2025年10月20日、日本銀行の高田創審議委員が「利上げの機が熟した」と発言したことが注目を集めています。

ついに日本も、長く続いた“ゼロ金利の時代”を終わらせるかもしれません。この一言は、単なる金融政策の転換を意味するだけでなく、世界の金利構造の中で日本がどう位置づけられていくのかという重要な問いを投げかけています。
世界の中で見た日本の金利
マネックス証券が2025年10月14日に更新した「各国政策金利表」によれば、日本の政策金利(日本銀行当座預金のうち超過準備預金の金利)は0.50%(改正日:2025年1月24日)となっています。これはわずかに引き上げられた水準ですが、他国と比較すると依然として極端に低い水準です。
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国・地域 |
政策金利 |
改正日 |
|---|---|---|
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日本 |
0.50%(+0.25%) |
2025年1月24日 |
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米国 |
4.00〜4.25%(−0.25%) |
2025年9月17日 |
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ユーロ圏 |
2.00〜2.40%(−0.25%) |
2025年6月5日 |
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英国 |
4.00%(−0.25%) |
2025年8月7日 |
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豪州 |
3.60%(−0.25%) |
2025年8月12日 |
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カナダ |
2.50%(−0.25%) |
2025年9月17日 |
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スイス |
0.00%(−0.25%) |
2025年6月19日 |
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トルコ |
40.50%(−2.50%) |
2025年9月11日 |
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ブラジル |
15.00%(+0.25%) |
2025年6月18日 |
この表からもわかる通り、主要国の金利はすでに数%台が当たり前となっており、日本だけが「0%台」という異常な低金利圏に取り残されていることが浮き彫りになります。その意味で「機が熟した」という発言は、世界水準に近づくための“正常化宣言”とも言えます。
ちなみに、トルコやブラジルのような国は、経済成長に伴う利上げや物価上昇を抑えるための金融政策ではなく、通貨そのものの信用度が毀損しているための“防衛的利上げ”であり、日本のケースとは根本的に性質が異なります。したがって、これらの国々を単純に比較対象とすることはできません。
利上げの背景、インフレと通貨防衛
高田委員は講演で「警戒モードの解除」「物価高への対応」という二つの理由を挙げています。まず、ここ数年の物価上昇はエネルギー価格や円安によって加速しました。輸入コストの増大が企業物価を押し上げ、それが家計を直撃しています。
にもかかわらず、金利をほとんど上げてこなかった日本は、「インフレに鈍感な国」と見られつつあります。
もう一つの理由は通貨です。
金利が低すぎると、資金は高金利通貨へ流れ、円安が進行します。
実際、2024年後半から2025年前半にかけて円相場は1ドル=160円前後まで円安が進みました。
これに歯止めをかけるには、日銀自身が金利を引き上げ、「円を持つメリット」を取り戻すしかありません。
利上げが日本経済にもたらす変化とは?
円高圧力と輸出企業への影響
利上げは、海外投資家にとって円建て資産の魅力を高め、円高圧力を強めます。
円高になれば輸入物価が下がり、ガソリンや食料品の価格が落ち着く一方、輸出企業の利益は目減りします。
トヨタやソニーのようなグローバル企業にとっては、1円の為替変動が営業利益を数百億円単位で動かすこともあります。
(2)住宅ローン金利の上昇
変動金利型の住宅ローン利用者は、利上げによって返済額が上昇する可能性があります。
とくに2020年代前半に超低金利で住宅を購入した層にとっては、「金利が上がる」こと自体が未体験のリスクです。
たとえば、5,000万円の住宅を変動金利0.5%・30年ローンで借りている場合、毎月の返済額はおよそ134,000円前後になります。ところが、金利が1.5%(+1%上昇)に上がると、返済額は約155,000円程度に増加します。
つまり、月2万円以上・年間で24万円、総額では約700万円近く返済総額が増える計算です。こうした金利上昇は、家計を直撃するだけでなく、住宅価格にも影響します。返済負担が増えると新規の購入希望者が減り、不動産価格の下落要因となります。
また、返済が困難になった場合には、抵当権の実行(差し押さえ)や任意売却に追い込まれるケースもあり、金利上昇は単なる「数字の変化」ではなく、生活基盤そのものを揺るがすリスクをはらんでいます。
(3)株式市場の変動
利上げは株式市場にとって基本的にはマイナス要因です。
理由はシンプルで、企業の資金コストが上がるうえ、「債券の利回り上昇=株の相対的魅力低下」につながるからです。
ただし、銀行株や保険株など、金利上昇によって利ざやが拡大する業種は恩恵を受けるため、「銘柄選別の時代」に入るとも言えます。
利上げは家計にとって悪か、それとも健全化か
金利上昇というと、まず「住宅ローンが上がる」「企業が苦しくなる」といったネガティブなイメージが先行します。しかし、超低金利政策が長く続いた結果、日本経済には「お金の価値が動かないことへの慣れ」が広がりました。
預金しても増えず、借りても痛くない、その状態は、資本主義のダイナミズムを鈍らせる面があります。利上げによってお金に時間価値が戻れば、「投資をする意味」「節約する意味」が生まれ、経済全体の循環が活発になります。
つまり、短期的には痛みがあっても、長期的には健全化へのプロセスなのです。
これからの注目ポイント
日銀の次回政策決定会合は2025年10月29〜30日に予定されています。
高田委員が再び利上げを提案するのか、そして他の委員が同調するのかが最大の焦点です。
もし「0.75%」への引き上げが実現すれば、それは25年ぶりの本格的な金利上昇局面の幕開けになるかもしれません。
参考出典:


