さて最近、X(旧Twitter)などで、こんなテーマがよく話題になっています。
「若いうちに海外旅行にたくさん行くべきだ」
「お金を貯金せず、自己投資として海外に行ったり遊んだりするべきだ」
といった主張です。
それに対する否定的な意見は、おおむね次のようなものです。
「無計画にお金を使うくらいなら、旅行に使う分を貯蓄や投資に回し、株式などを定期的に購入していくほうがいい。そうすれば、30歳や40歳になったときに同世代と差がつき、老後や生活に困らない。これは人生のクオリティに直結する。」
という反論です。
本音を言います。若い頃にお金を使って旅行に行ったり、おもいっきり遊んだりした経験や思い出は、子育て中の40代会社員には何の役にも立ちません。それよりも若い頃から投資に回して、少しでも資産を増やした方が、将来圧倒的に役に立ちます。異論がある方は聞きます。
— ぱみ (@1pamilife_) December 16, 2025
まず、「若いうちに旅行に行って、いろいろな経験をしたほうがいい」というアドバイスは、確実に当たっていると思います。
もちろん、まったく興味が湧かない、行ってみたいと思わないのであれば、無理に行く必要はありません。部屋でゆっくり過ごしたり、好きな食べ物を楽しんだり、アニメや小説、ゲームなどの作品に触れている時間のほうが幸せだと感じる人もいるはずです。そうした人たちが、無理やり海外旅行に行く必要はないと思います。
ただ、もし少しでも憧れがあったり、一度は海外の文化を自分の目で見てみたいと思っているのであれば、それは早ければ早いほど良い、と感じます。

18歳までに行く海外旅行が与えるインパクト
私の中には、いくつかの目安があります。
まず一つ目は「18歳まで」です。
多感な時期に海外へ行くと、ヨーロッパの街並みや文化、売っているもの、日本とはまったく違う光景が、強烈に、そして美しく心に残ります。ハワイやグアムでも構いません。どこか美しい街を歩くだけで、その体験は「海外」というもののイメージを自分の中に固定する、強い記憶になるはずです。
私は16歳のときにグアムを訪れました。当時はHISなどの旅行パッケージを使えば、5万円ほどで5日間のホテル滞在と往復の航空券が付いてきました。巨大なステーキやパンケーキの香り、コストコのようなスケールの大きなスーパー、見たことのない飲み物の数々、アスファルトから立ち上る道路の熱、そうした感覚は、今でもはっきりと思い出すことができます。

25歳までの旅行は「ワクワク」を最大限に楽しめる
次の目安は、25歳くらいまでです。
この頃までの旅行は、とにかく新鮮で、ワクワクして、ドキドキできるものになります。18歳の頃よりは少し落ち着きますが、それでも探究心が強く、街を歩き回り、いろいろなものを吸収できる時期です。
体力も十分にあり、「着いたらとりあえず歩き回ってみよう」「知らない路地に入ってみよう」といった行動力が、自然に湧いてくる年代だと思います。

30歳以降に感じた変化と体力
そして30歳以降の話です。
私自身、さまざまな海外旅行を楽しんできましたが、なぜかフランスだけは長く憧れを抱きながらも訪れたことがありませんでした。34歳で初めてフランスを訪れたとき、正直なところ「少し遅かったかもしれない」と感じる部分がありました。
景色は間違いなく美しく、街並みも素晴らしい。けれど、感情の動きはどこか落ち着いていて、「まずはホテルに着いて、荷物を預けて、それから少し散歩して、写真を撮って……」といった具合に、ワクワクするというよりも、予定を淡々とこなしていく感覚に近かったのです。
また、体力の面も無視できません。
歩き回ると以前より疲れやすくなり、ホテルでゆっくり過ごす時間が自然と増えていきます。到着したら街をしらみつぶしに歩き回り、探検し、何かを発掘する——そんなエネルギーは、年齢とともに少しずつ穏やかになっていくように感じました。
さらに、移動そのものの負担も大きくなります。
ヨーロッパや北米へのフライトは10時間を超えることも多く、乗り継ぎを含めると、移動だけで20時間近くかかる場合もあります。これは、健康で体力に自信がある人であっても、かなりのストレスです。

30代になってお金に余裕ができたり、マイルを貯めてビジネスクラスに乗れたとしても、移動全体による疲労感が簡単に消えるわけではありません。
そうした身体的・物理的な理由から考えても、海外旅行はやはり、体力のある若いうちに経験しておく価値があるのではないかと感じています。
言語学習の壁
言語についても、似たようなことを感じました。
34歳にして初めてフランス語を学ぼうとしたものの、ほとんど覚えられず、簡単な挨拶が限界でした。一方で、イタリア語は23〜24歳頃に基礎を少し学んでいたおかげで、現地では言葉が自然と出てきたり、反射的に反応できたりしました。
おそらく、英語やイタリア語、フランス語、ドイツ語などの言葉も、10代から25歳くらいまでに覚え、現地で実際に使う経験をすると、それが脳に刻まれ、その後もある程度使える形で残るのではないかと思います。

