皆さんは最近、楽天証券が提供を始めた「楽天・米国成長株式・プレミアム・インカム・ファンド(愛称:楽天JEPQ)」をご存じでしょうか。
これはアメリカのNASDAQ市場に連動し、オプションの売却益と株式の配当金を原資に高い分配金を出す設計のファンドです。
「毎月分配」「高配当」「米国グロース株」という3つのキーワードを兼ね備えたファンドとして注目されています。一方で、本家であるアメリカの JEPQ(JPMorgan Nasdaq Equity Premium Income ETF) も、すでに多くの投資家に人気を集めています。
では、日本国内で買える楽天JEPQと、米国市場で直接購入するJEPQでは、どちらが実際に多くの配当金を手取りとして受け取れるのか。今回は、その税引き後の実質的な配当を比較してみます。
1. JEPQとはどんな仕組みのETF?
JEPQは、米国のJ.P.モルガンが運用する「プレミアムインカムETF」で、主にNASDAQに上場する大型グロース株を保有しています。
そのうえで、同指数のコールオプションを売却(カバードコール戦略)することで、オプションプレミアム(=売却収益)を得ています。つまり、株式からの配当とオプション収益を合わせて投資家に還元する構造です。
この仕組みのおかげで、通常のNASDAQ100連動ETF(たとえばQQQなど)よりも高い分配金利回りを出せます。最近の実績では、年率10%前後の分配利回りを維持している時期もあり、高配当戦略ETFとして注目を集めています。
ただし、オプションを「売る」構造上、株価が急上昇したときは上値を取れません。たとえば、NVIDIAやAppleのような銘柄が急騰した場合、コールオプションの売却によりその利益を逃すことがあります。これが、JEPQの明確なデメリットです。
2. 楽天JEPQとは?米国版との違い
楽天JEPQは、J.P.モルガンが運用する米国ETF「JEPQ」に投資する日本国内投資信託です。
つまり「JEPQを間接的に保有する仕組み」で、為替ヘッジは原則行わず、毎月15日に分配を行う「毎月分配型ファンド」です。
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信託報酬(実質):年0.658%程度
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為替ヘッジ:なし
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決算日:毎月15日
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第1期(2025年10月15日)分配金:75円/1万口
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基準価額:10,614円
また、公式資料には以下の注意書きがあります。
「当ファンドはNISAの対象ではありません。」
これは、毎月分配型のためNISAの非課税枠の対象外となることを意味します。したがって楽天JEPQを買う場合、通常課税(20.315%)がかかる点に注意が必要です。
【楽天・JEPQ 初回決算のお知らせ】
楽天・米国成長株式・プレミアム・インカム・ファンド(毎月決算型)は
第1期決算を行いました分配金などの詳細については、以下のお知らせをご覧ください♀️
お知らせはこちらhttps://t.co/K46EOY73TB#JEPQ #資産運用 #分配金 pic.twitter.com/CikHY5eHDH
— 楽天投信投資顧問株式会社 (@RakutenToushin) October 15, 2025
3. 税金の違い:日米二重課税の仕組み
米国上場ETF(JEPQ)を日本の証券会社経由で購入した場合、次の2種類の課税が発生します。
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米国課税:源泉徴収税10%
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日本課税:所得税+住民税=20.315%
つまり、何も手続きをしないと約28%が課税されることになります。
ただし、「外国税額控除」を利用すれば米国分を差し引くことができ、実質的には20%程度に抑えることも可能です。
ただしこの控除は確定申告を行う一般口座/特定口座(源泉徴収なし)でしか利用できず、源泉徴収ありの特定口座では自動的に適用されません。このため、「手取りを最大化したい人」は、税務処理にも少し工夫が必要です。
一方の楽天JEPQは国内投資信託なので、米国課税は発生しません。代わりに日本で20.315%の課税がかかります。この点はシンプルで、確定申告も不要です。
4. 実際に10,000円分を買った場合の配当金比較
(1)楽天JEPQの場合
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基準価額:10,614円
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分配金:75円(税引前)
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税率:20.315%(日本課税)
計算式:
75 × (1 – 0.20315) = 59.8円(税引後)
1万円あたり換算:
59.8 × (10,000 ÷ 10,614) = 56.3円
→ 楽天JEPQ:10,000円あたり税引後56.3円
(2)米国JEPQの場合
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最新配当金:0.4461ドル/株
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為替:1ドル=150円
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株価:約56.33ドル(=8,449円)
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10,000円分購入時の株数:約1.184株
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税率:米国10%+日本20.315%
税引前配当:
0.4461 × 150 × 1.184 = 79.25円
米国課税10%控除後:
79.25 × 0.9 = 71.33円
さらに日本課税(20.315%):
71.33 × 0.79685 = 56.8円
→ 米国JEPQ:10,000円あたり税引後56.8円
結果比較表
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項目 |
楽天JEPQ |
米国JEPQ |
|---|---|---|
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基準価額・株価 |
10,614円 |
約8,449円 |
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税引前配当 |
75円 |
約79円 |
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税引後配当(1万円分) |
56.3円 |
56.8円 |
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NISA対応 |
×(対象外) |
×(対象外) |
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為替影響 |
あり(非ヘッジ) |
あり(ドル建て) |
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税務処理 |
国内課税のみ |
日米課税・控除可 |
→ 結果、税引後の手取り配当はほぼ同等。
わずかに米国JEPQが多い(+0.5円程度/1万円)という水準でした。
5. コストと運用リスクの違い
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観点 |
楽天JEPQ |
米国JEPQ |
|---|---|---|
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信託報酬 |
年0.658% |
年0.35% |
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為替ヘッジ |
なし |
なし |
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販売手数料 |
なし(投信) |
為替・取引手数料あり |
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分配頻度 |
毎月 |
毎月 |
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売買単位 |
1円単位(投信) |
1株単位(ETF) |
楽天JEPQは少額から簡単に積立可能という利点がありますが、信託報酬はやや高めです。
米国JEPQはコストが安く効率的ですが、外国課税と為替手数料の分、若干の煩雑さがあります。
6. どちらを選ぶべきか?
楽天JEPQが向いている人
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手軽に円建てで投資したい
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為替リスクをそのまま受け入れられる
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確定申告を避けたい
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毎月の分配金をシンプルに受け取りたい
米国JEPQが向いている人
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新NISAの成長投資枠を活用したい
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為替手数料を気にせずドル運用をしたい
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外国税額控除などを自分で処理できる
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分配利回りを重視し、直接ETFを保有したい
7. まとめ:税引後の実質利回りは僅差、投資スタイルで選ぶべき
今回のシミュレーションでは、
1万円分あたりの税引後配当は楽天JEPQ=56.3円、米国JEPQ=56.8円という結果になりました。
つまり、数字上はほぼ同じで、「どちらが得か」というよりも、投資の手間と制度の違いで選ぶ商品といえます。
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手軽さ・自動分配・日本語サポート重視 → 楽天JEPQ
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低コスト・NISA非課税・ドル資産運用 → 米国JEPQ
配当金の多寡だけでなく、手数料、税金、運用管理のしやすさなど、トータルで判断するのが賢明です。どちらも共通して「高配当×米国グロース株×オプション戦略」という強力なテーマを持っています。
リスクを理解したうえで、ライフスタイルに合った選択をされるのがよいでしょう。


