かつて「草食系男子」という言葉が流行したのは、2000年代後半のことでした。
恋愛に対して控えめで、穏やかな性格を持つ男性を指すこの言葉は、時代の空気を映す象徴でもありました。
しかしその後、彼らの生き方はさらに多様化し、嗜好やライフスタイルの違いによっていくつもの系統に枝分かれしていきました。
その代表的な存在が、「サードウェーブ系男子」「スタバ・マカー系男子」「インテリ・コーヒー系男子」「紅茶系男子」です。
いずれも“飲み物”を通して、自分の世界観や価値観を表現しているのが特徴です。
「サードウェーブ系男子」とは――都市型クラフトマンの美学
サードウェーブ系男子とは、ブルーボトルコーヒーなどに代表される“サードウェーブコーヒー”文化を愛する男性のことです。
単なるカフェ好きにとどまらず、クラフトマンシップや哲学的なストーリーを重視する傾向があります。
■特徴
・丸メガネに9分丈パンツ、足元はニューバランス
・ネルシャツやシンプルなカーディガンを好む
・トートバッグの中には英字新聞や洋書
・アメリカ西海岸や北欧のミニマル文化に憧れがある
サードウェーブ系男子は、「見せる」よりも「語れる」消費を大切にします。
彼らにとってコーヒーは嗜好品であると同時に、文化や思想への入り口なのです。
「スタバ・マカー系男子」とは――カフェに生きるノマドたち
スターバックスでMacBookを開き、イヤフォンをして作業する。
そんな姿を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
それこそが「スタバ・マカー系男子」の典型です。
■起源と変化
もともとはデザイナーやイラストレーター、エンジニアといったクリエイティブ層が中心でした。
「自宅では集中できない」「カフェのざわめきが心地よい」といった理由で、スタバを作業場として使っていたのです。
しかしMacBookが一般化するにつれ、SNS閲覧や動画視聴など“作業をしていない層”も増加しました。
その結果、都心では減少傾向にある一方、地方では今も健在です。
■特徴
・デバイスにこだわり、環境に適応する柔軟さ
・ファッションよりも効率と快適さを優先
・「作業している自分」というスタイルを楽しむ
・SNSとの親和性が高く、情報発信にも積極的

「インテリ・コーヒー系男子」とは――知の香りをまとう研究者気質
インテリ・コーヒー系男子は、コーヒーを“学問”として楽しむ人たちです。
研究職や理系大学院生、哲学や文学を好む思索的なタイプに多く見られます。
■特徴
・コーヒーチェーンよりも自宅や研究室でドリップ
・産地、焙煎、抽出温度などを数値で管理
・味を「再現」することに喜びを感じる
・フラスコやビーカーを使って淹れることも
サードウェーブ系男子が感性でコーヒーを語るのに対し、インテリ・コーヒー系男子は理論で味を追求します。
一杯のコーヒーの中に、科学と美学の交差点を見出しているのです。

「紅茶系男子」とは――静けさと香りを愛する茶の求道者
そして、近年静かに増えているのが「紅茶系男子」です。
紅茶を入口にして、烏龍茶・白茶・黒茶・日本茶へと興味を広げる人も多く、茶器や陶磁器にこだわるのも特徴です。
■紅茶系男子の始まり
・ルピシアなどでフレーバーティーから入門
・マリアージュフレールの缶をコレクション
・ダージリンの単一農園ティーに魅了される
・やがて中国茶や日本茶の世界へと深化
紅茶系男子は、香りを記憶する力に優れており、ブラインドテストで茶の種類を当てるほどの嗅覚を持つ人もいます。
一日に20〜40杯近く飲む人も珍しくありません。
■派生ジャンル
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紅茶・洋食器系男子:ロイヤルコペンハーゲンやウェッジウッドを愛用
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紅茶・アンティーク系男子:銀器やヴィクトリア朝文化に心惹かれる
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中国茶系男子:岩茶・鉄観音など東洋の深みに没入
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紅茶学術系男子:茶樹や品種、気候の違いを研究対象にする
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日本茶系男子:煎茶や抹茶、茶道に精神性を見出す
紅茶ポットに茶葉を残すか否か――そんな些細な違いにも哲学が生まれるのが、紅茶系男子の世界です。
紅茶系男子になるために
紅茶を楽しむために必要な道具は、たった4つです。
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ティーポット(ガラス製でも可)
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ティーカップ
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電気ケトル
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良質な茶葉
この4点があれば、紅茶系男子としての第一歩を踏み出せます。
慣れてきたら、計量スプーンや電子はかり、ティーコジー、茶器などを少しずつ揃えていくと良いでしょう。
重要なのは「日常の中で一杯を丁寧に淹れること」です。


嗜好の分化は、自己理解の深化でもあります
現代の男性たちは、恋愛観や職業ではなく、“何をどう味わうか”で語られる時代に生きています。
コーヒーや紅茶という日常的な飲み物が、価値観や世界観の象徴となりつつあります。
アウトドアからインドアへ、派手さから静けさへ。
そして「誰かに見せる趣味」から「自分と向き合う嗜み」へ。
紅茶を片手に静かに本をめくる男子こそ、現代で最も情熱的な存在なのかもしれません。


