BMW F80 M3は前期と後期で何が違うのか?

クルマ
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BMW M3(F80型)は、2014年から2018年まで生産された5代目M3セダンです。
自然吸気V8から直列6気筒ツインターボへと大きく方向転換した世代であり、現在でも中古市場で非常に人気が高いモデルです。

LCIの「前期」「後期」で別れていると思われがちですが、実際には「前期」・「中期」・「後期」という3段階の進化が存在し、外観だけでなく、ソフトウェア、制御、内装、装備なども年次で確実に変化しています。

本記事では、「F80 M3は前期と後期で何が違うのか?」という疑問に対し、見た目の話にとどまらず、実用・購入判断に役立つレベルまで掘り下げて整理していきます。

F80 M3は「前期・中期・後期」に分かれる

先に有名な見分け方を紹介します。フロントライトの形状に注目してください。
左が後期で右が前期です。

F80 M3を語るうえで最も重要なのは、中期モデルが実在するという点です。

一般的に中古車市場では「2014〜2016年=前期」「2017年以降=後期」と雑に括られがちですが、これは正確ではありません。

前期(2014〜2015年)
フロント・リアともに初期デザイン。iDriveや内装も初期仕様。

中期(2016年〜2017年前半)
リアテールライトのみLCI(後期化)。フロントは前期のまま。
ナビや内装意匠、装備が一段階アップデート。

後期(2017年後半〜2018年)
フロント・リアともにLCI。新デザインLEDヘッドライトが標準化。
iDrive 6.0(タッチ対応)へ進化。

出典元:https://autocatalogarchive.com/wp-content/uploads/2018/03/BMW-M3-M4-2017-JPN.pdf

特に重要なのは、
「フロントは前期・リアだけ後期」という中期個体が確実に存在するという点です。
この事実を知らないと、年式だけで誤った判断をしてしまいます。

ライトだけで見分けるのは半分正解

F80 M3の前期・後期を語る際、最も分かりやすいのはライト形状です。

フロントヘッドライト

前期・中期:旧デザイン(キセノン or 初期LED)

後期:新デザインのアダプティブLEDが標準化

このフロントLEDの刷新は2017年後半生産車(実質MY2018)からです。
つまり、2017年登録でも前期顔の個体は普通に存在します。

後期

前期

リアテールライト

前期:旧デザイン

中期以降:L字型のLCI LEDテール

このリアのLCIは2016年モデルイヤーから始まっています。そのため、

フロント:旧

リア:新

という「中期」特有の組み合わせが生まれました。

後期

前期

結論として、フロントだけ見て判断するのも、年式だけで判断するのも不十分です。
前後のライト両方を確認して、初めて正確な世代判定ができます。

見落とされがちなソフトウェア・内装・装備

F80 M3の進化は、外観以上に中身の熟成に価値があります。

iDrive・インフォテインメント

前期:初期世代のiDrive(表示・レスポンスともに古さあり)

前期型

中期:ナビユニット刷新
起動速度・処理能力向上、地図更新方式の改善

後期:iDrive 6.0へ進化
タッチ操作対応、UIが大幅に洗練

後期型

日常的に使う部分だけに、この差は想像以上に体感できます。とはいえ前期型でもUSB・BluetoothともにiPhoneを接続すれば、AmazonMusicなど自由に再生できます。カバー写真なども出ます。

内装パーツ・意匠

中期以降で、以下のような変更が入っています。

エアベント周り・スイッチ類にクローム加飾追加
エアコン表示がオレンジから白へ変更
アンビエントライトの演出変更
センタースタックの質感向上

前期

後期

余り違いがないような…?
エアコン吹き出し口のフレームの色が違う。

前期型

後期

後期ではさらに、シートの“M”バッジ意匠変更(より現代的なデザイン)といった細かなアップデートが積み重ねられています。

コンペとはなにか?

コンペティションパッケージ(ZCP)
F80 M3の性格を大きく変えるのが、2016年から設定されたコンペティションパッケージです。

出力:431ps → 450ps
サスペンション・デフ・DSC制御を専用チューニング
見た目以上に走りが引き締まる

前期・後期という区分よりも、ZCPかどうかの方が体感差は大きいと言っても過言ではありません。ホイールがBMW 437Mから666Mに変わります。

666M

とても格好良い666M……20インチでタイヤ交換が信じられないほど高い。
パイロットスポーツ5などは設定がないのでPS4Sになります。

437Mも格好良いですね。色はFerric Grey、Jet Blackの2色あるようです。
19インチなのでPS5が履けてコストも安いです。

F80 M3の純正ホイール構成

ホイール

サイズ

位置づけ

513M

18インチ

標準装着(主に初期型)

437M

19インチ

メーカーオプション/定番

666M(通常色)

20インチ

コンペティション(ZCP)と事実上セットで流通

666M(Acid Orange)

20インチ

M4 GTS専用

763M

20インチ

CS専用(M3 CS / M4 CS)

