ChatGPT Atlas(以下「Atlas」)を使い始めてから数日、改めて「これは単なるブラウザ+チャットではなく、仕事・生活・学びの在り方を変えてしまうアプリケーションだ」と思いました。
既に「ChatGPT」が浸透し普及してから約3年。多くの人がチャット形式のAIによる質問応答や文章生成、コード補助等を日常にし始めている中で、「ついにブラウザバージョンがリリースされた」というニュースは、私にとって期待と多少の懐疑を抱かせるものでした。
「単にChatGPTがブラウザに入っただけでしょ? 別に新しくできることはそんなに大したことではないんじゃないか」と。
しかし、実際にダウンロードして使ってみたところ、その懐疑は早々に払拭され、「過去10年でも1、2を争うほど革新的な体験だ」とまで感じるに至りました。今回は、その体験をできるだけ詳細に、かつ読者が実際に使ってみたくなるように紹介いたします。
インストールと立ち上げ
まず、ダウンロードとインストールから始めました。Atlasは公式サイトからmacOS版をダウンロードできます。
ダウンロード後、アプリケーションフォルダにドラッグ&ドロップし、起動するとログイン画面が現れます。既にChatGPTアカウントを持っていればすぐに連携できます。
また、「既存ブラウザからのデータインポート(ブックマーク、パスワード、閲覧履歴)」「ブラウザメモリ(Browser Memories)を有効化するかどうか」などを設定可能です。私も既存のChrome環境をそのまま移行して使い始めました。

起動画面は非常にシンプルで、URLバー・タブ・サイドバー(ChatGPT用)といった構成。見た目は元のChromeに近い印象を受けました。
「ほんとに“ただチャット付きブラウザ”なのか?」と思って操作を始めたのですが、すぐにその認識が覆りました。
使ってみて分かった「できること」
実際に使ってみて、「これは便利だ/この未来だ」という3大ポイントを挙げます。
① ページを開いたまま“そのページに関する対話”ができる
例えばニュース記事を読んでいて、「このニュースに対して中立的な視点を教えてください」とサイドバーでChatGPTに質問します。すると、そのページをAIが認識し、「背景としてこういう事情があります」「この点が留意点です」「代替の視点としてこちらも考えられます」といった解説が出ます。つまり「読む →質問する」という流れが、ブラウザ内で途切れず連続します。

この体験は、従来「別タブを開いてChatGPTにコピペして質問」をしていた手間をそのまま解消します。Atlasは「閲覧中のコンテンツをそのままChatGPTが理解している」かのように動きます。公式でも「Atlasは研究・分析・自動化・予約等のタスクをブラウザ内で可能にする」と謳っています。
具体的には、閲覧中ページのテキストをAIが“見て”いて、「要約」「意思決定支援」「補足情報提供」が即座に来るというものです。
② 比較・選択・買い物支援が劇的にラクになる
私自身が特に感動したのが「選択支援機能」です。
例えば中古車の一覧ページを開き、「この中で一番バランスの良い車両を教えてください」と質問すると、AIは車両ごとの走行距離・年式・装備・販売店・保証内容などをリストから概ね把握し、「この車両が整備実績・販売店評価・価格のバランスで優れています」といったアドバイスをしてくれます。

さらに通販サイト(例えばモバイルバッテリー)で「これ何を選べばいいの?」と聞くと、AIは「このブランドは信頼できる」「このメーカーはレビュー数が少ない/レビューにばらつきあり」「PSEがあってもメーカー実績が薄いものがあります」など、“闇レビュー”や“レビューだけでは分からない罠”を回避する視点も提示してくれました。

従来、選択に時間をとられていた私にとって「迷って考えて比較して…」というフェーズが大幅に短縮されました。
③ 業務・分析・自動化用途に使える
さらに驚いたのが「作業の自動化支援」です。
例えば私はあるウェブ解析ツール(例:Google Analytics的画面)を開き、「この画面を見て、どのような検索キーワードを増やせば良いか?サイト改善のためには何をすればいいか?」と尋ねました。

すると、AIは「このセグメントは伸びておらず、こういうキーワードを増やすと良いでしょう」「次にこのボタンを押してこのデータを出すとわかりやすい」「このグラフの傾きがこう読める」というようなプロ級のアドバイスをくれました。
加えて、「このボタンを押せば“ユーザー数”の変動を出せますよ」といったUI操作まで教えてくれたのです。初心者でも“プロのコンサルタントが隣で教えてくれている”ような体験でした。
WordPressのテーマの設定なども、リアルタイムで教えてくれます。初心者でも様々な複雑な操作が可能になり、まるで電脳化した気分です。

そして最も衝撃的だったのは、スプレッドシート上でのスクリプト操作です。
私は「Googleスプレッドシートを開いて、アメリカドル/日本円の為替チャートを毎日更新するようなものを作りたいです」と相談しました。

数回のやり取りののち、「入力しますか?」と聞かれ、「はい」を押すと、AIが実際にスプレッドシートに何かを操作してくれ、スクリプトを設定し、グラフを表示してくれたのです。

つまり「少し対話しただけ」で、かつて数十分–時には数時間かかっていた手作業が、ほぼ自動化されてしまいました。この瞬間「これは単なる補助ではなく、働き方を変える力を持っている」と確信しました。

特にこの「自動で実行して作業をしてくれる」という点は、これまでのChatGPTアプリケーションとはまったく異なります。ブラウザの中でボタンを押したり、操作をしたり、入力や計算をしたり、複雑な関数を組み込んだり、さらにはグラフを作成したりといった一連の作業を、ユーザーがほんの少し対話して確認するだけで自動で実行してくれるのです。まさに異次元のアプリケーションだと感じました。
過去に、ここまで自動的に“やりたいこと”を実行し、最終的な形まで仕上げてくれるアプリケーションは存在しませんでした。そのため、本当にショッキングな体験でした。私はWindows 95の時代からパソコンを使い始めた30代で、約25年ほどパソコンに触れてきましたが、これほど革新的なアプリケーションに出会ったのは初めてです。
この技術は、特定の分野では作業効率を飛躍的に向上させ、従来の作業時間を100分の1にまで短縮してしまう可能性を秘めています。まさに、時代を変えるほどの画期的な技術だと思います。
なぜ「革新的」なのか
上記体験を通じて、私が「革命的だ」と感じた理由を整理します。
-
ブラウザという“最も頻繁に使われるツール”に、AIが“隣にいて”即応する構造。従来、ブラウザとチャットは別体験でしたが、Atlasでは融合しています。
-
閲覧中のページをそのまま“対話の対象”にできることで、「見る →考える/選ぶ →実行する」という作業の流れが、ワンストップへと近づいています。つまり“実行”までAIに任せる選択肢が実用レベルで立ってきたということ。
-
自動化(Agent Mode)を含むことで、従来「手を動かして選び・操作」していた活動が、「話して指示」するだけの体験に変わり得る。
-
知識・選択支援という観点でも価値が高い。専門知識がなくても、初心者がプロ級の分析・判断を補助付きで行える。
注意点・リスク
ただし、全てが完璧というわけでもありません。使い始めてから以下のような留意点も感じました。
-
個人情報や重要なデータなど、アップロードやサーバー保持、情報保持の観点からリスクがある。
-
レビューでは「サイドバーが邪魔になった」「常に質問を思いつくわけではない」「ブラウザ画面が狭く感じる」など使い勝手に若干のギャップもある。
-
プライバシー・セキュリティの観点では警戒すべき指摘があります。例えば、偽URLを用いた「プロンプトインジェクション」攻撃の可能性、ブラウザ履歴やメモリ機能が搭載されている点など。
-
“完全に任せられる”段階にはまだ到っていないため、重要業務・機密性の高い操作をAIに丸投げするのは慎重であるべきです。
-
使い方を誤ると、「自動化された作業を監督せずに任せたら誤操作・意図しない操作が入る」というリスクもあります。
今後すぐ取り入れたい活用法
このブラウザを使って、私自身すぐに取り入れたいと思った具体的な用途を以下に挙げます。
-
投資・資産運用分析:例えばある上場企業の決算ページを開き、「この決算内容から今後どうなるか、株価はどう影響を受けるか?」と尋ねることで、短時間で従来は長時間かけていた分析の7〜8割を数分で把握できる可能性があります。
-
ルーチン作業の自動化:例えばスプレッドシートでの毎日のデータ更新・グラフ生成・報告書作成など。少し試して、スクリプト設定+グラフ表示まで任せてみようと思います。
-
生活に関係する商品をAmazonで選ぶときに効率化、またどれが1mlあたり1gあたり安いのかなど、効率よく商品を選ぶ。
- 会社の決算などをfreeeで行うときに複雑な質問や操作を対話しながら進める、など
Atlasは異次元のアプリケーション
改めて、Atlasを手に取って感じたこと。それは「ブラウザ体験そのものの次のステージだ」という点です。「調べる」「比較する」「実行する」「自動化する」という一連の作業を、ブラウザという日常のツールの中でシームレスに行えるという意味で、働き方・学び方・生活スタイルすら変えてしまう可能性を秘めています。
もちろん、現時点では完成された製品ではなく、まだ磨かれていない部分・使いこなしのコツ・リスクや慎重な運用が必要な場面もあります。それでも、私自身はこのツールを活用しない選択肢をとる理由が見つからないほど価値を感じています。まさに「先行者メリット」を享受できるフェーズだと考えています。
これからの時代、AIが「考える」だけでなく「動く」段階に入りました。Atlasはまさにその転換点を示す存在だと思います。


