引っ越しの退去立ち合いは、多くの人にとって「できれば早く終わらせたい面倒な作業」ですよね。しかし、そこで数分の準備や意識の差が、数千円、時には数万円の差になることがあります。
私が20回近く引っ越しをしてきた気がついたことをお伝えします。
入居当日に「記録」を残す
最初の頃は、退去時に細かい傷や汚れを指摘され、そのたびに「まあ仕方ないか」と思いながら支払っていました。しかし回数を重ねるうちに、あることに気づきました。退去時に損をするかどうかは、住み方よりも「記録」と「その場での対応」でほぼ決まるということです。
現在、私が必ず行っているのは、入居した当日に部屋中の写真を徹底的に撮影し、少しでも気になる傷や汚れを不動産会社へメールで送ることです。
特にメールは、日時が明確に残るため非常に有効です。数年後の退去時に「その傷はいつ付いたものですか」と言われた場合でも、「入居日の〇月〇日にこの写真を送っています」と客観的に示すことができます。この方法を取るようになってから、入居後の責任をなすりつけられることはほとんどなくなりました。

新築だからこそ慎重になる
注意が必要なのは、新築物件です。
新築に入居した際、壁紙のつなぎ目にはみ出しや小さな傷があったり、木部に糊が残っていたりすることは決して珍しくありません。
糊であれば、入居してすぐの段階で水拭きなどをすれば落ちることもありますが、手の届きにくい場所だったり、気づかずに放置してしまうと、そのまま汚れとして定着してしまう場合があります。すると、本来は入居時点ですでについていたものにもかかわらず、退去時には「あなたの責任」という扱いになってしまう可能性が出てきます。

床や壁の傷についても同様です。職人さんは丁寧に作業をされていますが、それでも建築や内装の過程で何らかの傷がついてしまうことは避けられません。日本では傷や汚れに対する基準が非常に厳しく、特に退去時のチェックでは、少しでも費用を算出しようとして細かく見られる傾向があります。そのため、窓のサッシや枠、床、キッチン周りなど、新築であっても一通り確認しておくことが重要です。
退去立ち合いはどう向き合うか
ショート動画などで退去立ち合いについては、「しない方がいい」という意見もあります。
確かに、クリーニング費用が定額で決まっている契約であれば、立ち合いを省くのも一つの合理的な判断だと思います。ただ、私は基本的に立ち合いをする派です。その理由は、その場で不要な請求を防げる可能性があること、自分の目で状況を確認できること、そして今まで住ませてもらった部屋をきれいにして返したいという感覚があるからです。
タワーマンションなどでは特に、退去時に必ず面積に応じたクリーニング費用が発生するという条件が、契約書に明確に書かれている場合があります。
この場合、私は特に交渉せず、そのまま支払っています。契約時に説明を受け、納得した上で住んでいる以上、それは仕方のないコストだと考えています。重要なのは、知らないまま払わされることと、理解した上で支払うことの違いです。

退去立ち合いで本当に差がつく工夫
本当は秘密にしたいくらいですが、退去立ち合いで特に効果があった工夫が一つあります。
それは、簡単な掃除道具を持参することです。
私が持っていくのは、スポンジ、ウェットティッシュ、クレンザー程度です。以前、家具の裏に10センチほどの黒い汚れを指摘され、「これは借主負担ですね」と言われたことがありました。しかし見た瞬間に落ちる汚れだと分かったため、「2、3分だけ待ってください」とお願いし、その場でクレンザーを使って軽くこすりました。
汚れは簡単に消え、結果として修繕費は請求されませんでした。もし道具を持っていなければ、その一箇所だけで数千円、場合によっては1万円以上を請求されていたと思います。
もちろん、大きな穴や明らかな破損については、借主負担になるのも仕方がありません。しかし、数分で落ちるような単なる汚れまで請求されるケースは決して珍しくありません。退去立ち合いの場で「少し待ってください」と言える準備があるかどうか、それだけで支払額は大きく変わります。
結局のところ、退去で得をするのは、声が大きい人でも交渉がうまい人でもありません。入居時に記録を残し、新築でも油断せず、退去時に最低限の準備をしている人が、こっそち損を回避しているのだと思います。


