡萄段階で強く凝縮していることがわかり、長期熟成には耐えられそうですが、エレガントさを求める方には重たく感じるかもしれません。土や鉄分、五香粉の香りを好む方には少し物足りない印象です。

同じシャルロパンのエシェゾーは、バラの香りが華やかで、骨格はしっかりしつつもスパイス感は控えめです。飲み頃は10年以上先にあると感じました。2020年のビンテージに共通する濃厚さは魅力ですが、エシェゾーとしての複雑さはやや薄く、香りの表現は単調に感じられました。

価格を見ても、エシェゾーが99,000円、クロ・ド・ヴージョが80,300円と、かつて3万円前後で購入できた時代と比べると驚くほどの高騰です。125ml飲む場合、1杯あたり16,500円となる計算で、一般のレストランでは3〜5万円ほどの価格帯になります。この価格帯を銀座で少量から試せるのは、やはり貴重な体験だといえます。

少量の試飲は本質を捉えられるのか

ここでひとつ疑問が浮かびます。少量の試飲に果たして意味はあるのでしょうか。ワインをオーケストラに例えるなら、1本のワインは序章から終章まで一貫したテーマを持つ物語のようなものです。ゆっくり時間をかけて向き合うことで、香りや味わいの変化、構造の強弱などが見えてきます。友人と数日かけて1本を楽しむ行為は、まさにすべての楽章を通して聴く経験に匹敵します。

一方、10mlだけの試飲は、名指揮者が振るブラームスの交響曲のほんの一部だけを聴いて語るようなものです。序奏だけか、あるいは終盤の1分だけかもしれません。これではワインの全体像を語るのは難しく、誤解も生まれます。理想は25ml以上、できれば50ml、可能なら125ml飲むことですが、高級ワインをその量で試すのは現実的ではありません。

それでも、少量の試飲には確かな意味があります。なぜなら、希少で高額なワインに触れられるだけでも、自分の味覚の幅が大きく広がるからです。香りの傾向、果実味の質、樽の使い方、酸の構造など、少量でも十分に学べるポイントは多く、経験を積むごとに解像度が上がります。1本を丸ごと理解することは難しくても、少量の体験が積み重なれば、ワインの世界を俯瞰する力が確実に育っていきます。

銀座で味覚を磨くという贅沢な学び

ブルゴーニュを中心とした高級ワインの価格は年々上昇しており、日常的に手に取るのは難しくなっています。そうした中で、銀座のど真ん中で本物に少量から触れられるグランマルシェ・デュ・ヴァンの存在は貴重です。量り売りという形によって、一般の飲食店では到底叶わない価格で希少なワインを体験でき、自分の味覚を磨く場としてこれ以上ない環境が整っています。

単なる試飲スポットではなく、ワインの世界の奥深さに触れ、テロワールを体感し、産地や生産者の背景を理解する入口としても価値があります。ワインを深く知りたい方にとって、ここほど気軽でありながら本格的な学びが得られる場所はそう多くありません。銀座を訪れた際には、ぜひ一度足を運んでみることをおすすめします。ワインの新しい扉が静かに開かれるような体験が待っています。

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