さて今回は「なぜイタリア人は荷物が少ないのか」について考えてみたいと思います。
イタリアを旅行すると、美しい景色や雰囲気、匂いや気候などに圧倒されて、何が何だか分からなくなるなってしまいますね。ですが、冷静に観察してみると気づくことがあります。カフェでエスプレッソを飲みながら通りを眺めていると、道行く男性の多くがほとんど荷物を持っていないのです。
中にはスーツ姿で両手をポケットに突っ込んだまま、何も持たずに歩いている人もいて、まるで映画のワンシーンに紛れ込んだエキストラのように見えるほど。「この人たちはどうやって生活しているのだろう?」と不思議に思うかもしれません。

夏は軽装でサングラスとiPhoneだけ、冬はコートにポケットを突っ込み歩く、これが一般的なスタイルになっています。ちょっとしたオジサンでもスマートに見えますね……。
そこには、いくつかの社会的な背景があります。イタリアでは「手ぶらで堂々と歩く」ことが格好いいとされており、ジェンダー意識や美意識が強く反映されています。さらに、会社が自宅の近くにあるケースが多く、日本のように片道1時間以上かけて通勤する人は少数派です。そのため、職場にも自宅にも必要なものが揃っており、わざわざバッグに詰め込んで持ち歩く必要がないのです。
その証拠に、イタリアではバルや知り合いのレストランで「ちょっと充電させて」と頼む光景をよく目にします。モバイルバッテリーを常備するよりも、その場で借りればいい、という発想です。ポケットにはせいぜい10ユーロ札を数枚と、2ユーロ硬貨を何枚か。エスプレッソを飲み、タバコを買うにはそれで十分なのです。

対照的に、日本人は長距離移動や長時間通勤が一般的で、「何かあったら自分で何とかしなければならない」という意識が強いです。そのため、モバイル充電器やパソコン、ノート、場合によっては防災グッズまでバッグに詰め込む人もいます。
「これはイタリア製のバッグだから」と、国旗がついたリボン付きのカバンを持ち歩いている人を見かけることもあるかもしれません。あるいは、日本の百貨店で高級なイタリア製のカバンを購入し、プライベートや仕事に使っている男性も多いでしょう。

しかし実際にイタリアへ行ってみると、それらを日常的に使っている現地の人は思った以上に少数派です。むしろ多くの人は驚くほど荷物が少なく、時には通勤時間の混雑した朝でさえ「なぜ何も持たずに移動して大丈夫なのか」と思うほど。そうした光景が過半数を占めているため、日本の生活文化に慣れている人にとっては、現地でかなりの衝撃を受けるのではないでしょうか。
どちらが良い、悪いではなく、文化や生活環境の違いが「イタリア人は手ぶら」「日本人は荷物持ち」という対照的なスタイルを生み出しているのだと思います。