DCTソフトウェアについて

F80 M3では「後期型のほうがDCTの出来が良い」と語られることがありますが、BMWが年式ごとにDCTソフトウェアの変更内容を明文化した公式資料は一般には公開されていません。
BMWはDCT単体の仕様変更を年次モデルとして発表するのではなく、車両全体を対象とした統合ソフトウェア(I-Step)の更新という形で制御を進化させていくためです。ただし、
•2016年以降に設定されたコンペティションパッケージ(ZCP)では、エンジンやデフ、DSCを含めた制御が専用化されており、変速フィールの印象にも影響します。
•また、年次改良やソフトウェア更新を重ねることで、発進時や低速域での制御を含め、車両全体の熟成度が高まっているのも事実です。
これらの要素が重なった結果として、後年式の個体ほどDCTが洗練されていると感じるオーナーが多いのは、自然な流れと言えるでしょう。ただし実際の変速フィールは、年式だけでなく、その車両がどのソフトウェア状態に更新されているかによって左右される点には注意が必要です。

ドライブシャフトの注意点

前期型のF80 M3では、軽量かつ高剛性なカーボン(CFRP)製プロペラシャフトが採用されていましたが、後期型ではこれがスチール製のプロペラシャフトへと変更されています。

この変更の理由は、耐久性の問題というよりも、将来的な排ガス規制への対応にあります。BMWは、今後ガソリン微粒子フィルター(PPF)を搭載することを見据え、床下のパッケージングを見直す必要がありました。その結果、取り回しに余裕のあるM専用スチール製プロペラシャフトへと段階的に置き換える方針を公式に示しています。

こうした経緯から、初期に採用されていたCFRP製プロペラシャフトについては、「Mらしい凝った軽量パーツが使われている」という点を評価し、前期型はラッキーだと語るMオーナーがいるのも事実です。BMW自身も、CFRPの高剛性・低重量という特性を活かすことで、センターベアリングを持たない1ピース構造を実現できたと説明しています。

ただし、すべてのCFRPシャフト装着車が無条件に安心できるわけではありません。2016年春から秋にかけて生産された一部の個体では、プロペラシャフトの結合部に起因するリコールキャンペーンの対象となっている例があり、該当車両についてはVIN(車台番号)による確認と、対策作業が実施済みであるかのチェックが前提となります。

F80 M3の前期と後期について

もっとも、F80 M3に関しては、必ずしも最終型や後期型が最良というわけではありません。実際には、前期型ならではの良さが残っていたり、むしろ初期型のデザインのほうが好みだというオーナーが一定数存在するのも事実です。

そもそもF80 M3は、他メーカーのスポーツモデルと比べても生産期間がわずか4年間と非常に短いモデルでした。その後に控えていたユーロ規制への対応や、次世代G型、G80型M3の開発といった事情もあり、比較的早い段階で世代交代が進められたという背景があります。
そのため、たった4年という限られた期間の中で前期・中期・後期と分かれてはいるものの、エンジン出力や基本性能が劇的に変化したわけではありません。

特に、コンペティションパッケージやCSといった特別仕様を除いた標準グレード同士で比較した場合、大きな違いとして挙げられるのは、フロントおよびリアのライトデザイン、そしてiDriveの世代差が中心になります。走りのパフォーマンスそのものについては、前期と後期で極端な差があるわけではなく、どの年式であってもM3らしい高い完成度を備えています。

中古市場では、後期型のほうが人気が高く、価格差が100万円以上つくケースも珍しくありません。しかし、それは「後期型でなければ劣っている」という意味ではなく、あくまで市場評価の違いに過ぎません。実際、前期型であっても走行性能は非常に高く、体感的には後期型とほぼ同等と感じられる場面も多いでしょう。

最終的には、装備差や相場だけで判断するのではなく、外観デザインの好みや、F80 M3というクルマのキャラクターをどう楽しみたいかを基準に選ぶのも、ひとつの正解だと言えるかもしれません。


BMW M3(F80)年式別・仕様変遷一覧

前期/中期/後期の判別表

区分 年式目安 フロントヘッドライト リアテールライト 呼称
前期 2014–2015 旧デザイン 旧デザイン 前期
中期 2016–2017前半 旧デザイン LCI LED 中期
後期 2017後半–2018 LCI LED LCI LED 後期

「フロント前期 × リア後期」=中期が実在


年式ごとの詳細仕様一覧(日本仕様ベース)

区分 出力 / トルク 主な仕様・変更点
2014 前期 431ps / 550Nm F80 M3デビュー/7速DCTのみ(日本)/外装・内装とも初期仕様
2015 前期 431ps / 550Nm 大きな変更なし/年次改良レベル
2016 中期 431ps(450ps※) / 550Nm リアLCI(LEDテール)/コンペティションP設定(※450ps)
2017 前半 中期 431ps / 450ps 中期最終形/iDrive・装備の熟成
2017 後半 後期 431ps / 450ps フロントLCI(新LED)/前後ともLCI完成
2018 後期 431ps / 450ps / 460ps M3 CS登場(460ps)/F80最終年

※450ps=コンペティションパッケージ装着車


グレード別パワー比較

グレード 出力 トルク 備考
標準 431ps 550Nm 全年式共通
コンペティション 450ps 550Nm 2016年〜
M3 CS 460ps 600Nm 2018年・日本30台
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