若い女性が流行をつくる構造は昔から変わらない
日本の流行の中心は、昔も今も10代から20代前半の女性です。
特徴的なのは、若い女性が盛り上げたブームが徐々に20代後半や30代の男女へ広がり、やがて40代、50代にまで波及していくというパターンです。そして流行が中年層にまで浸透した頃には、若者から「古い」と見なされてしまい、ブームは終息へと向かっていきます。
Facebookはその典型例といえます。もともとはアメリカの大学生から広がり、日本でも若者の間で大流行しました。しかし次第に中高年層が利用の中心となり、「おじさんっぽい」「おばさんっぽい」と揶揄されるようになると、若者は距離を置くようになりました。流行にはこうしたライフサイクルがつきものなのです。
そして今、この1年ほどで急速に広がったのがMBTI診断、なかでも「INFP」という性格タイプです。TikTokやInstagramを眺めていると、「INFP女子あるある」といった動画やイラストを頻繁に目にするようになりました。
INFPってそもそも何?
MBTIとは、人の性格を16種類に分類する診断で、もともとは心理学者カール・ユングが1921年に提唱した理論をベースにしています。その後、アメリカ人のキャサリン・ブリッグスとイザベル・マイヤーズ母娘が第二次世界大戦中に実用化し、現在のMBTIが形づくられました。
診断は4つの軸で構成されています。
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外向 or 内向
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感覚 or 直感
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思考 or 感情
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判断 or 知覚
これを組み合わせて16種類のタイプが生まれます。
たとえばINFPは「内向的」「直感的」「感情的」「柔軟型」の組み合わせです。理想主義で感受性が強く、他人の気持ちに共感しやすいタイプといわれています。日本で人気の「繊細さん」とも近いニュアンスを持っていて、共感を呼びやすいのも特徴です。
なぜ今、日本でMBTIが流行したのか?
ここからが本題です。MBTIそのものは何十年も前から存在しているのに、なぜこの1年ほどで爆発的に流行したのでしょうか。
まず大きいのはSNSとの相性です。16タイプというほどよいバリエーションが、短い動画やイラストで紹介しやすく、「タイプ別あるある」コンテンツがどんどん拡散されました。
次に手軽さです。スマホで数分の質問に答えるだけで診断でき、しかも無料。心理テスト感覚で気軽に試せるので、友達と「私INFPだった」「私はENTJだった」と結果をシェアする文化が自然に広がっていきました。
さらに、Z世代の価値観である「努力より自己理解」にもうまくフィットしています。自分を変えるよりも「私はこういう人間なんだ」と理解し、受け入れることに意味を見出す若者にとって、MBTIは自己肯定のツールとなっているのです。
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サンウォン 03 INFP
アンシン 06 ENTP
シンロン 05 INFJ
ゴヌ 03 ESTJ
ジアハオ 02 INTJ
リオ 02 INTP
サンヒョン 07 ENFJ
ジュンソ 01 ENFJ pic.twitter.com/gJm5Qflpo5— いーちゃんྀི (@tkdfldh_ald1) September 26, 2025
そして忘れてはいけないのが韓国カルチャーの影響です。K-POPアイドルが自分のMBTIを公表し、ファン同士で「推しのMBTIは?」「自分と相性良いかな?」と話題にする文化が日本に入ってきたことが、流行の大きな火付け役となりました。
(※上記の投稿は「BOYS II PLANET」というオーディション番組の参加者を紹介したものです。厳密には既存のK-POPグループではなく、あくまで参加者プロフィールの一例となります。)
日本ならではのアレンジと今後のゆくえ
日本では海外から入ってきたものを「魔改造」する文化があります。すでにMBTI診断は恋愛占いや血液型占いと組み合わせられ、「タイプ別恋愛相性ランキング」や「都道府県別に多いタイプ」など、日本独自のコンテンツが生まれています。科学的な診断と占い的エンタメをミックスさせる発想は、日本人が大好きなやり方です。
ただし、流行が加熱するほどリスクも出てきます。「私はINFPだから◯◯できない」と思考停止になったり、他人をタイプで決めつけたり、診断を利用した怪しいビジネスに巻き込まれる可能性もあるので、楽しみつつも一定の距離感は必要です。
とはいえ、「自分を知りたい」「私は誰なのか」という欲求そのものは消えることがありません。Facebookや血液型占いがブームを過ぎても完全にはなくならなかったように、MBTIも形を変えながら残り続けるでしょう。もしかしたら次はAIがつくる性格診断や、脳科学を使った解析が流行るのかもしれません。
Love Type 16は進化版
最近ではMBTIの派生版として「Love Type 16」といった恋愛診断も人気を集めています。
オリジナルの16タイプをそのまま使うのではなく、「ボス猫」「隠れベイビー」「ツンデレヤンキー」「憧れの先輩」「パーフェクトカメレオン」「ちゃっかりウサギ」といったキャラクターを登場させ、診断結果を物語として楽しめるように工夫されているのが特徴です。
単なる性格分類にとどまらず、キャラクターに自分を重ねて共感できるようにすることで、SNSでも拡散しやすくなり、会話のきっかけや盛り上がりのネタにもなっています。こうした「魔改造」的な発展は、日本ならではの文化ともいえるでしょう。一度流行したものが終わるのではなく、少し形を変えてボリュームアップし、もう一度ブームを呼び込む。この現象を眺めていると、流行の面白さや柔軟さを感じます。
恋愛版MBTIの『Love Type 16』やってみたけど面白いしかなり当たってた❗️見方としては、
1️⃣L/F:自分中心、相手中心
2️⃣C/A:甘えたい、甘えられたい
3️⃣R/P:現実的、情熱的
4️⃣O/E:自由な恋愛、真剣な恋愛
私はデビル天使(FAPO)だった皆やってみて✨https://t.co/SYtCQpZS38 pic.twitter.com/N3ecPKAIIz— (@_____como) September 20, 2025
そしてINFPをはじめとするMBTI診断は、単なるエンタメ以上に「自己理解と自己肯定のツール」として若い世代に受け入れられているのも事実です。100年前の理論が現代日本の若者に響いているのは驚きですが、結局は「私は何者か?」という普遍的な問いに応えてくれるからこそ支持されているのでしょう。
このブームが一段落したとしても、私たちはまた新しい方法で自分を知ろうとするはずです。MBTIはその通過点にすぎませんが、今の若い世代にとっては自分を見つめ直すきっかけとして十分な意味を持っています。そして形を変えながら、次の「自己理解ブーム」へとつながっていくのではないでしょうか。




