Facebookを使っていると、突然見知らぬ人物からフォローリクエストが届き、承認すると「どこに住んでいますか」「仕事は何をしていますか」といった不自然なメッセージが送られてくることがあります。
プロフィールを見ると、明らかな美女の写真、海外風の名前、曖昧な経歴がずらっと揃っています。多くの人が一度は「これは詐欺ではないか」「なぜこんなアカウントが放置されているのか」と疑問を持ったこともあるのではないでしょうか。
本記事では、なぜFacebookが明らかに怪しいスパムユーザーを削除しないのか、その背景にある構造的な理由を整理していきます。
技術的には削除できるのに、なぜやらないのか
結論から言えば、スパムユーザーの検出は技術的に難しい問題ではありません。
Facebookは本来「知っている人同士がつながるSNS」として設計されており、自然なユーザー行動には明確な傾向があります。
フォロー数とフォロワー数は近い値になりやすく、メッセージは知人とのやり取りが中心で、短時間に大量の相手へ同一内容を送信することはほとんどありません。

一方、詐欺目的のスパムアカウントは、フォロー数が極端に多くフォロワーが少ない、フォロー直後に即座にDMを送る、それを数十件単位で同時に行うといった、明らかに異常な行動パターンを示します。
これらを組み合わせれば、ルールベースでも高い精度で抽出することは可能です。それでも削除されないのは「できないから」ではなく、「やらない理由があるから」だと考える方が自然です。
数字と売上を優先するプラットフォームの論理
Facebookのような巨大プラットフォームでは、アクティブユーザー数、投稿数、メッセージ送信数といった指標が重要な評価軸になります。
スパムユーザーは実態としては有害ですが、数字だけを見ると非常に活発なユーザーです。フォローを大量に行い、メッセージを送り、時には広告を出すこともあります。
Form 10-K(フォーム・テンケー) 2023年12月31日終了年度の法定開示資料
もしこれらを一気に削除すれば、短期的にはアクティブ数やエンゲージメントが大きく下がり、社内評価や投資家向けの指標に悪影響が出ます。そのため、「正しいが数字が悪くなる施策」よりも、「問題はあるが数字が保たれる状態」が選ばれやすい構造があります。結果として、スパムは“把握されているが放置されている”状態に近くなります。
誤BANリスクとクレームを恐れる姿勢
もう一つの大きな理由は、誤って正規ユーザーを削除してしまうリスクです。営業職、リクルーター、起業家などは、フォロー数が多くDMを頻繁に送る場合があります。
自動検知を強めると、こうしたユーザーが巻き添えで制限やBANを受ける可能性が高まります。特にFacebookは利用者の高齢化が進んでおり、アカウント停止は強い不満やクレームにつながりやすい傾向があります。
プラットフォーム側から見ると、スパムを残すことで失う信頼よりも、誤BANによる直接的な抗議や炎上を避けたい、という心理が働きやすいのです。

通報者が不利になる逆転現象
近年よく聞かれるのが「通報を繰り返すと、通報者側が制限されることがある」という話です。
メルカリなどもそうですが、多くのプラットフォームでは、通報行動そのものもスコア化されています。
通報回数が多く、かつその通報が運営側の判断で削除に至らなかった場合、「ノイズを出すユーザー」とみなされることがあります。その結果、通報の優先度が下がったり、最悪の場合アカウントに制限がかかったりすることもあります。
本来、健全化に協力しているはずのユーザーが不利益を受けるこの構造は、プラットフォームの歪みを象徴しています。
長期的に見たときの致命的なリスク
スパムや詐欺を放置した場合、短期的には数字が保たれるかもしれません。
しかし被害に遭ったユーザーの多くは、大きな声を上げずに静かに離脱します。そして周囲に「Facebookは危ない」「変な人が多い」と伝えます。これが積み重なると、新規ユーザーは増えず、既存ユーザーも減り、信頼だけが確実に削れていきます。
特に結婚詐欺や金銭詐欺の被害が増えれば、社会的な評価も悪化します。信頼は一度失うと回復に非常に時間がかかる資産です。短期的なKPIを守るための放置は、長期的には自分の首を絞める行為だと言えるでしょう。
まとめ
Facebookがスパムユーザーを削除しない理由は、無能だからでも無関心だからでもありません。数字、売上、クレーム、誤BANリスクといった要素を天秤にかけた結果、放置が“合理的”になってしまっているのです。
しかしその合理性は、プラットフォームの信頼を少しずつ削る危うい選択でもあります。ユーザーが違和感を覚え、「なぜまだこんな詐欺が残っているのか」と感じる今こそ、Facebookはその姿勢を問い直す段階に来ているのではないでしょうか。



