BMWが誇るコンパクトモデル「1シリーズ」。その頂点に位置するのが M135i です。
筆者は先日、BMWの試乗会に参加する機会があり、念願のM135iに試乗しました。以前、120iを代車として2日ほど乗った経験があり、そのポテンシャルに驚かされたこともあって、「1シリーズのM」とも呼ばれるM135iには大きな期待を寄せていました。今回はその体験を詳しくお届けします。
120iの印象 ― 侮れないエントリーモデル
まずは比較対象となる120iの話から。
120iは1.6L直列4気筒DOHCターボエンジンを搭載し、最高出力170psを発揮。スペックだけ見れば平凡に感じますが、実際に峠道を走らせると驚くほどホットな走行性能を見せます。軽量な車体との相性も良く、レガシィやアテンザなど国産の標準的な2.0Lモデルを凌駕する走りを体感できました。
BMW乗りの間では「1シリーズ=エントリー用」「奥様の買い物車」というイメージも根強いですが、120iでさえスポーツドライブを十分に楽しめる実力があります。さらにこのモデルはFR(後輪駆動)であるため、低速が続くワインディングロードでもFRならではの楽しさを味わえます。
加えて、コンフォートやエコプロといったモードを選べば街乗りも快適。さすがBMW、と唸らされました。
M135iのパフォーマンス ― N55エンジンの魔力
さて本題のM135i。
搭載されるのは、335iや535iなど上位モデルにも採用されている名機 N55型直列6気筒ターボエンジン。
最高出力は306ps、最大トルクは45.9kgmという堂々たるスペックを誇ります。試乗前から「速いのは間違いない」と予想していましたが、実際に乗ってみるとそれ以上の完成度に驚かされました。
まず特筆すべきは 回転の滑らかさ。ごく低回転域からレッドゾーン寸前まで、継ぎ目なくスムーズに吹け上がります。アクセルレスポンスも極めて良好で、ドライバーがステアリングを切り込むと同時に車体が素直にノーズをインへと向けます。
同じN55エンジンでも、335iよりも全域で自然なフィーリングを実現しており、まるで自然吸気(NA)のような錯覚さえ覚えます。M135iの後に335iに乗り換えると、逆に「かったるい」と感じてしまうほど。セッティングの違いが大きな差を生み出しているのです。
120iでは特定の回転域でパワーの盛り上がりを感じましたが、M135iでは全域で均一に力強い加速を味わえ、レブリミットまで心地よく伸びていきます。
コーナリング性能 ― タイヤとサスペンションの完成度
次に印象的だったのがコーナリング性能。
装着タイヤは 225/40R18(フロント)、245/35R18(リア)。中型クーペクラス並みのサイズを誇り、そのグリップ力は圧倒的です。峠道でリアまでしっかり接地して路面を掴み、安定したコーナリングを実現。
120iではやや不安定さをステアリング操作で補う楽しさがありましたが、M135iはまるでレースカーのようにタイヤが路面を食い、ブレのない旋回を見せます。筆者は富士スピードウェイで新型86のレーシング仕様に試乗したことがありますが、M135iのコーナリングはそれに匹敵するほどの完成度を感じました。
もし純正以上のタイヤ、たとえばミシュラン・パイロットスーパースポーツやブリヂストン・ポテンザRE-11、ヨコハマ・アドバンネオバAD08などを履かせれば、さらに次元の違う走りを楽しめるはずです。
サスペンションも優秀で、335i Mスポーツよりも引き締まった印象。路面の凹凸をしっかり捉えながらも突き上げ感は少なく、スポーツ走行に最適化されています。M社が手がけたチューニングはやはり別格で、Mスポーツ仕様との差は明確。M5に乗ったときも同じ印象を受けましたが、「M」の名を冠するモデルはサスペンションひとつ取っても格の違いを感じさせます。
スポーツ走行以外は期待は禁物
ここまで絶賛してきたM135iですが、当然ながら弱点も存在します。
まず念頭に置くべきは「1シリーズがベースである」という事実。つまり、走行性能は抜群でも、内装や快適性は上位モデルに劣ります。
コンパクトなハッチバックであるため、車内は狭く、インテリアもやや窮屈に感じられます。長距離ドライブや家族・友人との快適な移動を想定するなら、3シリーズや5シリーズの方が断然優秀です。M135iはあくまで「走る楽しさ」を最優先にしたモデルであると割り切る必要があります。
輸入車のラグジュアリー感や余裕を求めるのであれば、最低でもM3、できればM5を選ぶのが賢明でしょう。ただし注意点も。たとえばE60 M5はSMGミッションの特性上、低速コーナーが苦手で、日本の狭い峠道ではM135iの方が確実に速いという現実もあります。サーキットや高速道路ではM5が王者ですが、ワインディングではM135iの俊敏さが光ります。
筆者の個人的な感想としては、国産スポーツモデルからのステップアップにこそ最適だと感じました。インプレッサSTI、レガシィのスポーツグレード、あるいはスイフトスポーツなどホットハッチを愛用していた人には違和感なく馴染み、かつ「直6ターボ」の魅力を堪能できるでしょう。燃費もまずまずで、実用走行ならリッター10km前後を狙えます。
主要スペック
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ボディタイプ:ハッチバック
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ドア数/乗員定員:5ドア/5名
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型式:DBA-1B30
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全長×全幅×全高:4340×1765×1430mm
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ホイールベース:2690mm
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トレッド前/後:1510/1535mm
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車両重量:1540kg
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エンジン型式:N55B30A
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最高出力:320ps(235kW)/5800rpm
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最大トルク:45.9kgm(450Nm)/1300〜4500rpm
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種類:直列6気筒DOHCターボ
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総排気量:2979cc
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燃料タンク容量:52リットル
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燃費:12.6km/L(カタログ値)
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タイヤサイズ(前/後):225/40R18 / 245/35R18
結論 ― M135iは“走ることに集中できる一台”
M135iは、走行性能だけを見れば間違いなく傑作です。
軽量コンパクトなボディに直6ターボを押し込み、FRレイアウトで仕立てたその走りは、BMWらしい「駆けぬける歓び」を凝縮した存在といえます。
ただし、快適性やラグジュアリー性を求める人には不向きです。内装や居住性に不満を覚える可能性は高く、あくまで「ドライバーのための車」と割り切ることができる人こそ真価を味わえるでしょう。
もしあなたがスポーツ走行に情熱を持ち、かつ国産スポーツからの次なる一歩を探しているなら、M135iは格好の選択肢です。
一方で、家族と快適にロングドライブを楽しみたいのであれば、3シリーズや5シリーズを選ぶのが賢明でしょう。
走る楽しさを優先するか、快適性を優先するか――その判断こそが、M135iを選ぶか否かの分岐点となるのです。


