2025年の秋、ついに自動販売機で売られている500mlペットボトルのコカ・コーラが200円に到達しました。
かつては「150円で買えるのが当たり前」と思われていた時代を知っている世代からすると、数字のインパクトは小さくありません。飲料の値上げはこれまでも段階的に行われてきましたが、200円という大台は心理的に一つの節目となります。
一方で、同じ25年間で私たちの給料、特に社会人の出発点である「初任給」はどのように変わってきたのでしょうか。この記事では、コカ・コーラの自販機価格を「物価の物差し」として使いながら、2000年と2025年の初任給を比べ、日本経済の歩みを振り返ってみたいと思います。
1990年代後半〜2000年前後:ペットボトルの普及期
1990年代までは、まだ瓶入りや缶入りのコカ・コーラを自販機で買う光景が一般的でした。ペットボトルが普及し始めたのは1990年代半ばから。とくに500mlペットボトル飲料が全国で見かけられるようになったのは2000年前後です。
そして2000年代のはじめ、街角や駅の自販機には「150円」の表示が当たり前のように並んでいました。どのメーカーの飲料でも、500mlペットボトルはほぼ一律150円。この水準は長く続き、「一生このままなのではないか」と錯覚するほどの安定期でした。

価格が動いた転機:2014年の消費税増税
長らく150円で安定していたペットボトル飲料の価格が動いたのは、2014年の消費税8%への引き上げです。このタイミングでコカ・コーラを含む主要な飲料が150円から160円へ値上げされました。
たった10円の違いではありますが、全国一律で値段が変わる自販機の表示は人々の記憶に残ります。当時は「まあ仕方ない」という受け止めが多く、強い抵抗感はなかったでしょう。
インフレ局面へ:180円、そして200円
ところが2020年代に入ると、エネルギー価格の高騰、物流費の上昇、原材料費の値上げが重なり、飲料メーカーも価格改定を余儀なくされました。2022年頃から自販機で「180円」という表示を目にするようになり、2024年にはほとんどの街角で180円が当たり前となりました。
そして2025年の秋。ついに自販機の価格は200円に。わずか10年あまりで40円、比率にして1.35倍の値上げです。

初任給との比較
では、同じ期間で初任給はどのように推移したのでしょうか。
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2000年(大卒平均):額面 約19.8万円、手取りは約17万円前後
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2025年(大卒平均):額面 約23.7万円、手取りは約19万円前後
数字を並べると、25年で額面は約3.9万円、手取りは2万円ほどしか増えていません。増加率にすると、額面で約1.2倍、手取りで約1.1倍強にとどまります。
ここでコカ・コーラの価格を基準にして考えてみましょう。
2000年当時の手取り17万円に「コーラと同じ1.35倍」をかけると、23万円となります。額面に換算すればおよそ27万円。もし給料がコーラと同じスピードで上がっていたなら、現在の初任給はこの水準に達していたはずです。
現実にはそこまで伸びておらず、物価の上昇スピードの方が早い、というのが結論です。

CPIやエンゲル係数ではなく「コーラ指数」
経済の議論ではよく「消費者物価指数(CPI)」や「実質賃金」が使われます。しかし庶民の実感に近い指標は、もっと身近な商品かもしれません。
かつては「かけそば一杯の値段」や「散髪代」「映画館の入場料」といった身近な支出を基準に、生活コストを測ることがよくありました。現代においては、家を出れば数分で発見できる自動販売機やコンビニのコーラが、その役割を担えるのではないでしょうか。たとえ普段コーラを飲まない人であっても、価格表示を目にすれば誰もが知っている共通の基準になるからです。
この「コーラ指数」で見ると、私たちの給料は思ったほど伸びていないことがはっきりします。むしろ「物価の方が追い越している」状態です。
もちろん、給料には業種差・地域差があり、手当や福利厚生も含めると単純比較は難しい面があります。それでも「コーラが150円から200円に上がる間に、初任給は17万円から19万円にしかならなかった」という事実は、経済成長の停滞を象徴的に物語っているように思えます。
まとめ
コカ・コーラの価格を基準に初任給を見直すと、日本の25年間の歩みが驚くほどクリアに浮かび上がります。
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コーラ:1.35倍
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初任給(手取り):1.1倍強
この差が意味するのは、単なる飲料価格の上昇ではなく、「生活の基準がじわじわ重くなっている」という現実です。
物価上昇を前提にどう生き方や働き方を変えていくか。そのヒントを、日常の自販機に並ぶ赤いボトルが静かに教えてくれているのかもしれません。