30歳を過ぎてから新しく始めることも不可能ではありませんが、吸収力という点では、どうしても若い頃より不利になります。
日本語が一切通じない環境に身を置くという体験
次に、精神的な観点から考えてみたいと思います。
これは個人的な実感ですが、「日本語が一切通じない国に行く」という体験には、かなり大きな意味があるように感じています。
イギリスのような英語圏であれば、ある程度コミュニケーションが取れる場面も多いでしょう。しかし、例えばイタリアの田舎、トスカーナの小さな村などでは、簡単な英語すら通じない人が多いです。

ホテルで「チェックイン」や「ルーム」「ワイングラス」といったごく簡単な英単語ですら伝わらなかったりすることもあります。そうした人たちが宿を営んでいる場合、現地では「その国の言葉だけで、すべてのコミュニケーションを完結させなければならない」状況に置かれます。
拙いイタリア語を使い、相手の言葉を全神経を集中させて聞き取り、理解できた単語だけを拾い上げて対応する。何か問題が起きたときには、その限られた言葉だけで解決しなければなりません。
これも良い体験のひとつです。
世界でも同じように時間は流れている
もう一つ、見落とされがちですが大切だと思うのは、「日本以外の場所でも、同じように時間が流れている」という事実です。
私が初めてフィレンツェを訪れたのは2014年頃ですが、現在のフィレンツェは当時とは街並みがかなり変わっていました。昔行っていたお店がなくなっていたり、広場の雰囲気が大きく変わっていたりします。

日本でも同様に、1990年代、2000年代、2010年頃、そして現在では、街の雰囲気や人々の様子、お店やサービス、観光客の層まで、確実に変化しています。そう考えると、早いタイミングでその土地を体験すること自体が、かけがえのない経験になるのだと思います。
贅沢な体験が与えてくれる「理解の解像度」
また、時には高級なホテルに泊まったり、少し背伸びしたレストランに行ってみたり、贅沢なアクティビティやクルージングを体験したり、上質なラウンジを利用したり、ビジネスクラスに乗ってみることもあります。
そうした体験を通して、「世の中にはこういう世界やイベントも存在しているのだな」ということが、実感として理解できるようになります。

すると、海外映画などを観たときにも、その場面が急にリアルに感じられるようになります。「ああ、こんな雰囲気の場所だろうな」と自然にイメージでき、作品への共感や理解の解像度が一段上がるのです。そういう意味でも、若いうちに旅行を重ねておく価値は大きいと感じます。
早く経験することで、執着は自然と手放せる
そしてもう一つ、早く経験するほど「執着を手放せる」という点も重要です。
私の知り合いには、30代や40代になってからお金に余裕ができ、今までの時間を取り戻すかのように海外旅行や贅沢に強く執着してしまう人がいます。大量に買い物をし、海外での贅沢そのものに囚われてしまっているように見えることもあります。
若いうちに、ほんの少しでもそうした体験の欠片に触れておくと、「まあ、大体こんな感じだろうな」とイメージできるようになります。すると、時間やお金に余裕ができた後でも、必要以上にそこへ執着しなくなるのではないかと思います。
これは、子どもの頃にゲームを禁止されたり、カードを集められなかったりした人が、大人になってからその反動で強い執着を持ってしまうのと、少し似ている気がします。人によっては、夜の店やブランド品など、形は違えど、後年になって強い執着を抱くこともあります。
10代後半から20代半ばくらいまでのうちに海外旅行を経験しておくと、そうした執着心を自然と手放しやすくなります。
「昔行ったから、まあいいかな」と思える感覚が生まれ、気持ちの面でもどこか軽くなる。結果として、その後の人生を、よりゆるやかで自由な気持ちで過ごせるようになるのではないかと感じています。
海外旅行は「経験」と「視野」を先に広げてくれる
若いうちに海外旅行へ行くべきか、それとも貯蓄や投資を優先すべきか。
この問いに、明確な正解はありません。どちらが正しい、間違っているという話でもないと思います。
ただ、若い時期に海外旅行を経験することで得られるものは、お金では後から買い戻せない種類のものが多い、というのは確かです。
異なる文化や価値観に触れ、日本語も英語も通じない環境に身を置き、体力のあるうちに長距離移動を経験し、言葉や感覚を身体ごと記憶する。そうした体験は、年齢を重ねるほど得にくくなっていきます。
また、何度か旅を重ねることで、「世界はだいたいこんな感じだ」という輪郭がつかめてきます。完璧に理解できなくても、その“なんとなく分かる”感覚が、人生の選択や物事の見方に余裕をもたらしてくれます。
贅沢な体験に対しても過剰に執着せず、「知っているからこそ、手放せる」という状態になれるのは、大きなメリットだと思います。
もし少しでも海外に憧れがあるなら、10代後半から20代のうちに、一度でもいいので体験してみる。それだけで、その後の人生の見え方や、世界との距離感は、確実に変わります。


