初めてのボランティアで出会った“善良な市民たち”
私は36歳にして、初めてボランティアに参加してきました。地域のイベントで、数日間にわたって活動するものでした。
これまでボランティアには関心がなかったのですが、ひょんなことから初めて参加してみることにしました。そこで説明会の段階で、すでに驚くことがありました。
会場に集まった数十人が、全員まるで“絵に描いたような善良な市民”だったのです。困っている人がいれば自然に手を差し伸べ、迷子がいれば迷わず案内する。そんな人たちが知り合いでもないのに集まっている光景は、正直ショックでした。
彼らは全員、健康的な体型で、清潔感があり、服装も動きやすく整っていました。
何十人が集まっているのに、香水や汗の匂いも一切しない。まるで無臭の空間にいるようで、「人が集まってこれほどクリーンなことがあるのか」と不思議な気持ちになりました。
おそらく、自己管理がしっかりできている人たちばかりなのだと思います。挨拶も自然で、余計な荷物を持っておらず、どこか“整っている”印象。年齢や身長はバラバラでも、全員に一貫した清潔感がありました。
「環境が人を変える」という実感
そして実際のイベント当日、参加者の動きを見てさらに驚きました。
全員が自発的に動き、困っている人を見つけたらすぐに助ける。仕切る人もいなければ、誰かを見下すような人もいない。全員が「支えること」そのものを目的として行動していました。
例えるなら、職場やアルバイト先で「こんな先輩が一人いたら最高だ」と思うような人たちが、何十人も集まっているような空気です。全員が空気を読み、状況を判断し、自分の役割を考えて動く。だから仕事が驚くほどスムーズに進みます。
判断も的確で、おそらく日常でも丁寧にタスクをこなす人たちなのだと感じました。数日間の活動を終えて、私は「環境の力」を強く実感しました。あれほど前向きで思いやりのある人たちに囲まれると、自然と自分も丁寧に行動したくなる。
周囲の9割以上が優しい人なら、どんな人でもその雰囲気に引っ張られる。環境や組織の空気が、人をどう変えるかを体で理解したような気がしました。
また、このとき思い出したのが、夏に行った市町村の無料健康診断です。そこに来ていた人たちも皆、健康的で清潔感があり、ヨガや軽い運動をしていそうな人ばかりでした。
いわば「健康診断に来なくても健康な人たち」。ボランティアの会場も同じで、そうした“良い循環の中にいる人たち”が自然に集まっているのだと思いました。
ゴミ拾いに見た「チームの本質」
ボランティア活動で定番の「ゴミ拾い」ここでもちょっとした気付きがあります。
これが、想像を超えて興味深い体験でした。狭い通路を3人や5人で担当するのですが、最初は「この道なら一人で十分だろう」と思っていました。
しかし、やってみるとその考えはすぐに覆りました。たとえ全員が意識の高い人でも、見る角度や注意の方向が違うため、拾うゴミの種類が違うのです。レシートを真っ先に見つける人もいれば、小さな透明ビニールを見逃す人もいる。「これは拾うべきかな」と迷って通り過ぎる人もいれば、それをさっと拾う人もいる。
つまり、複数人で拾うことで、それぞれの感覚のズレが補われ、結果的に掃除の完成度が飛躍的に上がるのです。私自身、取りこぼしたゴミを後ろの人が拾ってくれたり、逆に前の人の見落としを自分が拾ったりして、
「理屈では一人で十分でも、現実は違う」と感じました。これには、チーム運用やマネジメントの本質が詰まっています。多様性があるからこそ、最終的な成果が高まる。まさに現場で学んだ「組織の理屈」でした。
チラシ配りで見えた“人間の心理”
もう一つ印象に残ったのが、配布活動です。
チラシやティッシュなどを渡すのですが、立つ位置や声のトーン、渡すタイミングによって、受け取ってもらえる確率がまるで違いました。
何時間もやっているうちに、「どんな人が反応しやすいか」「どんな呼びかけが効果的か」が少しずつ見えてきます。この作業が、まるで広告の実験のように感じました。
受け取ってもらうことをクリック率やCTRに例えるなら、「どうすればコンバージョンを得られるか」を現場で体験している感覚です。無言でチラシを差し出すと、相手は理解する時間がなく、そのまま通り過ぎてしまう。
しかし、「私たちは〇〇という団体です。〇〇の活動をしています」と一言添えるだけで、受け取ってもらえる確率がぐっと上がる。要するに、人は“理解してから行動する”ということを、目の前で見ることができたのです。
中には、私からは受け取らなかったのに、少し後ろの人から受け取るケースもありました。おそらく、私の声かけを聞いてから少し考え、「良い活動だな」と思い、次の人から受け取ったのだと思います。
人は瞬間的に判断しているようで、実際には“思考のラグ”を経て行動している。その心理のタイムラグを目の当たりにしたのが、とても印象的でした。
善意と仕組みの交差点で見えたもの
今回のボランティアは、単なる奉仕活動ではなく、人間の行動や心理、そして組織の仕組みを観察する絶好の機会でした。
人が動く理由、人が集まる構造、人が「良いこと」をしたくなる空気——。そのすべてに共通していたのは、「環境の清潔さ」と「他者への信頼」でした。
善意が循環している空間というのは、決して偶然ではなく、そこにいる人一人ひとりの姿勢と、空気の積み重ねで成り立っているのだと思います。初めての参加でしたが、本当に学ぶことが多く、何より心が洗われる体験でした。


