FOMCが25bp利下げを決定 —— 「労働市場の良い時代は終わった」とパウエル議長が宣言
米連邦公開市場委員会(FOMC)は9月16~17日の定例会合で、主要政策金利を0.25ポイント引き下げ、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を 4.00~4.25% とすることを決定しました。
あわせて、年内にさらに2回の利下げが見込まれています。決定は11対1で可決され、唯一反対票を投じたのは新任のマイラン理事で、彼は50bpの大幅利下げを主張しました。
会合後の記者会見でパウエル氏は、「労働需要は軟化し、最近の雇用創出ペースは失業率の安定維持に必要な水準を下回っているようだ」とし、労働市場が「非常に堅調」だとは「もはや言えなくなった」と議長は述べた。
(出典:Bloomberg【2025年9月17日】)
頑なに利下げを慎重に行ってきたパウエル議長がなぜ今になって25bp利下げするのか、今回は背景について予想してみます。
利下げ決定の背景
今回の利下げを理解するには、二つのリスクの板挟みを考える必要があります。
まず、トランプ大統領の高関税政策が輸入品価格を押し上げ、食品やコア物価に影響を与えており、インフレ再燃リスクが依然として重くのしかかっています。FOMC声明でも「インフレは上昇し、幾分高止まりしている」と警告が示されました。
他方で、直近の雇用統計では雇用創出ペースが鈍化し、失業率は上昇。議長自身が「もはや非常に堅調とは言えない」と発言するほど、労働市場の弱さが明らかになっています。放置すれば家計消費や企業収益の悪化を通じてリセッションに陥るリスクが高まります。
なぜ「25bp(ベーシス・ポイント)」にとどめたのか
ここで重要なのは、なぜ50bpではなく25bpだったのか という点です。
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50bpのリスク:大幅利下げは強い景気刺激シグナルとなり、需要や資金流入を誘発する一方で、インフレ再燃リスクを高める。
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据え置きのリスク:利下げを見送れば、景気悪化や雇用失速を放置することになり、将来的により大きな痛みをもたらす。
この板挟みの中で、25bpは「予防的かつリスク管理的な妥協策」として最も現実的な選択肢でした。実際、FOMCも「リスク管理の利下げ」という言葉でこの判断を正当化しています。
政治的圧力とFRBの独立性
背景にはホワイトハウスの強い圧力もあります。トランプ大統領は大幅利下げを公然と要求し、FRB理事の人事を通じて影響力を強めようとしてきました。
しかしFOMCは11対1で25bp利下げに集約。これは政治的圧力に一定の配慮を見せつつも、独立性を守る姿勢を打ち出すための「ぎりぎりのバランス」だったと解釈できます。
市場の反応と今後の展望
利下げ発表後、ドルは一時反落し、米国債利回りは上昇。株式市場ではS&P500が一時上昇しましたが、最終的には0.1%安で引けています。サプライズ感は限定的で、市場はすでに「次の利下げ」に焦点を移しています。
FOMCは年内にさらに2回の利下げを予想。2026年、2027年にも追加利下げが示唆されており、柔軟性を残しつつ少しずつ政策余地を広げる戦略が見て取れます。
今後は次の二つのリスクのどちらが優勢になるかで大きく舵取りが変わりそうです。
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インフレ再燃リスク:関税や賃金上昇が物価を再び押し上げる場合、追加利下げは慎重に。
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雇用失速リスク:失業率上昇と消費減速が続けば、さらなる利下げが必要に。
まとめ —— 「労働市場の良い時代」の終焉
今回の25bp利下げは、
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インフレ再燃を避けつつ、
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景気悪化リスクに先手を打ち、
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政治的圧力と独立性の均衡を取る
という三つの目的を同時に果たす「予防的な一手」でした。
パウエル議長が語った「労働市場の良い時代は終わった」という言葉は、単なる景気循環の変化ではなく、米国経済の構造的な転換点を示唆する警鐘とも受け止められます。FRBは今後、インフレと雇用のどちらを優先するかという難しいかじ取りを迫られることになりそうです。
もっとも、もし景気が過度に落ち込まず、リセッションを回避して「ソフトランディング」が成功するのであれば、利下げの効果によって株価は押し上げられる可能性があります。企業の借入れコストが減少することで業績環境が改善し、米国株全般が恩恵を受ける展開です。さらに、利下げ局面が順調に進むなら、現在の高い長期金利水準で米国長期国債や、米国長期国債に連動するETF(例:TLT)を購入する投資戦略も有効となります。新規発行される国債の利回りが低下すれば、すでに保有している高利回り債の価値が上昇するため、債券市場でもリターンが期待できます。
つまり今回の決定は、米国経済の転換点であると同時に、投資家にとっては株式・債券の両面で新たなチャンスを見極める局面でもありますね。


