最近、去年投稿されたあるツイートが再び話題になっていて、私自身も読んでいて少し面白いと感じたので、この記事で解説していきたいと思います。投稿の内容は「スイスのプライベートバンク経由で作成したアメックスのセンチュリオンカードが無料で使える」「毎月100万円以上の配当が入るので実質無料になる」というものです。
スイスのプライベートバンク経由で作成したアメックスのセンチュリオンカードですが、
使っても無料カードです。何故か?
元本減らさずに債券配当がバンクに入って、そっから引き落としがかかるので、証券担保ローンで毎月100万円以上の配当は入る計算で、… pic.twitter.com/PJchRDEvND
— りもわ@副業サロンの人 (@rimowatenbai) November 4, 2024
一見すると、すごい資産家の体験談のようにも見えるのですが、よく読むとチグハグな部分や誤解を生む表現があり、金融的な仕組みを知らない人が読むと誤ったイメージを持ってしまう可能性があります。そこで今回は、この投稿のどこが現実的で何が間違っているのかを丁寧に補足していきます。
証券担保ローンとは何か
まず、投稿者が使っている言葉の中で「証券担保ローン」というものがあります。これは保有している株式や債券を担保にしてお金を借りる仕組みで、いわゆる「資産を元に借入を行う方法」です。金融の世界では珍しいものではありませんが、その用途やリスクを理解せずに使うと危険な手法です。
例えば、バイオ株やAI・半導体株のようなボラティリティが高い銘柄を信用取引と組み合わせてレバレッジをかける場合があります。現物で1,000万円分の株式を購入し、それを担保に1,000万円借りて信用取引で同じ銘柄を買えば、理論上自己資金1,000万円なのに2,000万円分の株を運用できる「二階建て」という状態になります。
株価が上昇すれば利益は倍になりますが、逆に下落すれば損失も倍になるため、非常にリスクの高い手法です。これは投資上級者でも避けるべき領域であり、「カードが無料になる」といった文脈で語るのはそもそも中身がズレています。
富裕層の中には一時的にキャッシュが必要なときや、不動産購入などの資金繰りに使うケースもありますが、今回のツイートとは本来関係ない話です。投稿者はこうした専門的な言葉を“それっぽく”使っていますが、文脈的に噛み合っていないのが難点です。
債券の仕組みと利回り
今回の話の核心である「債券を買って配当を得る」という部分についても触れておきます。
株式投資は広く知られていますが、債券は理解していない人も多いかもしれません。しかし債券は信用度の高い金融商品で、特にアメリカの国債は世界でもっとも信用度の高い投資先のひとつです。
債券にはいくつか種類があります。例えば:
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利付債(クーポン付き債)
→ 半年ごとに金利が支払われる一般的な債券
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割引債(ゼロクーポン債)
→ 利息がなく、額面より安く購入し、満期に額面で償還される
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ストリップス債(利払い部分と元本部分を分離した債券)
→ 特定の期間の利息だけを買う、または元本だけを買うといった仕組み
TLTやTMFなどETFを通じて国債に投資する方法もありますが、「生債券」と呼ばれる個別の債券を直接買うこともできます。SBI証券などでも既発債が売買されており、利回りによって価格が市場で上下しています。
そして、米国の長期国債の利回りは現在4.7%前後(税引き前)となっており、税引き後でも約3%ほどの利回りを期待できます。仮に1億円分の債券を購入すると、年300万円、月換算で25万円程度の利息が得られます。10億円なら年間3000万円、毎月250万円です。
債券は株とは異なる値動きをします。金利が上がれば既存の債券は魅力が低下するため価格が下がり、逆に利下げ局面では価格が上昇します。ただし満期まで保有する限り元本と利息の返済が保証されているため、株式よりも安定した資産運用が可能です。
スイスのプライベートバンクとセンチュリオンカード
ここで話題の「スイスのプライベートバンク(PB)」ですが、口座を開設するには最低でも5億円ほど必要で、最近では10億円以上が条件と言われます。PBでは顧客の資産を複数の金融商品に分散し、リスクを抑えながら運用するのが基本です。
ただし、仮にリスクを抑えて10億円を米国国債に集中投資した場合、税引き後利回り3%として年間3000万円の収入が得られる計算になります。これを受け取る口座がセンチュリオンの引き落とし口座と同じであれば、毎月100万円をカードで使っても、年2回の利息で相殺され、元本は減りません。この部分だけを見ると投稿者の説明は一見正しいように見えます。
実際、PBの顧客で10億円以上の資産を持つ人には、アメックス側からセンチュリオンのインビテーションが届く可能性は非常に高いです。またPBの担当者がアメックス担当者に顧客を紹介することもあり、特別枠で発行されるケースも存在します。この点は投稿者の主張と一致します。
投稿が「怪しい」と言われる理由
ここまでを見ると、「10億円の資産」「債券利回りで生活可能」「センチュリオンの紹介も可能」といった部分は、一定の条件下では事実に基づいています。しかし、問題の投稿が怪しく見える理由は以下の通りです。
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10億円が必要という前提を隠している
まるで誰でもできるような書き方をしているが、実際は超富裕層の運用方法。
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証券担保ローンを混ぜて話を複雑にしている
本質的に配当で賄えるのでローンは不要。むしろ使うとリスクが上がる。
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センチュリオンカードは銀行が発行するものではない
PBが代わりに発行するかのような誤解を与える表現。
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金融知識の薄い層を狙った“それっぽいストーリー”
専門用語を混ぜて信用度を上げる典型的なSNS戦略。
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副業サロン系のアカウントが語るには不自然な資産規模
10億円以上の運用経験がある人が、わざわざTwitterで「無料カード」などと言うはずがない。
つまり、内容そのものは富裕層の現実に近い一方で、「一般人向けの自己演出」として語られている点が不自然なのです。
まとめ
今回の投稿は、完全な嘘ではありません。しかし「10億円の資産を運用し、スイスのプライベートバンクを通じて配当収入でセンチュリオンカードの利用額を相殺する」というのは、超限定的な状況でのみ成立するものであり、副業サロンの宣伝のように一般人が真似できるものではありません。
金融の仕組みを理解している人から見れば、投稿者の説明にはチグハグな部分があり、意図的に曖昧にしているようにも感じられます。資産運用や高級カードの世界は、単純化されたSNSの投稿だけで判断すべきではなく、正しい情報に基づいて冷静に理解することが大切だと思います。



